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再度の佐川氏証人喚問を

 

 

 

改竄の調査報告書が公開される

 

6月4日、財務省が「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」を公表した。


 この報告書は財務省のWebサイトで公開されているので、一目確認して欲しい。

 

森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書

 

 その概要は各種マスコミ報道で伝えられるとおりで、佐川元理財局長の意を汲んで、部下が改竄を行ったということになっている。そして、佐川氏をはじめ、関係者20人が何らかの処分を受けることになった。

 

あわせて、麻生財務大臣も閣僚給与12カ月分、計約170万円を自主返納する。

 

 

改竄の動機は不明のまま

 

報告書公表にあたっての記者会見で、佐川氏が改竄を行った動機について尋ねられ、麻生大臣も「それが分かれば苦労しない」という趣旨の返答を行ったことに示されるように、佐川氏が改竄を主導した理由は結局のところ明らかとはならなかった。

 

調査報告書の34頁以降に、「一連の問題行為の目的等」があり、ここでは佐川氏が部下に文書の改竄を行うよう促した理由らしきことが書かれている。いわく、佐川氏が国会で行った答弁と財務省に残されていた文書の内容の平仄が合わず、また文書を公開すると、国会審議が紛糾しそうだから、文書の改竄や廃棄を行ったとのことである。

 

これでは、「では、なぜ佐川氏は国会でそのような答弁を行ったのか」という一番最初に解明すべき疑問には全く触れていないと言える。森友学園問題について国会の質問で取り上げられそうだという情報を財務省が察知していたことは報告書にも書かれている。であるなら、なぜ佐川氏は省内の文書を確認しないまま国会審議に臨み、文書は保管していないと答えたり、文書に書かれている内容を書かれていないと答えたりしたのか。その理由が不明なままなのだ。

 

そもそも、改竄前の文書や廃棄される前の文書につき、そこに記載されている事柄自体に違法性などないというのが財務省の立場である。つまり、本来、公開したとしても何ら問題のない文書であったのだ。これは、今回の報告書でも堅持された立場であり、文書を公開して国会でも丁寧に説明すべきであり、それは不可能ではなかったと調査報告書にも書かれている。

 

 であるなら、なおさらのこと、佐川氏が自身の刑事訴追の可能性も十分に認識していたであろうなか、それでも改竄を行うよう部下に促した理由がよく分からない。

 

 

誰が関与したのかすら不明なまま

 

 調査報告書39頁以降に、関与したとされる職員の責任と処分が記載されている。個人名は記載されていないものの、処分されたのが20名ということで、主体的に関与したのがその20名ということのようだ。

 

 ただし、この20名は責任を問われた者ということであって、何らかの形で関与していた職員全てはそこに含まれていない。というのも、調査報告書によると、佐川氏が理財局長から国税庁長官に移った際などに、文書の改竄や廃棄について後任には引き継がれなかったとされている。さらに、改竄に当たるとは知らずに文書を変更したり、本来の業務だと思って文書を廃棄したりした職員の存在も示唆される書きぶりになっている。

 

 あくまでも、責任が問われ、処分を下されたのが20名ということであって、誰が関与していたのか全貌は明らかにならないままだ。

 

 調査報告書によれば、近畿財務局の職員をはじめ、改竄や廃棄に反対する者もいたようである。その結果、理財局として、近畿財務局がどの程度、文書の改竄や廃棄を行ったのか確認出来ない状況にあったとまでされている。職員の中でも葛藤があり、皆が佐川氏の意向に従ったわけではないのだ。


 不正には毅然と加担しなかった職員もいるのであって、彼らと不正に加担した職員を同列にしてしまうようなことも、あってはならないことのはずだ。誰が不正に関与したのか明確にしないと、組織全体が不正の巣窟のように見られてしまうことを、財務省は心得るべきだろう。

 

 

この際、佐川氏を再度の証人喚問に

 

 先日、佐川氏ら関係者38名につき、大阪地検特捜部は不起訴処分にしたと報じられた。これと合わせて、財務省の調査報告書の公表で、政権としてはこの件について幕引きを図りたいところだろう。しかし、森友学園問題に関する財務省での文書改竄や文書廃棄について、その全貌は何も明らかにはなっていない。

 

 その全貌について、佐川氏が全てを把握していないのかもしれないが、佐川氏が起点となって、改竄や廃棄が行われたことは、今回の調査報告書で明らかとなった。

 

 その佐川氏。先ごろ行われた証人喚問では、「刑事訴追のおそれがあるので答えられない」という答弁に終始した。しかしながら、刑事訴追のおそれは当面なくなった。さらに、財務省として行う処分も確定することになる。この際、あらためて佐川氏に対する証人喚問を行い、なぜ文書の改竄や廃棄を行おうとしたのか問い質すべきではないだろうか。


 調査報告書でも、財務省における一連の文書改竄や廃棄によって、国会を混乱させたことを認めている。であるならば、国会に対する説明責任を果たす上でも、佐川氏にあってはあらためて国会で事の真相について語るべきなのだ。これは、与野党は関係なく、国会として求めるべき事柄でもある。司法と行政では一応の結論を見た事柄かもしれないが、まだ立法府として追及すべき点は残されている。


 財務省における文書の改竄や廃棄は行政組織の信頼性にかかわる重大な問題であり、今回の調査報告書の公表は真相究明の始まりに過ぎない。