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東京オリンピック・パラリンピックでは日本のセキュリティ対策が問われている

 

 

 

サイバーセキュリティ担当には不適当な桜田大臣


 東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当の桜田義孝大臣がサイバーセキュリティの担当でもありながら、自身はPCを使ったこともなく、USBが何かすら知らないと国会で答弁したことから、海外でもそのニュースが報じられる事態になっている。
 東京オリンピック・パラリンピックの理念もまともに答えることが出来なかった桜田大臣だが、サイバーセキュリティも担当させるには不適当な人物だったようだ。

 

 

一部には擁護の声もあるが


 しかし、ネット上では、「PCを使用しないのだから、セキュリティ上は最強」だとか、「実務を担うのは専門家なので、専門知識がなくとも、大臣を務めることは可能」などといった意見も見られるようだ。
 確かに、大臣自身のリスク管理という意味では、PCは利用しない、USBなんて知らないというのは決して悪い状態ではないのかもしれない。実務も担うのは大臣ではなく、大臣が最前線でサイバーセキュリティ対策を担うわけでも当然ない。
 ただし、上記のような意見を表明している人たちが見落としている、あるいは軽く見ている事実がある。それは、まがりなりにも桜田大臣が日本政府のサイバーセキュリティ対策の中心を担うことを任されているという厳然たる事実だ。
 そもそも、サイバーセキュリティの担当大臣が素人であって良いはずがない。もしも桜田大臣が適任でないなら別の大臣に担当させれば良い。あるいは国会議員の中から適任者を探すなり、民間から適任者を迎え入れることも検討すべきなのだ。
素人であっても、担当大臣が指示を出せば、その指示を受けて官僚たちは仕事をする。国会での答弁に窮して後ろに控える官僚の手助けを受ける大臣。今回の桜田大臣の国会答弁でも繰り返される光景だが、その手助けすら理解出来ている様子が見えにくい大臣が本当にまともな指示が出来るのだろうか。
 誤った指示であっても、それが大臣の指示である以上は従わざるを得ないが、素人の思い付きで間違った指示など出されようものなら、目も当てられない。大臣が黙っていてくれれば間違った指示に基づき官僚が動くということは起きないが、逆に官僚が暴走していても、例えば官僚が忖度をして特定の企業を優遇するようなセキュリティ対策を日本政府として採用するようなことがあっても、それを政治家がコントロールすることが出来なくなるのである。

 

 

サイバーセキュリティ担当大臣とは?


 桜田大臣がサイバーセキュリティ担当の大臣とされているが、正確には「サイバーセキュリティ戦略本部に関する事務を担当する国務大臣」に当たるのが桜田大臣である。この「サイバーセキュリティ戦略本部に関する事務を担当する国務大臣」はサイバーセキュリティ戦略本部の副本部長であり、この副本部長を務めるのが桜田大臣ということである。
 本部長は内閣官房長官が務めることになっている。そして、サイバーセキュリティ本部の本部員は、国家公安委員会委員長、総務大臣、外務大臣、経済産業大臣、防衛大臣、情報通信技術(IT)政策担当大臣、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣の各大臣、さらに大学教授など7名の民間人から成る。

 

サイバーセキュリティ戦略本部 名簿

 

 

 本部員でもある東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣が副本部長を務めているのである。これは桜田大臣が例外的というわけではなく、歴代そうであった。
 東京オリンピック・パラリンピックに限らず、近時のオリンピック・パラリンピックではサイバーセキュリティ対策が特に重要な課題とされてきた経緯もあり、オリンピック・パラリンピック担当の大臣がサイバーセキュリティ担当の大臣も兼ねるということ自体は特におかしいことでもない。
 オリンピック・パラリンピックの開催決定以降、日本政府におけるサイバーセキュリティ対策が急ピッチで進められている。そういう事情もあって、担当を兼務させているということである。

 

 

オリンピック・パラリンピックは日本のセキュリティ対策全般が問われる


 オリンピック・パラリンピックの担当大臣なんて、誰でも出来るなどと勘違いしている人も少なくないようだが、さにあらず。オリンピック・パラリンピックは世界中からスポーツ選手だけではなく、外国の要人も数多く参加するイベントであり、サイバーセキュリティに限らずセキュリティ全般に関して高度な対策が求められる。セキュリティ対策の不備は、日本国内のみならず国際的な問題に発展する重大な損害を生じさせるのである。その責任者であるオリンピック・パラリンピック担当大臣はただのお祭りのための大臣ではなく、国家の命運すら左右しかねない重要な大臣なのだ。

 

 内閣総理大臣は常に任命した大臣につき「適材適所」を強調する。しかし、「在庫一掃」と揶揄されるほどに初入閣待機組を数多く取り込んだ現在の安倍内閣は適材適所とは程遠い状況にあったようだ。待機組の一人とされる桜田大臣。とにかく、いずれかの大臣にと考えて、それ程難しい仕事ではなかろうとオリンピック・パラリンピックの担当に充てたのだろうが、完全にその目論見は間違いだったということになる。
 オリンピック・パラリンピック開催時にサイバー攻撃を受け、大きな被害が起きてからでは遅い。もちろん、素人でも担当大臣は務まるなどと呑気なことを言っていられる余裕もない。少なくともサイバーセキュリティ担当には、その知見を有する人物を充てるべきであろう。東京オリンピック・パラリンピックでは、日本のセキュリティ対策全般が問われていることを政治家のみならず全国民が認識する必要があり、厳しい目でその担当大臣の振る舞いもチェックしていく必要がある。