霞が関から見た永田町

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安倍政権のレームダック化でにわかに現実味を帯びる国民民主と維新の急接近

5月25日の記事「黒川検事長辞職で一気に流動化する政界、台風の目は国民民主と維新」では、賭け麻雀による黒川検事長の辞職と、新型コロナを巡る、驚くほどの安倍政権の稚拙さが相まって、いよいよ永田町に政局の風が吹きそうだという見立てを書いた。

 

この記事では、新型コロナを巡って地方自治体の首長が存在感を示したこと、中でも小池東京都知事、吉村大阪府知事が際立っていたことに触れた。そして小池知事は元希望の党、つまり現在の国民民主党、吉村知事はいうまでもなく大阪維新の会に繋がる。つまり、この二人が作り出す政局によって、国民民主党と日本の維新の会が合流する可能性はあるのではないか、というのが霞ヶ関の住人の見立てとして、ブログにしたためたのが前回の記事である。

 

 

令和の政界再編、始まるか

さて、そんな中、前回の記事の仮説を加速するような動きが出てきた。そういう意味では、今回は国民民主党と日本維新の会合流を予測する記事の第二弾だ。

 

6月4 日、時事通信社が一本の記事を配信した。それは、国民民主党の前原誠司氏と日本維新の会の片山虎之助氏が地方分権に関する勉強会を発足するというニュースだった。

 

国民・前原氏、維新と勉強会:時事ドットコム

 

勉強会の名称は「新しい国のかたちを考える協議会」(仮称)。準備会合を経て、6月16日に設立総会を開催する予定で、両党の国会議員を中心に50人近い参加が見込まれるという。代表世話人は前原氏に加え、無所属の松原仁氏、日本維新の会の馬場伸幸氏(同党幹事長)、片山氏は顧問に就任するという。また、世話人には国民民主党の岸本周平氏や益子輝彦氏が就く予定で、

 

特に岸本氏は国民民主党代表の玉木氏とは財務省の先輩・後輩でもある。いや、それ以上に、旧民主党時代からこの二人の絆は強く、例えば、2016年の民進党の代表選挙では蓮舫、前原、玉木の三つ巴の戦いになった際に、玉木氏の選対本部長として岸本氏がとかく汗をかいたのは有名な話だ。

 

岸本氏は玉木代表の先輩であり側近

つまり、このニュースの驚きは玉木代表に近い人材が勉強会に強くコミットしている点だ。国民民主党の中には今でも立憲民主党との合流を願う者もいるため、当然、このニュースは軋轢を生んだ。産経新聞の報道によると、国民民主党の平野博文幹事長は岸本氏の参画について、「(国民民主党の)選対委員長を外す」と伝えたとのことで、今回の勉強会が単なる勉強会ではなく、政界再編に繋がる可能性を秘めていることを象徴的に表している。

 

政界再編とは不思議なもので、何もないところから一気に火がつくことがあったり、何気ない小さな仕掛けが火種になって嵐になっていくこともある。永田町にいる者は、その栄枯盛衰を見てきているからこそ、小さな動きに対しても敏感になるのだろう。今回の反応もそんなところだと思う。

自民党も流動化しつつある

安倍政権もレームダック化しつつある。安倍総理と菅官房長官の間のすきま風は公然の秘密として語られているし、それは今回の新型コロナの政府対応でも顕著だった。安倍総理は岸田政務調査会長への禅譲を望んでいるが、その存在感は薄い。そしてここへ来て二階幹事長・菅官房長官のホットラインは石破茂氏を神輿に担いだ、ポスト安倍政権の絵を描き始めているやに聞こえてくる。少し前までなら、菅官房長官と石破氏のタッグは考えられなかったが、これが「政界は一寸先は闇」と言われる所以でもあり、融通無碍な自民党の強さでもある。

 

果たして野党はこうした強かな自民党と対峙する力強さを発揮できるか。今回の勉強会はその一つの試金石となるだろう。かつてのみんなの党、維新の党、希望の党と続き、失敗の連続に終わってきた政界再編。令和の再編は果たして成功するだろうか。