河井夫妻への資金提供を説明しない安倍総理
河井克行・案里夫妻が逮捕された。克行氏は前法務大臣であり、前法務大臣の逮捕も異例なら、議員夫妻揃っての逮捕も異例だ。
河井夫妻は公職選挙法で禁止されている買収の容疑で逮捕されたわけだが、買収のための資金は自民党本部から提供されたものであるとされている。その額は1億5千万円と言われ、それだけの金額であれば、党の中でも相応の立場の人物からの承認がなければ一議員に渡されることはない。
当然、自民党のトップである安倍総理も全く知らなかったということにはならないだろう。しかし、この件について安倍総理は責任を感じるとはしても、それ以上に踏み込んだ説明をしようとしない。
この点、朝日新聞の世論調査でも80%の回答者が安倍総理の説明は「十分ではない」としたとの結果が出ている。
二階幹事長も十分な説明はしない
自民党の場合、選挙の責任者は幹事長である。
参議院議員選挙に関わり河井夫妻は買収の容疑をかけられたわけで、買収のために使われたとされる1億5千万円が河井夫妻に党本部から提供されたとすると、少なくとも幹事長が関与したことは確定的である。自民党ほどの政党で、選挙に関わり1億5千万円もの資金が責任者である幹事長の知らぬところで動いたとは考えにくい。
万が一、幹事長を回避して巨額の党の資金が特定の議員に動いたとしたら、最早それは自民党がまともな組織として機能していないことを現している。むしろ、不正に資金が持ち出されるという犯罪が起きていたと見るべき事態である。
実際には、自民党から不正に資金が持ち出されたという話は出ておらず、自民党本部は河井夫妻側に1億5千万円を「広報費」として送金したことを認めている。
二階幹事長も広報紙を複数回配布するための広報費として送金したという説明に終始している。しかし、それはまともな説明になってはいない。
案里氏と同じ選挙区で争った自民党の現職議員には党から1500万円が提供されたとも言われているが、当然その現職議員も広報紙を配布しているはず。広報紙を複数回配布するだけで金額にして10倍の差が付くものではない。そんなことくらい二階幹事長も当然知っているはずで、広報紙の配布以外に使用することも当然想定の上で送金したことは想像に難くない。
多額の資金を渡せば、そしてそれを選挙のために使うとなれば、それがどのような帰結になると思われるのか、二階幹事長は説明する責任を負っている。
自民党本部への捜索も
今後、検察がどのような動きを見せるのか予断は許さない。
ただ、河井夫妻は買収の容疑で逮捕され、その買収のための資金が自民党本部から提供されたことが濃厚である。さらに、自民党のトップである安倍総理や選挙の責任者である二階幹事長から十分な説明がない。そうとなれば、これから先に想定され得るのは自民党本部への捜索であろう。
既に報道では、自民党本部から河井夫妻の支部長を務める政党支部への資金の動きが複数回あったことが報じられている。
どのような経緯で複数回の送金があったのか。買収のための資金の流れを明確にする。その過程では、河井夫妻による選挙区内での買収だけではなく、その他の不正な資金の流れも明らかになるかもしれない。
と言うのも、1億5千万円が河井夫妻に提供されたとして、その全てが買収のために使われたわけではないようで、過半が何に使われたのか不明だからだ。
その不明な使い道の全てが法律に違反しているわけではないかもしれないが、そもそも1億5千万円のうちの1億2千万円は自民党が受け取っていた政党交付金から拠出したとされている。
忘れてはならないことであるが、政党交付金の原資は税金である。国民が払った税金が不適切に使用されていないのか。今回、その説明責任を自民党のトップである安倍総理が負っていることは間違いない。説明できないのであれば、それはやましいことに使用したことを知っていたと思われても仕方がない。