霞が関から見た永田町

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教員の長時間勤務問題は政党のビジョンが問われる

 

いよいよ始まった通常国会を政府は「働き方改革国会」と位置付けた。話題の中心は働き方改革関連法案であり、与野党の攻防になると思われる脱時間給制度は一つの目玉である。これとは別に注目したいのが、ここへきてにわかに注目を集めている教員の働き方について、である。この問題は国家財政とも大きく関わっており、まさに国をどう運営していくのかが問われるという意味において、野党がそのビジョンを打ち出しやすいテーマである。

 

 

 

 

6割の教員が過労死ラインを超えている異常さ

 

どういうことか、少し解説したい。近年、学校現場は文部科学省の要請に応えて、業務量は増加の一途をたどっている。いじめへの早期発見・早期対応、外国籍の子どもへの丁寧な対応など、社会の多様化と地域社会の力の衰えなど、様々な要因が重なって、そのしわ寄せは学校現場に押し付けられてきた。

 

昨年春に文部科学省は10年ぶりに、教員の勤務実態調査を行っている。その調査結果によると、中学校教諭の場合、1週間の平均勤務時間は10年前に比べて5時間12分増えており、教員の実に6割が「過労死ライン」に達する週20時間以上の残業をしている実態が判明したところだ。しかも過労死ラインの2倍の残業時間を計上した教員は8.5%も存在した。

 

中でも大きな負担となっているのが部活動だった。土日に部活動、クラブ活動は2時間10分と10年に比べて倍増している。

 

 

政策の不作為がもたらした教員採用問題

 

これにも背景がある。2000年代初頭、新卒の就職率は60%台を推移し、この時期に就職を迎えた世代はロスジェネ世代と呼ばれた。これは学校現場でも同様で、団塊の世代が数多く残っていた上に、就職氷河期ということもあり、教員の採用がぐっと絞られた時期が存在する。

 

その結果、何が起きたかというと、教員の年齢構成が歪になった。団塊の世代の引退に合わせて、今度は新卒を一気に取り始めたため、20代、30代前半の教員が急激に増え、中間層である30代後半〜40代後半の教員が極端に少ないという自治体も少なくない。

 

本来、部活動は教員の仕事の範囲ではないが、学校現場の教員の年齢構成が歪になったこともあり、若い教員ほど負担感が高まっているのが現実だ。こうした長時間勤務を解消するために、年が明けてスポーツ庁は中学校の部活動にあり方について週2日を休養日とすること、平日は2時間、休日は3時間までとすることなどを骨子案としてまとめた。

 

危機感を強める文部科学省はこのように業務量の削減に着手しているが、根本的な解決としては教員の採用を増やすことが大事だ。ただし、教員の採用は人件費に大きくのしかかってくる。そのため、財務省とはどうしても対立しがちだ。同省は「教員の採用の前に、業務を減らすべき」としている。

 

 

授業より部活や会議に時間を取られる日本

 

まさに、この辺は国家デザインの問題になってくる。目の前の政局ではなく、こうした国家デザインの問題こそ、野党がビジョンを示し、存在感を発揮できるはずだ。

 

全体予算の中で、教育費の割合は本当に今のままでいいのか。日本の教育予算はOECD加盟国の中でも最低水準にあるのは、周知の通りで、一方で教員の年間勤務時間はOECD加盟国の平均を300時間も上回っている。しかも、勤務時間に占める授業の割合はOECD平均を下回っており、部活動などの課外授業や事務作業、会議などに多くの時間が割かれている実態がOECDの調査でも明らかとなっている。

 

かけられる予算は低く、一方で教員の負担はOECDの標準より高いとなれば、結果的にそれは教育の質の低下を招きかねない。それは歳出ポートフォリオとして適切と言えるのだろうか。

 

 

長時間勤務問題は政党のビジョンを示すチャンス

 

ただでさえ、日本の世界における存在感は低下の一途を辿っており、加えて、人口減少社会へと突入している。年金制度や医療制度など改革は待ったなしの状況にあり、国家にとって人材の育成こそがプライオリティの高いテーマと言えるだろう。

 

政権与党がその政党の成り立ちからして、各種業界団体への目配りの必要性からなかなか公共事業の予算を削減できず、むしろ、大きく膨らませてきたことを考えれば、これに相対するビジョンとして、教育予算の充実と人材の育成に本腰を示してこそ、野党の存在感は出てくるだろう。

 

成熟社会へと、明らかに今、社会の質的転換が求められている中で、従来の延長線上に未来を描くのか、それとも質的転換に合わせて政策を見直していくのか、教員の長時間勤務問題はその一つの象徴的な事例と言っていいだろう。