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天皇陛下の退位・皇太子さまの即位の件では立法府にも適宜報告を

 

 

 

天皇陛下の退位と皇太子さまの即位に向けた準備が進む

 

 天皇陛下の退位と皇太子さまの即位に向けた準備が着々と進んでいる。
 政府高官を中心として運営し、儀式などの大きな枠組みを議論するために、今年1月9日の閣議で「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会」が設置されている。委員長は内閣官房長官であり、委員としては内閣官房副長官(政務)、 内閣官房副長官(事務)、 内閣法制局長官、宮内庁長官、内閣府事務次官が入っている。
 この会議は、1月、2月、3月に1回ずつと計3回ほど開催されているが、ここで大きな方向性は固められた。ここでとりまとめられた「基本方針」が4月3日の閣議で決定されている。

 

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 天皇陛下の退位の儀式となる「退位礼正殿の儀」は来年4月30日に行われ、翌日の5月1日に皇太子さまの新天皇の即位に伴う「剣璽等承継の儀」「即位後朝見の儀」が開催される。新しい天皇の即位を国内外に示すことになる「即位礼正殿の儀」は10月22日に開かれる。これらは国事行為として執行される。


 宮内庁が行う「大嘗祭」は、過去の例にならって実施されることが口頭了解されている。これは11月14~15日に実施される。

 

 今年の8月1日には、「皇位継承式典事務局」が設置され、専従職員が配置されている。外国賓客の受入れ・接遇業務の中核を担う外務省も同日、「即位の礼準備事務局」を設置している。


 今後、政府は首相を委員長とする式典委員会(仮称)を発足させ、官房長官を本部長とする式典実施連絡本部(仮称)も設置する方針で、一連の式典、慶祝行事の準備が着々と進められることになる。

 

 当然、予算面での担保も必要であり、平成31年度予算の概算要求において、関係府省は「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う儀式等」に関する項目、要求額をとりまとめている。


 「式典経費」に関わるものとしては、即位の礼挙行等経費(内閣府)、天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位関係経費(宮内庁)、皇位継承に関する儀式に伴う警衛警備等に要する経費(警察庁)、即位の礼に出席するため来日する外国元首等の接遇等の実施(外務省)、即位礼正殿の儀挙行に伴う特別警備の実施(国土交通省)、即位礼正殿の儀挙行に伴う国賓等の輸送支援等(防衛省)がまとめられている。


 また、「慶祝行事」に関するものとしては、2019年秋特別展示会開催(内閣府)、「皇太子殿下の御即位」に係る記念貨幣の発行(財務省)、即位記念公園の整備(厚生労働省)がある。

 

 

政府は国会や各党・会派に折に触れて経過報告を

 

 このように政府が着々と準備作業に取り組んでいることは当然であるし、重要な業務を担うことになる担当事務方を激励したい。
 行政府が円滑に準備を進めていくには何ら異議をはさむものではないが、今ここで思い起こすべきことは、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の成立過程に関わることであり、以下の2点について強調したい。

 

 第一は、政府による法案、つまり閣法として提出されたが、通常の閣法と異なるのは、立法府、各党・各会派の総意がとりまとめられ、それを受けた上で、政府が法案を出していることである。


 したがって、その執行という点でも、立法府との連携を密にしてほしいということである。何も了承までとる必要はないが、衆参両院、各党・各会派には、折に触れて経過報告を行うべきである。


 大枠の流れを決めた「基本方針」について、必ずしも国会や政党関係者に丁寧な説明が行われていなかったような印象を受ける。
「『天皇の退位等についての立法府の対応』に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ」は、与党野党を超えてとりまとめられているものであり、天皇陛下の退位・皇太子さまの即位については、与党だけでなく野党にも折に触れて、経過報告を行っていくのが筋である。


 当然、立法府、政党の側も、皇室の弥栄しつつ、天皇陛下の退位及び皇太子さまの即位がつつがなく行われ、全国民が寿ぎ、世界の国・地域の方々から祝っていただく式典となるよう、協力を惜しむべきでないことは言うまでもない。

 

 第二点は、退位特例法の附帯決議(内容は衆参で同じ)が採択されていることである。
 きわめて重要な法案に関する附帯決議であり、各党・会派が慎重かつ丁寧な党内手続き、与野党協議を行った上で、採択されたものである。
 したがって、その附帯決議を政府がきちんと尊重しているのか、与えられた課題にしっかり取り組んでいるのか、不断に検証していく必要がある。

 

 

新元号の公表時期でもたつく政府、パブコメを行う選択も

 

 退位特例法の附帯決議で最も争点となったのは、女性宮家の創設も含む「安定的な皇位継承」である。この点については、政府が速やかに検討を行い、国会に報告することになっているので、政府の取り組み状況をチェックしていく必要がある。

 

 さて、附帯決議には、もう一つの柱があった。「政府は、本法施行に伴い元号を改める場合においては、改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにするとともに、本法施行に関連するその他の各般の措置の実施に当たっては、広く国民の理解が得られるものとなるよう、万全の配慮を行うこと。」というものである。
 この文章の前半部分は、改元について触れている。ところが、新元号の公表時期を巡って、政府が右往左往している。来年の5月1日に改元されることになるのだが、その公表時期を巡って、政府は煮え切らない態度を取り続けている。

 

 政府は今年5月17日に開かれた「新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議」において、各情報システムの取組状況を踏まえ、情報システム改修等を円滑に進めるための作業上の便宜として、新元号の公表時期を改元の1か月前と想定し、準備を進めることとすることを決定している。
 それでも、公式的には「新元号の公表時期は、現時点で未定」というのが政府の立場である。「IT関係者などが1か月前ではとても対応できない」、「元号法に基づく正式決定前の段階で明らかにすることはルール違反」との別の次元からの相対立する意見が飛び出しており、政府関係者は頭を抱えている。

 

 ただ、国民の間でも新しい元号の候補、予測についてタブー視する意識が薄れており、ネット上では新元号についての議論が盛り上がっている。

 退位特例法の附帯決議にも「国民生活に支障が生ずることのないように」「広く国民の理解が得られるものとなるよう」という文言がある。退位特例法を巡っては有識者会議が密室の議論を行っていたとの厳しい批判が聞かれたが、改元のあり方、新元号の公表時期については、政府が国民各層の意見を幅広く、丁寧に聞いてみることも必要なのではないか。