霞が関から見た永田町

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障害者雇用水増し問題、耳を疑う厚労省の見解、永田町の矜持を見せられるか

 

 

 

2018年8月、中央省庁全体で3460人にも及ぶ障害者雇用水増し問題が発覚した。内閣官房に、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、人事院、会計院の27省庁に及ぶ。

 

しかも、障害者雇用の水増し問題は単年度の話ではなく、実に42年にも及ぶ問題であったことも明らかになった。この問題は中央省庁に限った問題ではなく、地方自治体でも同様の状況が確認されている。47都道府県のうち、42の都道府県でも障害者雇用の水増しが確認されている。

 

どこまでも杜撰な中央省庁


この水増し問題は、その認定の杜撰さにある。例えば、「うつ状態」や「不安障害」などの自己申告者を、臓器などに障害を抱える「身体障害者」と認定していたり、ひどいケースでは、退職者など在籍していない人まで障害者雇用の数に参入していた事例も確認されている。その中には、すでに死亡していた人も含まれており、あまりの杜撰な実態が明らかになったところだ。

 

さて、問題はこうした障害者雇用の水増し問題に対して中央省庁および地方自治体がどこまで真摯に向き合えるか、だろう。現時点では残念ながら悲観的にならざるを得ない。11月12日、厚生労働省はこの問題をめぐる職員の処分を見送る方針を固めたからだ。

 

厚生行政を司る同省が本件について職員の処分を見送ることの影響はとてつもなく、大きい。厚生労働省は、他省庁の実態把握が十分でなかったこと、同省自身も不適切形状していたことに対して、「道義的責任」は認めつつも、処分に値する違法な行為はなかったとしたという。

 

企業を舐めきっている厚労省


障害者の雇用については、れっきとした法的な位置付けがある。「障害者雇用促進法」がそれだ。同法では、企業や行政機関に対して一定の割合で障害者を雇用するように義務付けており、民間企業は法律に則り、その水準を維持すべく努力をしているところだ。にも関わらず、その法律を定めている中央省庁が雇用の水増しを行なったばかりか、「道義的責任はあるが、違法ではない」とする態度を取る、というのはレゾンデートルを自ら否定したことに他ならない。

 

果たしてこんなことがまかり通っていいのだろうか。障害者の雇用率が未達の場合、納付金制度といって、罰則に従ってお金を支払わないといけない仕組みとなっている。しかも、罰則としてお金だけではなく、未達の企業は会社名も公表するという厳しい姿勢で臨んできたのが厚生労働省だ。徴税とルールメイクこそが権力そのものである中央省庁が自らの過ちについて、道義的責任だけで済ませてしまおうとする態度は、天に唾をするものと言っても言い過ぎではないだろう。

 

 

永田町は毅然とした態度を示せ


この問題は与野党を超えて、どの政党もすねに傷を持っている。法定雇用を守れていた政党はなにせ、皆無だからだ。そういう意味では政党の責任も大きい。うがった見方をすれば、中央省庁サイドは永田町がこの問題で霞ヶ関を批判できないことを見越して、このような大甘の決断を下したのかもしれない。

 

果たして、そのような姿勢でいいのだろうか。道理が通るのだろうか。ここは永田町の毅然とした態度が求められるところだ。水増しをしてなかった分だけ、霞ヶ関よりましというと、それこそ甘いと言われるだろう。だからこそ、永田町は積極的に自らの過ちを認め、今後の方針を各党、しっかりと打ち出すことだ。その上で、厚生労働省の姿勢を厳しく問い正すべきだろう。それができなければ、政党もその存在意義を国民から疑われることになるだろう。どの政党がいち早く、この問題で明確な道筋をつけ、かつ、中央省庁をあるべき姿に戻せるか、そこを国民は固唾を飲んで見守っている。