霞が関から見た永田町

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はたして自衛隊の日報には何が書いてあったのか

 

 

 

今度は別部署で日報が見つかる

 

4日に、存在しないとされていた自衛隊部隊のイラク派遣に関わる日報が陸上幕僚監部衛生部や研究本部で保存されていたことが小野寺防衛大臣から発表された。
そして、6日には、航空幕僚監部や運用支援・情報部にも日報の一部が保存されていたが明らかにされた。


航空自衛隊で新たに見つかった日報については、数日分と量が少ないようで、長期間にわたり1万ページ以上の日報が見つかったとされる陸上自衛隊とは、そもそも保有の目的が違っていたことが推察される。ただ、航空自衛隊のように数日分の日報を保存しているということがあるのだとすると、海上自衛隊や防衛省の内部部局にも何かの参考資料として保存されているといった可能性も指摘されるだろう。


「存在するはずの文書を探す」ということになると、途端に役人たちはサボタージュを決め込むようで、文書が保存されている場所をあえて探さないということをするようだ。イラクの日報についても、当初調べていなかった外付けハードディスクの中に残っていたと言われている。イラクへの派遣は自衛隊をあげて行ったことであり、その日報を捜索するとなれば、陸上や航空、海上という組織の違いを越えてそれに当たるべきだと思われるが、今回、陸上自衛隊と航空自衛隊で別々に日報の存在が明らかとなったように、組織をあげた捜索は行われていなかったのである。

 

 

焦点は日報の内容

 

 通常国会も4月から会期の後半に入っていくが、この自衛隊の日報の隠蔽については、自衛隊における日報の管理方法や稲田朋美前防衛大臣が行ったとされる文書探索の指示、小野寺防衛大臣の就任以後の対応について追及されることが予想される。野党としては、森友学園問題に関する文書の隠蔽や改竄と合わせて、このイラク自衛隊派遣の日報の問題を取り上げて、安倍政権の問題点を追及していくことになるのだ。


 ここで、特に野党議員に注意を願いたいのは、文書の管理や大臣と役人の関係といったことに目を奪われて、隠されていた文書そのものへの関心を失わないようにすることである。

 今回問題になっているのは、自衛隊がイラクに派遣された際に作成された日誌である。当然、そこには現地で何があったのか記されていることになる。その文書の公開を拒んでいたということは、その中には外に見せたくない情報が含まれている可能性があるのだ。

 

 そもそも、自衛隊のイラク派遣については、2008年4月に名古屋高裁が航空自衛隊の派遣に関して「憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」という判断を下している。

 

www.asahi.com

 

以下がその際の判決文である。

 

 「現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は,政府と同じ憲法解釈に立ち,イラク特措法を合憲とした場合であっても,武力行使を禁止したイラク特措法2条2項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し,かつ,憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。」
 (参照:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/331/036331_hanrei.pdf)

 

 この文章の少し前のところで、「その詳細は政府が国会に対しても国民に対しても開示しないので不明であるが」とある(上記判決文20頁より)。


 名古屋高裁も自衛隊のイラク派遣につき、現地の状況は正確には伺い知れないことを認めた上での判決を下しているのである。


 この「詳細」の一端は今回存在が明らかとなった日報には記されている可能性があるのだ。

 

 

まずは日報の開示とその内容の確認を

 

 自衛隊のイラク派遣に関する日報について、その内容は国家安全保障上の問題があるとして、全面的な開示はなされないことも予想される。


 さすがに、この場面で防衛省が開き直ることは考えにくいが、国家安全保障上、極めて機密性の高い情報が含まれることから、この日報の存在の有無そのものについても回答を控えていたという抗弁も考えられなくもない。

 

 そのような中で、野党は日報の内容の開示を強く求めていくべきであろう。そして、森友学園問題に関する文書を財務省が改竄していたことから示唆されるように、もはや各府省の文書管理の信頼性は失墜していることから、自衛隊の日報についても当事者にその内容の真偽を確認する必要がある。


 幸いなことに、佐藤正久第1次イラク復興業務支援隊長は現在外務副大臣を務めている。さらに、南スーダンPKOに関する自衛隊の日報を発見する際に大きな役割を果たした河野太郎議員が外務大臣を務めている。防衛省に自浄能力があるのか否か怪しいところもあり、ここは現場を知る佐藤副大臣や文書公開に積極的な河野大臣を日報の内容確認に巻き込んでいくべきであると言えそうだ。


 そして、衆議院は「外交委員会」と「安全保障委員会」に分かれているが、参議院は「外交防衛委員会」であり、外務省と防衛省を所管していることから、河野大臣や佐藤副大臣の出席も求めやすい。

 

 なぜ、自衛隊のイラク派遣時の日報が隠蔽されることになったのか。日報に記された内容を丁寧に確認することで、その原因の解明を行っていきたいところである。

 

www.ksmgsksfngtc.com