霞が関から見た永田町

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旧態依然を脱却した新時代の地方創生の視座を持て

 

 

 

地盤沈下する地方の現状は厳しい

 

「盆と暮れはともかく、田植えと祭りには帰ってこい」

 

夏祭りの準備に湧く地方の漁村では、冗談交じりに故郷を離れていった子どもたちへこんな言葉をかけるという。

 

江戸時代末期の文化・文政期、暮らしが豊かになっていったその時代、日本各地で祭の文化が花開いた。「今も各地で受け継がれる祭りのそのルーツは京都の祇園祭にある」ととある民俗学者から教わった。日本の台所・大坂を中心に日本各地を結ぶ海路輸送ルートが整備され、多くの人や物が移動したその時代、京都の荘厳雅な夏祭りも同じく、日本の津々浦々に広まった。

 

時は流れ、人や物の移動に陸路の果たす役割が増すにつれ、港町のかつての賑わいは思い出話に変わっていった。どうやって地方都市の地盤沈下を食い止めるのか。今、様々な知恵が求められている。

 

 

実効性のある地方創生を実現できるか


政府が地方創生の基本方針を閣議決定した。第2期として2020年から5年間の指針となるもので、今後、都市に住みながら地方にかかわる「関係人口」を増やし、交流によって活性化することを柱にする。

 

人口減少社会において特に地方の置かれた状況は厳しい。一方、東京圏には全人口の3割が集中し、特に30歳未満の若い世代の流入量が多いという。東京に熱い視線が注がれているのは紛れもない事実。この視線をもう一度地方に向けられるのかどうか。今政治が果たす役割は大きい。

 

しかし、東京にあって地方にないものは多いし、東京でなければできない仕事があるのも事実だ。2014年にスタートした第1期で掲げられた目標の一つに、東京圏への人口の転入を抑制し、転出入均衡を政府は目標に掲げたが、2013年に10万人だった転出超過は2017年には12万人と転入超過数は逆に伸びた。

 

東京都の人口は2020年をピークに減少に転じると言われていたが、2015年に公表された東京都の調査では、人口のピークは2025年に伸びている。東京を目指す人はやはり多い。この流れは東京とその他の地域の所得格差を生む要因にもなる。

 

 

移動の自由度が高い時代だからこその難しさ


どの土地を選ぶかはその人の自由。であれば選びたくなる地方をどう作るかに知恵を絞らなければならない。求めたいのは、地域主権改革を進め、地域が独自の魅力を磨き世界に発信できる制度設計だ。

 

人口減少と過疎化にともなって引き起こされる耕作放棄地や事業承継などはすでに地方都市でも申告な問題になっているし、空き家問題や中古住宅市場の問題は人口流出が進む地方都市においても喫緊の課題だ。

 

これらを国が一律の制度で解決できるわけもなく、地域特有の歴史文化を踏まえて土地の人々が自分たちの知恵で解決できる力を育むことこそ、国全体の力を底上げすることにもなる。いつまでも中央省庁や政権与党への陳情や口利きが幅を利かす仕組みからは脱却したいものである。

 

 

働き方改革と次世代につなぐ農林水産業を


こうした流れを後押しするのが、働き方改革である。地方都市出身者は一方で、東京のような人に溢れた環境を望まない人も多くいる。仕事が限られるからこそやむをえず首都圏で働いているという人がいることも事実だ。

 

地方都市に住まいを構えながら、これまで通り、都内の本社業務を担うこともできないわけではない。地方が独自にその街の産業を興そうとするとき、首都圏で仕事をしていた人たちのスキルが活かせる場面もある。

 

UターンやIターンを後押しすることにもなるだろう。故郷に戻れば、住居費用も東京圏よりも安く済むほか、職住近接の環境で働けるケースも少なくない。殺伐とした通勤電車に揺られる友人知人は多いが、「満員電車大好きだよ」と嬉々としている人を見たことがあるだろうか。

 

 

自治体と大学の連携も


多くの若い人材の受け皿となっている大学も、受け入れた学生の就職先確保のため、地方自治体と提携する動きが目立つ。就職率を向上させたい大学と若い人材を確保したい自治体との利害は一致している。

 

地方都市を支える農林水産業を育てる政策にも力を注ぎたい。日本の農産品を世界に発信できるよう地元産業界が連携する六次産業化を加速させる取り組みは、地方に独自の産業を生み出す契機にもなる。林業の発展や水産業の活性化も欠かせない視点である。いよいよ参議院選挙の号砲もなる。新時代の地方創生を実現させる新しい穏健保守勢力の台頭に期待したい。