2018年5月21日で、裁判員制度が施行されてから9年を迎える。裁判員候補者の辞退率が増加しており、昨年1年間の辞退率は過去最高の66.0%となった。
裁判員制度とは?
平成16年5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が,成立し,平成21年5月21日から裁判員制度が始まりました。
裁判員制度とは,国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい,被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決めてもらう制度です。
国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより,裁判が身近で分かりやすいものとなり,司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。国民が裁判に参加する制度は,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア等でも行われています。
裁判員制度の選ばれ方
①裁判員候補者名簿の作成
秋ごろに翌年の裁判員候補者名簿を作成する。地方裁判所ごとに、市町村の選挙管理委員会がくじで選び作成。その名簿に基づいて、翌年の裁判員候補者名簿が完成する。裁判員候補者名簿に登録されるのは、20歳以上のみである。
②候補者に調査票で通知
候補者に裁判員候補者名簿に登録されたことを通知する。調査票を送付し、就職禁止事由や客観的な辞退事由に該当しているかどうかを確認する。調査票を返送し明らかに裁判員になることができない人や、1年を通じて辞退事由が認められる人は、裁判所に呼ばれない。
③事件ごとに名簿の中からくじで候補者が選ばれる
事件ごとに裁判員候補者名簿の中から、くじで裁判員候補者が選ばれる。
④選任手続期日のお知らせと質問票の送付
くじで選ばれた裁判員候補者に選任手続期日のお知らせが送付される。質問票が同封されており、質問表を返送すると辞退が認められる場合がある。
⑤選任手続期日
裁判員候補者が辞退を希望しなかったり、質問票の記載のみからでは辞退が認められない場合は、選任手続期日の当日、裁判所へ行かなければならない、裁判長から候補者に対し、不公平な裁判をするおそれの有無、辞退希望の有無や理由について質問をする。この手続きは候補者のプライバシー保護のため、非公開となっている。
⑥6人の裁判員を選任
最終的に事件ごとに6人の裁判員が選ばれる。必要な場合は補充裁判員も選任する。
無断欠席が過去最高に
裁判員の出席率は過去最低の63.9%、無断で欠席した人は約36%に達した。
刑事裁判の審理に参加する裁判員の候補者として昨年1年間に全国の地裁に呼び出された人のうち、無断で欠席した人の割合(欠席率)が過去最も高い約36%に達したことが最高裁のまとめでわかった。
辞退が増えている理由は?
裁判員を辞退する人の割合や、裁判員の選任手続きに欠席した人の割合が上昇している原因について、最高裁は「審理予定日数が長期化した点などが影響した可能性が高い」と発表した。
委託先からの報告書によると、裁判員裁判の平均審理予定日数は09年の3.4日が15年は6.1日に増加。審理予定日数が長い事件ほど辞退率・欠席率が高くなる傾向がみられた。また「制度に対する関心の低下」「非正規雇用の増加」なども影響した可能性があるとしている。
辞退が認められる理由とは?
裁判員制度は原則として辞退することができない。しかし、理由によっては辞退を認められる。
・70歳以上の人
・地方公共団体の議会の議員(ただし会期中に限ります。)
・学生,生徒
・5年以内に裁判員や検察審査員などの職務に従事した人,3年以内に選任予定裁判員(「同じ被告人がたくさんの事件を起こしたとして起訴された場合も,すべて同じ裁判員が担当するのですか。」のQ&Aを参照してください。)に選ばれた人及び1年以内に裁判員候補者として裁判員選任手続の期日に出席した人(辞退が認められた人を除きます。)
・一定のやむを得ない理由があって,裁判員の職務を行うことや裁判所に行くことが困難な人
やむを得ない理由としては,例えば,以下のようなものがあります。
・重い病気又はケガ
・親族・同居人の介護・養育
・事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれがある。
・父母の葬式への出席など社会生活上の重要な用務がある。
・重大な災害で被害を受け,生活再建のための用務がある。
・妊娠中又は出産の日から8週間を経過していない。
・重い病気又はケガの治療を受ける親族・同居人の通院・入退院に付き添う必要がある。
・妻・娘の出産に立ち会い,又はこれに伴う入退院に付き添う必要がある。
・住所・居所が裁判所の管轄区域外の遠隔地にあり,裁判所に行くことが困難である。
最高裁は裁判員辞退の理由の分析を受け改善策を検討している。