霞が関から見た永田町

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ユニコーン20社は可能か?与党も野党も問われる、この国の本気度

 

 

 

政府は6月4日、日本経済の成長に向けた未来投資会議を開き、5年後の2013年までにユニコーン企業を20社以上創出する方針を明らかにした。ユニコーン企業とは非上場でありながら、企業価値が1000億円以上の企業のことを指し、2018年現在、世界には279社のユニコーン企業があるとされている。日本でも6月19日に上場が予定されている、オンラインで中古品を売買するサービスを提供する「メルカリ」も日本を代表するユニコーン企業だ。IPOの仮条件は2700円〜3000円となっており、仮に仮条件の上限額で公開が決まれば、メルカリの時価総額は4000億円となり、一気にマザーズ市場でトップに立つ。

 

 

ユニコーン最大の障壁は中央省庁


さて、「ユニコーン企業を5年で20社つくる」、その心意気や良し、だが果たして政権与党を担う自民党はその意味と、政府の役割を理解しているだろうか?

 

端的にいえば、政府がとにかく邪魔をしないこと、公平・公正の議論を持ち出さないことだ。日本は長らく規制行政で産業を保護・育成してきた。その習慣にどっぷりと浸かってきた中央省庁および政権与党が本当に頭を切り替えられるか、正直、心もとない。

 

ユニコーン20社の最大のハードルは中央省庁であり、永田町なのだ。野党はこの辺を理解して国会で政策論を戦わせられるだろうか。労働組合を支援団体に持つ立憲民主党や国民民主党も、この辺は問われてくる。

 

 

共有経済の台頭で塗り替わる企業の勢力図


非上場でありながら、なぜ彼らが時価総額が1000億円を超える企業価値を生み出しているのか。それは既存の産業構造からは生まれてこないサービスを提供しているからだ。

 

ユニコーン企業の多くは「共有経済」を基盤としてサービスを展開している。共有経済は、「共同消費」または「オンデマンド経済」とも呼ばれ、個人の資源を共有するという概念に基づいている。リソースを共有するこの傾向は、世界を代表するユニコーン企業を見ると顕著で、Uberしかり、Airbnbしかり、Didi Chuxingしかり、である。

 

従来の社会は何かを共有することを前提には設計されていない。したがって、共有経済を前提としてサービスが登場したときに、政府はダメな理由を探しがちだ。民泊も結局、海外に比べれば日本は制限がかかったのは象徴的だ。自動車のライドシェア・サービスであるUberも日本では難しいとされているのか、どう考えてもタクシー業界が政権与党に対して陳情活動を繰り広げるはずだからだ。

 

 

社会の非生産性に切り込む数々の新サービス


繰り返すが、ユニコーン企業は既存の社会システムの非生産的な側面にメスを入れることで、ユーザーの評価を短期間で集めて企業価値を高めている。既存の社会システムに切り込む以上、既得権からすれば、目障りな存在になりがちだ。

 

実際はUberのようなライドシェア・サービスはドライバーの時間あたりの収入を増やしたし、ドライバーのマナーも乗客のマナーも向上した。誰も困っていないのだが、唯一困っている存在があるとすれば、それはタクシー会社だったりする。

 

ユニコーン企業20社を目指すということは、既存の社会システムを否定するサービスが出てきたとしても、政府として邪魔をしないということの宣言に他ならない。自分たちの都合のいいサービスはオッケーで、自分たちに都合の悪いサービスは認めない、というようはおためごかしは通用しない。

 

まさに今問われているのは、社会の生産性を高めるサービスを積極的に認めていく姿勢だろう。おそらく、与党にはなかなかできないことだ。したがって野党にはチャンスだ。とはいえ、彼らも労働組合という社会システムにフィットしない組織に支援をもらっているため、こうした改革を後押しできるか、試金石と言っていいだろう。