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11月の福岡市長選挙へ向けて ―国政が地方政治を揺るがす―

 

 

 

内閣改造で復興大臣は高島福岡市長?

 

 近々予定されている内閣改造について、ある噂を先日耳にした。
 安倍総理に高く評価されている高島宗一郎福岡市長が復興担当大臣に登用されるというもの。一部、ネット上などでは話題になっていたが、その話をしてくれたのが九州の政治状況に特に通じた方であったので、あるいはそういうこともあるのかと思ったところだ。

 

hunter-investigate.jp

 

 

 高島市長の任期は間もなく満了し、11月18日に市長選挙の投開票が予定されている。このスケジュールもあって、入閣の噂の信憑性も高まったとも言える。そして、高島市長は大臣としての看板を背負って、来年の参議院議員選挙に自民党の候補として打って出るといった話、あるいは、小池知事の後の東京都知事を目指すのではないかという話すらあるそうだ。

 

 

3選へ向けて市長選へ出馬

 

 しかし、時事通信の報じるところでは、高島市長は11月の市長選挙に出馬する意向を固めたとのことである。

 

www.jiji.com

 

 

 出馬するとなれば、高島市長は3期目に挑戦するということになる。有力な対抗馬が現れるとは考えにくく、出馬すればまず3選は確実だろうと思われていた。高島市長の下で、国家戦略特区制度を活用した起業支援など一定の成果があり、三期目を目指さない理由も特段見当たらなかったため、順当な展開になったと言えよう。

 

 

微妙な福岡の政治状況

 

 現職の首長の中でも高島市長が安倍総理に近しいとは言われてきたものの、一方で、高島市長は福岡市議会の自民党とは必ずしも良好な関係を築いてはいない。そういうこともあって、高島市長は国政への転身を模索しているとの憶測が流れていた。

 

 そもそも福岡の政治状況は微妙だ。福岡県は、麻生太郎副総理の地元。そして、もう一人、古賀誠元自民党幹事長も福岡を代表する政治家である。この二人はライバル関係にあって、事あるごとに争ってきた。古賀氏の政界引退後も、麻生派対反麻生派に分かれて、福岡県内の議会などでは対立が起きているのだ。

 

 麻生派対反麻生派の対立の顕著な例が福岡1区の候補者選定。2012年の選挙の際、当初は古賀氏の秘書の新開裕司氏が公認候補であったが、これに麻生氏が難色を示し、結果、井上貴博氏が公認候補とされた。井上氏はこの時に当選するが、後の2014年の総選挙の際にも新開氏との公認争いが勃発し、この際には、井上・新開両氏は無所属で出馬することになり、勝利した井上氏が当選後に自民党から追加公認を受けるかたちになった。

 

 来年は参議院選挙が予定されているが、福岡選挙区は定数3。定数3になったのは前回2016年の選挙から。その3人の所属政党は当然順に民進党・自民党・公明党となっていた。このうち、自民党は大家敏志氏であるが、大家氏は麻生派に所属している。


 2019年に改選を迎える2013年の当選組は2名で、それぞれ自民党と民主党であった。このうち、自民党は岸田派に所属する松山政司氏である。来年の参議院選挙では定数が1名増えることになるため、自民党としては2人目の当選を見込んだ候補者擁立も考えられるところだ。ここにも対立の火種がありそうだ。

 

 

市政運営に影響する麻生派対反麻生派

 

 福岡市議会の自民党の中にも対立があり、これが高島市長の市政運営にも少なからず影響を及ぼしてきた。


 例えば、昨年も福岡空港への出資をめぐり、高島市長と自民党福岡市議団が対立した。

 

 それまで、福岡市は空港ターミナルを運営する福岡空港ビルディングに出資していた。しかし、空港が民営化されることになり、それに伴い新たな運営会社には対して福岡市は出資しないことを決めた。そして、民営化に伴う株式の売却益を基金として空港周辺の街づくや子育支援へ役立てると高島市長は表明した。


 それを実現するための条例案が市議会に提出されたが、自民党が反発し、同提案を反対多数で否決した。さらに、高島市長の意向とは反対の空港への出資を市に義務付ける条例案を提出し可決させている。
 これに対しては、高島市長は再議を求めるという反撃に出た。

 

www.sankei.com

 

 

 再議を求められた議案の可決には、出席者の3分の2以上の賛成が必要となる。高島市長派と反市長派の多数派工作が繰り広げられ、結局1票足りずに再可決とはならなかった。

 

www.nishinippon.co.jp

 

 

 この件での自民党福岡市議団での対立がそのまま麻生派対反麻生派の対立を反映しているわけでは必ずしもないが、事あるごとに高島市長の市政運営にその対立が影を落としてきたことは事実だ。特に高島市長が安倍総理に近く、さらには麻生副総理の意も汲んでいると言われると、少なくない福岡の反麻生派議員らにとっては快くないところで、市長が進めようとする政策にも反対をしたくなろうというものである。

 

 

国政が地方政治を揺るがす

 

 市長の任期満了後に私人に戻っているのであれば、その人物が入閣しようがそれは自由であり、声がかかればその時に判断をすれば良いことだ。それについて、外野がとやかく言うことではない。ただ、国政の動きや政治家同士の対立が地方政治に直接大きく影響し、現職の首長も巻き込まれるとなれば、それは考えものである。

 

 特に知事や福岡市のような政令市の市長は当該地域でも一定の知名度を誇る。来年予定される参議院議員選挙では、彼らの中から候補者として擁立することを検討される者も出てくることだろう。


 今回は、高島市長が11月の市長選挙に出馬する意向と伝えられたが、もし三選を果たしても、来年の参議院議員選挙は相応の時間がある。復興大臣の話はおそらく実現することはないだろうが、来年の夏まで、市長を辞めて国政へ転身するのではないかという話が断続的になされることになりそうだ。

 

 麻生派対反麻生派の対立も当面続きそうで、福岡では国政が地方政治を揺るがす事態が続きそうである。