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逆進性対策だけに溺れずに、「社会保障と税の一体改革」の原点に返るべき(1/2)

 

 

 

「ごった煮」の逆進性対策に難あり

 

 安倍内閣は、2015年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを、2回にわたって延期した。先の10月16日の臨時閣議において、安倍首相は2019年10月に消費税率を引上げる方針を正式表明した。


 消費税については、3%の税率だった実施当初から逆進性の問題がつきまとっている。その緩和策を巡って、激しい議論が行われてきた。当然、税率が上がるとなるとその意味も大きくなる。

 

 本来の目的であるはずの「社会保障と税の一体改革」が中途半端な内容にとどまっており、行財政改革、政治改革などにも全く踏み込みが行われていない。


 従来から実施が決まっていた酒類と外食を除いた飲食料品を8%の税率に据え置く軽減税率に加え、キャッシュレスの取引における中小小売業へのポイント還元制度、自動車や住宅購入を支援する税制・予算上の措置なども講じられるとのことだ。必要な対策も含まれているが、全体としてみれば「ごった煮」の印象が否めない。


 国民民主党が主張しているように、軽減税率は富裕層ほど恩恵が多く、事業者に負担と混乱をもたらすことは自明だ。だから「給付つき税額控除」を導入すべきとの提言は説得力がある。

 

 

本来は与野党で協議してとりまとめるべき

 

 現在、消費税に関して、ある品目について非課税措置がとられている。そのうちの一部は与野党協議によって成案化され、後から追加されたものである。

 

 民社党の大内啓伍委員長が 1990年5月17日、仙台市内のホテルで会見し、与野党政策担当者による協議機関を設置すべきと提唱した。これが契機となり、衆参のねじれもあり、海部内閣が提出した消費税見直し法案、野党提出の消費税廃止関連法案が共に廃案となった特別国会の閉会日、同年6月26日に「税制問題等に関する両院合同協議会」が設置されている。


 合同協議会の合意に基づいて、自民、社会、公明、民社、進民連の各会派が共同提出した消費税法改正案が翌年5月8日に成立している。手続上、衆議院議員提出の形がとられたが、衆参両議員の協議によりまとめられたとの位置付けがなされている。なお、共産党も法案には賛成した。


 この改正法の柱は、いわゆる益税の解消と家賃、入学金、助産、火葬・埋葬などを非課税化とすることだった。  このように、消費税において家賃が非課税となっているのも、この時の与野党の協議で合意がなされ、議員立法で法律が通っているからである。

 

 消費税率引上げへの対策、逆進性緩和策などは国民生活にとっても重要な課題であり、まさに超党派で議論して、とりまとめるべきものである。


 しかも消費税率10%への引上げは、そもそも民主党政権下における「社会保障と税の一体改革」に関する民主・自民・公明3党による合意に基づくものであり、自民党、公明党だけで議論を進めていいものではない。国民民主党を含めた野党にも相談があって当たり前の話である。

 

 

消費税率引上げの使途も見直される

 

 さて、消費税率引上げは、その使い途の問題とも重なるが、財政再建との絡みでもきちんと論点を整理しておかなければならない。そのところが曖昧になったままであり、政府や政党などにおける議論が十分に尽くされていない。

 

 消費税率が8%から10%に引き上げられると、増収分は約5兆6000億円になる。もともと4兆円強を国債の発行抑制に充て、それ以外は高齢者対策を柱とする社会保障の充実に使われる予定だった。

 

 ところが、「全世代型の社会保障制度」というお題目のもと、消費税率引上げ分の使い途を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民に還元する、来年10月1日から認可・無認可合わせて幼児教育を無償化するなどの話が出てきている。つまり半分の約2兆8000億円を借金返済に充て、残り約2兆8000億円は社会保障や教育の充実などの充てるという枠組みである。

 

 消費税率の引上げによって、財政再建を進めるとか借金返済に充てるなどの表現が安易に使われることが多いが、この「財政再建」とは何なのかきっちり議論しておかないと議論が散漫になってしまう。

 

 

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