霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

野党が提出していた公文書管理法と情報公開法の改正案

 

野党は議員提案を行うという仕事をしていると先日指摘した。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 

 

「公文書管理法」と「情報公開法の改正案」を野党が提出

 

 なかでも、野党が提出した「公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案」や「行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案」は森友学園や加計学園の問題を受けた上で時宜を得た内容であると書いた。いずれの法律案も成立に至るどころか、まともに審議すらされなかったが、来年の通常国会でも野党として同様の法案を提出してくることが予想される。

 

 法律案については、民進党のWebサイト上で他の法律案概要や新旧対照表と一緒に公開されている。いずれも現政権としては受け入れがたい内容なのかもしれないが、一国民として見れば、大半の人が賛成するような内容である。

 

 

www.minshin.or.jp

 

 

公文書管理法改正案のポイント

 

今回は、「公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案」を見ていくことにする。提案の要点は民進党のWebサイト上に記されていることから、以下に引用する。

 

第1に「閣議、閣僚会議、NSC」に加え、「省議」等についても、議事録及び審議会等の議事録についての作成義務を明記する(許認可等を行う場合に大臣から諮問された審議会等の議事録の作成義務も明記)。

 

第2に、「議事録に、開催日時、出席者、議事の経過その他の政令で定める事項を記載しなければならないことを明記する(議事録の記載事項を明らかにし、政令も公文書管理委員会に必ず諮問)。

 

第3に、「閣議、閣僚会議、NSC」に加え、「省議」等についても、30年間を超えない範囲で政令で定める一定期間経過後に原則公表しなければならないこととする。

 

いずれも、この間の森友・加計学園をめぐる問題で懸案となった事柄に対応するものとなっている。

第1は、議事録の作成義務を義務付けるという改正である。現行法でも行政機関における意思決定過程に関して後の検証が可能となるよう、文書を作成するよう求める条文は存在しているが、より踏み込んで議事録作成を義務付けようというのである。森友・加計学園の問題でも顕著であったように、後の検証が可能となるような文書が残されていなかったり、議事録が政府にとって都合の良いかたちでしか残されていなかったりする。そのような問題を克服するための改正案である。

 

第2は、議事録に記載する事項に関する改正である。議事録は作成されたものの、肝心の出席者や議事の内容が抜け落ちているということが起こらないようするための措置である。「議事録を確認しよう」となった時に、出された議事録が単に「会議を開催した」程度の内容しか書かれていなければ、それは意味をなさない。議事録の作成だけを義務とすると、作成はするが肝心なことは記載しないという逃げ道が出来てしまう。この逃げ道をふさごうというのがこの改正案の趣旨である。

 

第3は、これは一定期間を経過した後は、原則公開にするということを定める改正である。外交や安全保障分野を中心に、直ぐに情報を公開してしまうと不都合が生じてしまうことも存在している。そのために、情報を公開しないということがあるのだが、だからと言って永久に情報を公開しないと、政府の活動や判断が正しかったのか国民が検証する機会が失われてしまう。そこで、一定期間は非公開にすることを認めつつ、30年を超えない範囲で、一定の期間が経過した後には情報を原則公開にすると定めようというのである。

 

いずれも、どの政党が政権にあったとしても国民から見れば必要とされる事柄であると言えよう。

 

なお、上記の三点は今回提出された改正案で新たに追加された内容である。もともと、以前から同様の法案が野党から提出されており、その内容はさらに広範にわたる。

 

例えば、行政文書の定義自体に変更を加えようという提案もなされている。現行法では、行政文書について「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」という要件があるが、これを削除しようというのである。これは、政策過程において重要な文書であっても、「それは組織的に用いない個人的なメモであり、行政文書に該当しないために公開しない」という答弁が現政権において繰り返しなされてきたことに対応するための改正案である。これにより、組織的に用いないものであっても、それは保存や公開の対象になり得ることになる。

 

また、森友学園の問題では重要な文書が1年と経たずに廃棄されてしまっていたという驚くべき出来事があり、真相の究明が阻ばれることになった。これに対応するように、改正案では、行政文書の保存期間の下限を設定することが加えられている。

具体的には、電磁的記録である行政文書や行政機関以外の者との接触時に関する情報が記録されている行政文書について、その保存期間を1年未満とはすることが出来ないと改正案に記されている。

加えて、行政文書の廃棄手続も厳格化や行政文書管理指針の策定に関する改正も提案されている。

 

国民目線の公文書管理のあり方の提案を

 

 公文書管理は非常に重要なテーマである一方で、それにまつわる法律の改正となると国民的な関心が集まりにくい。この国民的な関心の薄さが、不可解な行政の活動があっても後にそれを検証することが出来ないという状況を生んでいるとも言える。

 

 政権与党としては、自らの活動を検証されたくないという思いもあるはずで、実際に野党が提出した公文書管理法改正案をまともに取り扱おうとはしない。この点につき、野党は国民の立場に立って、適正な公文書管理のあり方について提言し、法律の改正案を提案し続けていくべきであろう。