「疑惑の舞台」国家戦略特区諮問会議が開催される
17日、首相官邸で国家戦略特区諮問会議が開催された。その場で、「スーパーシティ」構想の実現に向けた国家戦略特区法改正案の概要が了承された。この後、国会への法案提出が予定されている。
既に会議での配布資料などは首相官邸のWebサイトで公開されている。第39回がそれだ。どのようなことが議論されたのか公開資料だけでは全容を把握しにくいが、少なくとも今後の方向性のようなものは垣間見える。
実際のところは、開催時間が14時から14時20分までと所要20分の会議であり、配布された資料が確認され、あとは挨拶程度で終わったものと想像される。
年に数回程度の頻度で、これまでも国家戦略特区諮問会議は開催されてきたが、ここがずっと問題になっている加計学園問題の「起点」ともなった会議である。いわば「疑惑の舞台」として、常に関心を払っておく必要のある会議であると言える。
スーパーシティにかかわる利権が動き出すのか
今回了承されたのは、「スーパーシティ」構想にかかわる国家戦略特区の実現についての改正案である。
「スーパーシティ」とは、AIなどの先端技術を活用した都市のことを指す。
国家戦略特区諮問会議の有識者議員が出してきた資料には、以下のように記されている。
「住民合意に基づき、国・自治体・民間が一体となって、革新的な取組をスピーディに進める枠組みを、世界に先駆けて構築することが根幹である。」
この「スピーディに進める枠組み」という点がくせもの。「住民合意に基づき」という枕詞があるが、またもや一部の事業者に有利になる、そしてその事業者が政権中枢に近しい者である可能性のある、そんな曰くつきの案件が知らぬ間に進められてしまうことが懸念される。
上記の有識者議員提出資料は、次のように記して閉じられている。
「昨年10月以来、「国家戦略特区のリセット」を進めていただいている。しかし、残念ながら、事業数、活用された規制改革メニュー数とも、平成30年度は前年度をも下回り、事業数では平成28年度の3分の1程度にとどまっている。これまで国家戦略特区に強くコミットしてきた関係自治体首長らとの連携を再構築し、国家戦略特区の再生を引き続き進める必要がある。」
国家戦略特区の活用自体は否定されるべきものではなく、適宜活用されれば良いと思うが、「残念ながら」とあるあたり、少々不穏なものを感じる。
積極的に手を上げようとしない自治体や事業者をけしかけて、事業性に危うい事業が国のお墨付きを得て進められるとしたら、本末転倒である。
最後に、「国家戦略特区の再生を引き続き進める必要がある。」とされているが、そうであるならば、むしろ国家戦略特区という制度の賞味期限が切れたということではないだろうか。そこに無理に「スーパーシティ」なぞ持ち出して来て、事業者を募るのというのは、新たな利権を作り出すだけではないだろうか。
常日頃の監視が必要
加計学園問題の際もそうだったが、実際の問題が国民の目に晒される前に、国家戦略特区諮問会議のような会議の開催が積み重ねられている。各回の議事には関心が払われないが、そういう無関心を突くように、重要なことが決定されてしまうのだ。
今週は、統一地方選挙の後半戦や衆議院議員の補欠選挙もあり、政治に関するニュースもそちらへ関心が向かいがちだ。資料なども公開されているため、政府が「こっそり」進めたと批判するのは不当だが、そうかと言え、どうしても関心が向かいにくい時に事が進められている感が拭えない。
いずれにしても、このような会議についても、その都度、少しばかりで良いので国民的な関心が向かい、無理なことが勧められないよう常日頃から監視する必要があろう。
政府提出の資料「スーパーシティとデータ連携基盤について」を見ると、そこはかとなく、特定の地域や事業者を政府側が何となしに想定しているのではないかと思われる記述を目にする。
「やっぱり、その地域で、その事業者がやるのか」ということになるようなら、そこには加計学園問題と同じ病巣があるかもしれない。
そういうことにならないよう、今後予定される国会での審議についても注視していきたい。