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森友学園、加計学園問題 共通する行政の課題

加計学園による獣医学部新設について、「総理のご意向」なる文言が記された文書につき、文部科学省の前事務次官の前川喜平氏がその存在を認める記者会見を開いた。その後、菅官房長官は怪文書の類としてその文書の存在を認めず、事務次官の地位にしがみついたとして前川氏を批判している。

 

 その文書自体それがあったのかなかったのか、現段階で正確なところは分からないが、この件に限らず、行政活動に関する文書の管理や公開については公文書管理法や情報公開法が存在し、作成され保存されている文書であれば、情報公開法に基づき公開請求を行うことによってそれが開示されることが予定されている。

 

 安倍昭恵夫人付の公務に関する文書の公開請求を行ったジャーナリストのまさのあつこ氏は、公文書管理法がありながら、各省庁の独自の判断で定められる細則に基づいて文書が破棄されてしまっていたことを報じている

 

細則に基づく森友学園との面談記録の廃棄をめぐっては、4月3日の衆議院決算行政監視委員会民進党の篠原豪議員が佐川宣寿財務省理財局長とやりとりをしている。佐川局長の答弁をまとめれば、財務省の大臣官房が定める行政文書管理規則およびにその規則に基づく細則に則って、交渉の記録などは1年未満で廃棄しているというのである。詳しくは、まさの氏が篠原議員に取材を行っており、その内容が公開されている

 

 各省庁で行政文書管理規則や細則を定めており、森友学園の問題につき文書を廃棄してしまった財務省と今回の前川氏の証言する文科省の文書が同様に扱われているのか否か、規則や細則の詳細が明らかではないために定かではないが、もし作成されたものであったとしても、現在は廃棄してしまい存在していないという可能性がある。松野文科大臣も専用のフォルダーには前川氏が言うような文章は存在しなった旨のことを述べているが、これも作成の有無ではなく、現在の存在の有無という意味では現状を正確に語っていたのかもしれない。

 

 加計学園獣医学部新設は国家戦略特区の枠組みを利用して実現したものであるが、これには国家戦略特区を担当する内閣府、大学に関わることであるので文部科学省、獣医に関しては農林水産省、さらに今治市も積極的に誘致を行っている関係で自治体と関わる総務省など、複数の省庁が関係していることが予想される。今回のように、何らかの疑念が生じた際には、事後に検証を行うためにも、関係する文書の管理がとりわけ重要となる。各省庁の独自の判断で、1年にも満たないうちに重要な文書が廃棄されるようなことが起こらないよう、十分な法的な対策を講じる必要があるのである。

 

 昨年5月には、旧民主党と維新などが公文書管理法と情報公開法の改正案を国会に提出している。

 

その改正案の中には、「行政文書ファイル等を廃棄する手続きの厳格化」がある。結局、この改正案は成立することはなかったが、民進党階猛議員が詳しく述べているように、あらためて改正案を提出する意向のようである。

 

 森友学園の問題と加計学園の問題。そこに関わる行政の活動につき、その詳細を窺い知ることが出来たはずの文書が存在していたはずでありながら、現在、それを国民は確認することが出来ない。そのような不都合を国会が正す必要があると言えよう。