東京都の小池百合子知事が築地市場の豊洲移転延期を表明してから8月31日で1年。移転までの経緯や移転が延期になった理由をまとめた。
築地市場移転の経緯
築地市場開場~移転までの主な経緯
1935年 築地市場開場 1991年 築地での再整備着工 1996年 再整備工事中断 1999年 石原氏が知事就任
豊洲への市場移転に向け東京ガスと交渉本格化
2001年 豊洲移転で都と東京ガスが基本合意 築地市場の豊洲移転決定 2007年 豊洲の土壌汚染対策の専門家会議発足
都が盛り土を提案
2008年 土壌から環境基準の4万3000倍のベンゼン検出 専門家会議が敷地全体の盛り土提言 2009年 豊洲新市場整備方針を決定 移転時期は14年度に 2010年 石原氏、豊洲移転を正式表明 2011年 都と東京ガス、用地売買契約 2013年 14年度から15年度に移転延期 2014年 豊洲市場着工 土壌汚染対策の工事完了 2015年 16年11月7日移転を決定 2016年 市場本体施設が完成 2017年 小池氏、移転延期を表明 敷地の一部で盛り土無し表面化 豊洲地下水から環境基準100倍のベンゼン検出 市場問題プロジェクトチームと専門家会議が報告書 都戦略本部が豊洲の追加安全対策 小池氏、市場移転の基本方針表明
築地の跡地は売却せず、5年後をめどに再開発。市場機能も持たせ、将来的に両者を併存させることを視野に検討するとした。
築地市場は構造が時代遅れ
主な移転理由
昭和10年の開場から75年以上が経過している築地市場は、施設の老朽化が進み、建物の一部が劣化により破損して落下するなど、安全性に多くの不安を抱えています。また、狭隘化も著しく、荷置き場所が不足し一時的に荷を屋外に置かざるを得ないなど、商品の品質・鮮度保持の徹底が難しくなっています。物流面においても、駐車場や荷さばきスペースが大幅に不足しているため、トラックの入場待ちや渋滞が発生、さらに、混み合った場内のいたるところで荷の積み下ろしなどが行われるなど、作業が非効率になっています。
築地市場の汚染問題
調査は水産仲卸売場周辺など8区域の111カ所で表層から深さ50センチまでの土を採取して行い、有害物質は8区域全てで出た。各物質の最大値は基準値に比べ鉛が4・3倍、ヒ素2・8倍、水銀1・8倍、フッ素1・5倍、六価クロム1・4倍。ヒ素が最も多い20カ所で検出された。
東京都は31日、築地市場の空気中から環境基準をわずかに上回る有害物質ベンゼンを検出したと発表した。5月の土壌調査で揮発するおそれのあるベンゼンと水銀を検出した一部の地点について、7月中旬に空気を測定。水銀は不検出だった。都は「ベンゼンが土壌から揮発した可能性は低い」とみているが、10月ごろに空気を再測定し原因を探る。
なぜ豊洲が選ばれたのか
築地市場の移転先については、平成12年から平成13年にかけて、東京都卸売市場審議会で、約40ヘクタールの敷地の必要性、良好な交通アクセス、築地の商圏との継続性等の条件をもとに、豊洲地区、晴海地区、有明北地区、石川島播磨重工業豊洲工場跡地、中央防波堤内側の5地区を候補地として、現地調査も行い、比較検討しました。「用地」「交通」「商圏」の全ての条件を満たす場所は、豊洲地区以外にありませんでした。
築地と豊洲の比較
築地市場 | 市場 | 豊洲市場 |
東京都中央区 | 所在地 | 東京都江東区 |
1935年2月11日 | 開場日 | 未定 |
23ヘクタール | 敷地面積 | 40.7ヘクタール |
28.5万平方メートル | 建物面積 | 51万平方メートル |
水産1600トン | 取扱数量 (1日あたり) |
水産2300トン(計画値) |
青果1000トン | 青果1300トン(計画値) | |
「築地ブランド」が確立。 | メリット | 十分な荷さばき・駐車スペースを確保。 |
