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イタリア高架橋崩落は他人事ではない、これからの公共事業のあり方とは

 

 

 

今年8月14日、イタリアから発信された一本のニュースと動画が世界を驚かせた。イタリア北部のジェノバで高速道路の高架橋の一部が崩壊したのである。

 

崩落した高架橋は高さ50メートル。長さ200メートルに渡って崩壊し、事故当時、30台以上の車が橋を通行中だったという。通過中だった乗用車、大型トラックは高架橋の崩落とともに、50メートル下に落下し、40名以上が死亡する大惨事となった。


今回崩落した橋は元々、構造上の問題から安全性に疑問の目が向けられており、それを受けて大規模補修を行っている最中の事故だった。崩落した橋は1967年に完成したもので、この事故を受けてイタリア政府は全土のインラフの安全性を再点検することを発表した。

 

 

笹子トンネルの崩落事故も老朽化だった


今回のイタリアの事故は決して他人事ではない。高速道路をはじめとする、日本のインフラは1960年〜1970年の高度経済成長期に整備されているからだ。

 

ちょっと振り返っただけでも2012年、中央高速道路の笹子トンネル天井板落下事故があった。天井板のコンクリート板が約130メートルに区間に渡って落下し、走行中の車が巻き込まれ9名が死亡した事故で、死亡者数という意味では日本の高速道路上の事故としては史上最悪の事故だった。

 

天井板の老朽化による、同様の事故は2008年に関門トンネルでも発生している。一般に橋などの公共インフラの寿命は50年と言われており、日本のインフラはまさに更新の時期を迎えているである。

 

 

公共インフラの更新が一気に押し寄せる日本


高度経済成長に一気に整備したインフラは、更新も一気にやってくる。維持管理・更新の事業スキームに民間企業が参入できる仕組みを用意したり、あるいはハード面ではテクノロジーを利用して維持管理費を抑える、危険箇所を早期に発見するなど、やるべきことは多い。

 

今、政府でも検討されているのは「コンセッション方式」だ。空港などでもは既に導入されているが、コンセッション方式とは、国や自治体がインフラの所有権をもったまま、管理・運営を民間事業者に委ねる方法である。空港と異なり、道路のコンセッションの場合、民間企業にとって管理・運営のコストをどこで捻出するかという大きな課題が残るものの、自治体財政を考えると、民間に委ねるのが現実的なところだ。

 

 

コンセッション方式の導入を政局にするな


コンセッション方式の難しさは、政局にされやすいことだ。わかりやすい批判は、「公共インフラを使って民間が収益事業を行うのは、公共性に反する」というものだ。こうした批判を展開するであろう政党は容易に想像がつくだろう。しかし、そんな批判には耳を貸す必要ない。国や自治体の財政を考えれば、民間に委ねるしかないのである。

 

もう一つはテクノロジーの導入だ。センサー技術と組み合わせたIoTによる危険箇所の探知、ドローンによる、目の届きにくい箇所の検査、また、センサーやドローンから集まるデータの解析(AI)による危険箇所の早期発見、予測などはこれから取り組んでいくべきテーマといえる。横浜市など一部の自治体では、こうした取り組みに着手したところだ。

 

 

建設業の人出不足を解決する方法は?


一方で、頭のいたい問題は建設業の人手不足である。建設業への就労者数は、バブル期と団塊ジュニア世代の就労が重なった1995年頃をピークに減少に転じている。国土交通省による調査によると、20歳~24歳の全ての業種への就労者数のうち、建設業に就労する人の割合は、95年が6%以上に達していたのに対して、2010年には2.4%と大幅に下落している。

 

建設業界が就労先として人気がないということである。建設業の人手不足は、抜本的な対策を行わないと、近い将来に致命的な人手不足に陥る恐れがあり、これが原因で公共インフラの更新が思うように進まないということも十分考えられるのだ。