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私設秘書であったか分からない人物に記章を貸与する片山大臣のセキュリティ意識の欠如

 

 

 

支離滅裂な対応

 

 私設秘書であったとされる男性税理士が国税庁に対して「口利き」を行ったとされる疑惑。2日の衆議院予算委員会で、その疑惑を追及された片山さつき地方創生担当大臣のこの間の対応は支離滅裂と言って良い。

 

 この疑惑を報じた週刊誌の出版社に対して、片山大臣は損害賠償を求める訴えを起こしたと報じられている。その中で、口利きを行ったとされる男性税理士は自身の私設秘書ではなく、指揮命令をするような立場に片山大臣はなかったと主張していることも伝えられている。

 ただし、片山大臣は会社社長から相談があり、税理士であるその男性に取り次いだことは認めている。支持者から税務に関する相談を受けたので、知り合いの税理士を紹介したというストーリーで話を進めたいようだ。

 

 しかし、2日の衆議院予算委員会で、その男性税理士に国会の通行証が2011年から2015年まで貸与されていたことが明らかとされた。この通行証は各議員がサインをしないと貸与されないもので、その男性税理士については、片山大臣が認めた上で手続きがなされていたことになる。もし片山大臣の知らぬところで貸与の手続がなされていたとすると、何者かが書類を捏造していたということでないと説明が出来ない。

 

mainichi.jp

 

 

私設秘書でない人物に議院記章を貸与したのか

 

 男性税理士に貸与されたという国会の通行証。正式には、議院記章を指す。いわゆる「バッチ」である。国会の院内に入るには、基本的に全ての人に必要とされるものであり、公設・私設を問わず議員秘書であっても記章がなければ国会の中に入ることは出来ない。その他、記者や政党職員、官僚や前議員、議員の配偶者にも貸与されている。もちろん、議員本人も記章なしでは院内に入れない(議員の記章は、いわゆる「議員バッチ」と呼ばれるものである)。
 国会の見学者などには一時的な通行証が発行されるが、議員秘書のように日頃から国会に出入りする人物がその都度発行を申請するのは現実的ではないことから、手続きを行って記章が貸与されることになるのである。この記章と合わせて、帯用証・帯用カードも携行する必要がある。
 2日の予算委員会では、その帯用証の実物を国民民主党の後藤祐一議員が持ち出して、片山大臣を追求した。帯用証・帯用カードには、記章が貸与された人物の氏名や写真が記載されている。そして、後藤議員が指摘するように、そこには例えば「私設議員秘書」などとその人物の立場も明記されている。これは、議員や秘書、国会職員や政党職員、記者といった立場に応じて、院内で通行できる区域に区別があるからである。

 

 日頃から院内に出入りする議員秘書であれば、この記章がなければ仕事にならないが、そうではなく、一時的に院内に立ち入るのであれば、わざわざ記章貸与の申請など行う必要はない。というのも、国会議員の事務所には、臨時での院内への通行のために利用出来る特別通行記章が貸与されているからである。これは、その利用者が確定されているものではないため、議員事務所が良いと言えれば、極端なことを言えば誰でも使うことが出来るものだ。
 例えば衆参両院の議員会館内で仕事が完結するのであれば、議員会館の通行証の貸与を受ければ事足りる。議員会館と国会は地下通路でつながっているが、この議員会館の通行証のみでは国会の院内に入構することは出来ない。それでは不十分と、院内への通行のために常時利用出来る議院記章の貸与を申請していたというのであれば、疑惑の男性税理士は片山事務所において恒常的に何らかの仕事をしていたことは間違いないということになる。

 

 

片山大臣のセキュリティ意識の欠如

 

 私設秘書を務めていたとされる人物の疑惑を追及されていることから、その人物は私設秘書ではないと片山大臣は強弁しているだけだとは思うが、そのような強弁を続けるのであれば、その疑惑自体に片山大臣にとって好ましからざる何かを秘めているということなのだろう。
 ひるがえって、もしも私設秘書ではない人物について議院事務局に議院記章の貸与の申請が行われていたとしたら、そちらもそれ自体で大問題である。疑惑がかけられている男性と面識があることは片山大臣も認めているが、面識があるといった程度の関係の人物が片山大臣の私設秘書として知らぬ間に議院記章を入手し、自由に院内を通行していたとしたら、極めて重大な問題である。国会や国会議員会館に入場する際には、セキュリティチェックを受ける必要があるが、議院記章や議員会館通行証があれば、そのチェックは免除されるからだ。誰だか分からないような人物の手に記章や通行証が渡っていたとしたら、国会の院内や議員会館内でテロを起こされるといったことも最悪の場合には考えられる。
 議院記章や通行証の管理は厳格に運用されなければならないところ、大臣を務める片山議員自身が極めてルーズな扱いをしていたとしたら、片山大臣にはセキュリティ意識が欠如していたと言わざるをえない。

 

 2日午後の予算委員会では、立憲民主党会派の小川淳也議員が片山大臣に辞任を求める一幕もあった。

 

 

 私設秘書に国税庁への口利きを行わせていたとしたら、それは好ましい行為ではない。一方で、私設秘書ではない人物が片山議員の私設秘書であるとして議院記章の貸与を受けていたとしても、それも好ましからざる事態である。いずれであっても、片山大臣の進退を問うに十分過ぎる大問題であることは間違いない。