都心から近い。 | 閉鎖型で適切な温度管理。 | |
交通アクセスが豊富。 | 耐震基準の1.25倍以上の強度。 | |
年6億円の黒字。 | ||
開放型で温度管理が不十分。 | デメリット | 年98億円の赤字。 |
鉄道輸送時代の施設構造で狭く、交通事故も多い。 | 交通アクセスが少ない。 | |
耐震基準を満たさない建物もある。 | 土壌汚染を環境基準値以下とする目標は未達成。 | |
アスベストが残存。 |
築地市場は、面積約23ヘクタール。この中で、7の卸売業者と約1000(うち水産約820)の仲卸業者によってせりが行われる。2005年の取扱数量は、全品目合計で約916,866トン(一日当たり水産物2,167トン、青果1,170トン)、金額にして約5657億円(一日当たり水産物1,768百万円、青果320百万円)になる。
環二通りと東京都市計画道路補助第315号線の交差点を中心に5街区から7街区の3街区に跨がって建設された。東側の5街区に青果棟(地上3階建)、西側の6街区に水産仲卸売場棟(地上5階建)、南側の7街区に水産卸売場棟(地上5階建)および管理施設棟(地上6階建)が配置されている。
交差点の北東方に市場前駅があり、歩行者デッキで各街区と連絡される。
豊洲市場へ移転の問題点
豊洲市場の汚染問題
土壌汚染問題
予定地の土壌汚染は、かつての石炭から都市ガスを製造する過程において生成された副産物などによるもので、7つの物質(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)による、土壌及び地下水(六価クロムを除く)の汚染が確認されています。
地下水汚染問題
東京都の豊洲市場(江東区)の土壌汚染対策に関する専門家会議が19日開かれ、地下水モニタリングの再調査結果を公表した。再調査の対象となった29地点のうち、ベンゼンは最大で飲み水の環境基準の100倍を、ヒ素は同3.6倍を検出した。シアンは18地点で検出した。
空気汚染問題
都は豊洲市場の施設の地下空洞の大気中から、国の指針値の最大7倍の水銀が検出されたと発表。同会議は「直ちに健康に影響はない」との見解を示す一方、原因は不明としており、詳しく調査する。
汚染以外の問題
「豊洲新市場が今のまま開場すれば、床が抜けてしまうかもしれない」と指摘したのは、東京中央市場労組執行委員長の中澤誠氏(51)だ。新市場で仲卸業者が入る「6街区」の、床積載荷重の限度は1平方メートル当たり700キロ。築地市場を頻繁に行き交う荷物運搬用の小型車「ターレー」1台の重量は、運転者と積載貨物を含めると約2トンにも及ぶ。
豊洲移転は3回延期を繰り返している
東京・築地市場の豊洲移転が1年延期する見通しになった。汚染土量が想定よりも上回り、現在、5-7街区の計3街区で進める対策工事が長期化するためだ。これにより、2012年度中に発注を予定していた施設群で最大規模となる水産仲卸売場棟の建築工事は13年度にずれ込むことになる。
東京都は、12月17日午前10時から、築地市場講堂で第16回新市場建設協議会を開催し、豊洲新市場の2016年(平成28年)11月開場を業界と合意した。この合意後、午後1時からの都議会本会議で、舛添知事は16年11月開場を正式に表明した。
豊洲新市場開場が2016年11月に決定するも、課題山積の現状に業界からは東京都に対して苦言が続く、東京五輪開催による影響も指摘 | IWJ Independent Web Journal
小池氏は昨年8月の知事就任直後、豊洲市場の安全性の確認などを理由に、同11月の予定だった移転の延期を表明。豊洲市場では今年1月以降、地下水から環境基準値を上回る濃度で有害物質が検出されている。
豊洲移転、築地再開発が掲げられているが、問題点、反対の声が多く上がっており、最終的にどのようにまとまるのかいつ実行されるのかは注目である。