持続可能な介護保険制度に向けた取り組みを
高齢者用の施設、住宅の話ばかりになってしまったが、これはこれで重要な課題といえる。高齢者人口の増加に伴い、介護サービスの需要が増加していく一方で、支え手である現役世代が減少し、地方自治体の財政負担が大きくなる中で、保険料が過度に増加することが無いよう、国庫負担の引き上げ、自己負担のあり方、被保険者の対象について検討を進め、将来に向けて持続可能な介護保険制度を構築していく必要がある。
高齢者が住み慣れた地域で住み続けられ、医療、介護、生活支援サービスを安心して受けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を進めていくことが基本であるが、老親に子どもが暮らす都会に来てもらう「呼び寄せ高齢者」も目立っており、高齢者は一つの地域に住み続けるという固定観念にとらわれ過ぎてもいけない。
介護保険制度については、様々な論点があるが、介護従事者等の確保策が最重要課題の一つである。介護職の賃金が低いことが介護現場の人手不足の大きな要因となっており、処遇の抜本的改善が求められる。これからの時代を担う若者が、介護を職業として積極的に選択できるよう、介護という仕事の意味や魅力を学校教育の中で学ぶ機会も増やしていかなければならない。
あわせて介護家族に対する対策もしっかり講じていかなければならない。介護休暇を時間単位での取得を可能にするとともに、家族を介護する期間が長期化した場合に介護休業の通算期間を延長するなど、介護する家族の立場に立って、仕事と介護が両立できる環境を整えるべきだ。また、在宅で介護をしている家族に対するケアを重視し、介護する家族が一時的に介護から解放され、リフレッシュするための支援も進めていかなければならない。
先日も電車の中で、新しい老人ホームのオープンの広告を見かけた。その隣には同じ施設が介護スタッフの募集を同時に出していた。いかに老人ホームが介護人材の確保に四苦八苦しているかの証左である。
「日本は世界でも類を見ない『超高齢社会』に入っている」というフレーズはもう聞き飽きるほどのものとなっている。確かに、介護保険をはじめとする高齢者対策には暗いイメージがつきまとう。「長寿めでたい話だ」と短絡的に開き直ることはすべできないが、高齢者対策を子どもたち、若い人たちに希望を抱かせる政策と両立させていかなければならない。
日本が様々な課題を乗り越え、超高齢社会においても物心ともに豊かな経済社会を維持していければ、急速に少子高齢化が進むアジア諸国にとっての先端的なモデルともなりうる。
一筋縄ではいかないが、そうした意味での建設的な視点も脇に置きながら、介護保険制度についての議論が行われることを喚起していきたい。