霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

本国会を振り返る、10万円給付は国民民主党の発案だった

第201回通常国会が閉会した。本国会はその会期中に新型コロナの感染拡大が世界を襲う中の、異例の国会だった。多くの国会議員にとって、この3ヶ月は数年に感じられるほどの濃密な国会となったことだろう。3月くらいの時点では「国会の議論がすべてコロナ一色になり、その他の部会が実質止まってしまい、やることがなくなってしまった」とぼやいていた代議士もいたが、その後、すべてが新型コロナにシフトしたことで、暇どころか、昼夜を問わずの忙しさとなった。

 

今でも日本だけが感染爆発が起きなかった背景については詳細は分かっていないものの、当初の世界的な大流行とそれに伴う死者の増加を前に、日本も同じ状況に陥るとの見方が大半だったし、それは当たり前の考え方だった。そういう中での国会運営は与野党を超えて、緊張感に包まれたものだった。

 

 

存在感を示した国民民主党

そこで本国会を振り返ってみよう。批判ばかりの野党と揶揄される状況が何年も続く中で、本国会もやはり同じだったのか。それとも存在感を示せたのか。

 

結論から言うと、本国会は珍しく、野党が存在感を示した国会だったと言っていいだろう。その代表格は国民民主党だ。例えば、特別給付金の10万円。これをいち早く提案したのは国民民主党だった。3月18日、同党は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急経済対策案を発表した。その額30兆円。

 

その目玉は消費税率を5%に下げる減税措置と、全国民に1人あたり10万円を給付する、というアイデアだった。この緊急経済対策の発表の場で、国民民主党の玉木代表は「他の野党にも働きかけて、できれば会派全体の案として政府に提案したい」と語っている。

 

10万円給付に公明党が動いた

政府は当初、「経済的に困窮した家庭」に限定して1世帯あたり30万円の給付で補正予算を組んでいた。ところが、「経済的に困窮」を証明することの難しさやドイツをはじめ世界では全国民に一律に現金給付、それも速やかに実行する国が現れたこともあり、政府内で公明党がリーダーシップを発揮する形で補正予算は組み直され、全国民一律10万円給付になった。

 

こうした政府内での意思決定に対して、国民民主党が政府に先駆けて10万円給付を掲げていたことの意味は大きい。実質、国民民主党の政策提案が公明党を動かしたといってもいいだろう。

 

10兆円予備費にくさびを打ち込んだ野党

もう一つの成果は予備費だ。第二次補正予算で10兆円の予備費が計上された。予備費は「予見しがたい予算の不足に充てるための予算」で、議会の議決を経ることなく、例外的に政府の裁量で支出を決められる予算である。東日本大震災でも8000億円だったことを考えると、10兆円がどれほどの金額か分かるが、モリカケ、桜を見る会、黒川賭け麻雀と安倍政権に対する信用が失墜している今、10兆円をフリーハンドで与えるわけにいなかった。与野党の調整の下、5兆円については(1)雇用調整助成金、(2)中小企業への持続化給付金と家賃補償、(3)地方向けの医療・介護とすることで使い道を事前に決めたほか、その他の予備費については適宜、国会に報告することが決まった。

 

10万円給付の補正予算の再調整も、今回の10兆円の使途の事前調整も国会の風景としては異例だったと言ってもいい。通常、予算案やその運用方針が国会で変更になるということはあり得ないからだ。それだけ安倍政権の体力が失われているという証左だが、一方で、この点は今国会で野党が頑張ったポイントである。

 

3ヶ月ぶりの地元で国会議員が見る風景

いよいよ国会は閉会となり、地方選出の国会議員は3ヶ月ぶりに地元へと戻っていった。新型コロナで移動の制限もあったことから、議員会館と永田町という狭い世界で過ごしていた国会議員にとって3ヶ月ぶりの地元は、新しい気づきを与えてくれることだろう。

 

10月解散総選挙説もささやかれる中、地元の声をたっぷり吸い上げた国会議員、特に野党がどういうビジョンと政策を掲げるのか、注目だ。