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いまこそのネクストキャビネット

 

 

 

在庫一掃内閣の発足

 

 第4次安倍改造内閣が発足した。初入閣の大臣も多く、入閣待機組と言われていた議員が軒並み初入閣を果たしたことから、「在庫一掃」といった言葉も聞こえてくる。安倍総理は適材適所を改造のたびに強調するが、およそ専門外のポストに就いてしまった大臣も少なくないというのが現状だろう。


 そういう大臣については、副大臣や政務官、さらには事務方がサポートするということになるだろうが、これまでも繰り返されてきたように、国会審議で野党の質問にまともな答弁が出来ないということも続発することになるだろう。


 長期政権となる安倍政権下では、既に何度も内閣改造が行われてきたのであって、これまで選ばれなかった議員が今さらながら大臣に選ばれたところで、若手の抜擢でもない限り、期待は出来ない。無能なのか、問題があるのか。これまで選ばれなかった理由は分からないが、入閣待機組として在庫化していたことには相応の理由があるはずだ。


 安倍総理としては党内のことも考えての人選だと思うが、これから前途多難な政権運営が予想される。

 

 

国会での対峙を

 

 これから臨時国会や通常国会が控えている。大臣は当然に審議では答弁に立つ。ここは、野党として、その存在感を見せる格好のチャンスだ。特に新任の大臣に対して鋭い質問をぶつけることで、野党は野党としての存在感を見せることが出来るはずだ。


 新任の大臣に対しては、まずはスキャンダルを探し出して、それを追及するというのが常だが、それだけではなく、政策に関わり鋭い質問を浴びせることで、いわゆる政権担当能力の有無をあぶり出したい。

 

 この鋭い質問は野党の誰がするのか。どうしても、各党の代表や論客と言われ予算委員会で安倍総理を厳しく追及してきたような議員がその候補になりがちだが、いわばマンツーマンで、ある大臣にはその所掌に通じた議員を当てるということをしたいところだ。


 そこで、今は少し忘れられてしまったが、あらためてネクストキャビネットの存在に注目したい。

 

 

今こそネクストキャビネットの設置を

 

 ネクストキャビネットはイギリスを範として、野党時代の民主党や自民党が設置していたものである。長く設置していた民主党では、その名称を「次の内閣」とし、党代表をネクスト内閣総理大臣として、党所属国会議員をネクスト国務大臣として組織するものであった。


 イギリスの場合、ネクストキャビネットは与党の内閣に対峙する組織として存在している。与党による内閣と同様に定期的に会議を開き、政府の政策への批判や代案の提出を行っている。

 

 日本のネクストキャビネットがイギリスのものほどに本格的に活動し、その機能を果たしていたのかというと、それは微妙ではある。ただ、民主党や自民党が後に政権を獲得した際には、ネクストキャビネットで大臣や副大臣を務めていた議員が実際に大臣や副大臣を務めている。


 政権交代に向けて、ネクストキャビネットの仕組みが日本でも一定の機能を果たしていたと言えるだろう。

 

 現在、立憲民主党や国民民主党はネクストキャビネットを設置していない。


 そのような中で、国民民主党の原口一博国会対策委員長は、野党6会派でネクストキャビネットのようなものを設置することを提案した。

 

www.nhk.or.jp

 

 

 これには立憲民主党の枝野代表が否定的なコメントをしたようだが、立憲民主党のスタンスがどうであれ、まずは国民民主党だけでもネクストキャビネットを設置すべきであろう。そして、各ネクストキャビネット大臣が安倍内閣の各大臣に対峙していくべきだ。

 

 これには立憲民主党の枝野代表が否定的なコメントをしたようだが、立憲民主党のスタンスがどうであれ、まずは国民民主党だけでもネクストキャビネットを設置すべきであろう。そして、各ネクストキャビネット大臣が安倍内閣の各大臣に対峙していくべきだ。

 

 

ネクスト大臣が現職大臣と対峙する

 

 NHKの全国放送があるのはもっぱら予算委員会の審議であって、そこでは与野党ともに弁の立つ議員が質問に立つ。これは特にスキャンダルを追及するような場面では見栄えもするが、だからといって審議の内容が深まるわけではない。そんなことを繰り返していては、どこまでいっても野党は問題を追及するだけで騒ぎ立てている存在と国民に認識されたままになってしまう。


 ここは遠回りになっても、野党として政権担当能力があることを示すべく、政策に関して専門的観点から大臣以下に質問で迫っていきたいものだ。

 

 国民民主党の玉木代表はこれまでの野党とは違った政党のあり方を模索しているとされている。とすると、これまでの野党が設置してきたネクストキャビネットなどというものはあえて設置したいとは思わないのかもしれない。


 しかし、国民民主党には現在の安倍政権の大臣以上に当該分野に通じた議員が何人もいる。その議員をネクストキャビネットの大臣に据え、その議員が中心となって国会の各委員会で、素人と言って良い新人大臣に質問でもって攻め立てれば良いのだ。


 例えば、外交防衛であれば、参議院の大野元裕議員が最適任だ。財政金融であれば大塚耕平代表代行が中心となれる。あるいは、大臣経験者をネクストキャビネットの大臣に据えるということも、政権交代を経験したからこそ可能だ。総務大臣経験者である原口一博議員がネクスト総務大臣を務めることも十分に考えられるだろう。副大臣や政務官経験者を含めれば、ほぼ全ての府省についてネクストキャビネットの大臣を務めることの出来る人材が国民民主党にはいる。

 

 まさにこれまでの経験も活かして、ただ当選回数を重ねただけで大臣を務めることになった現在の多くの大臣にぶつかっていく。それが結果として、資質なき大臣の存在を浮き彫りにし、さらには野党の政権担当能力を見せることにつながるのである。

 

 ネクスト大臣が良いのか、現職大臣が良いのか。それを国民が判断する機会を常に国会審議で作っていくことが、いま野党には求められていると言えよう。