霞が関から見た永田町

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エネルギーの使い方こそ政策そのもの

 

 

 

 

 日本のエネルギー自給率は4%。原発推進か、脱原発か、その際に必ず議論になるのがこのエネルギー自給率の低さにある。その結果、エネルギーを得るために年間28兆円もキャッシュアウトしている。

 

 その一方で、日本のエネルギー効率はいいのかといえば、答えは「否」である。日本で年間に消費される総エネルギーの33%、電気に関していえば70%が建物で消費されているが、その建物の断熱性能が非常に低いのである。

 

 

2020年、ヨーロッパはカーボンニュートラル元年

 

 日本はヨーロッパの20年遅れと言われている。建物の断熱性能だけではない。エネルギー収支そのものの考え方が遅れている。例えば、ヨーロッパでは2020年前後にはすべての新築住宅を対象にカーボンニュートラルが法制化される。カーボンニュートラルとは、建物の高断熱化による徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの導入が政策の柱だ。

 

 日本でもこれから法制化されるが、現状は300平米以上の建物に報告義務が課せられているに過ぎない。しかも次世代省エネルギー基準は1999年の旧世代基準のままだ。

 

 日本の住宅の断熱性の低さが顕著に現れるのが、窓サッシだ。実はここから大量に熱が逃げる。窓の性能があまりに低いのである。「最近の住宅だと、二重サッシは当たり前だけど?」と思われる方もいるかもしれないが、その二重サッシ自体が時代遅れだ。

 

 どれくらい時代遅れかというと、たとえば、ドイツで使われている窓サッシに比べて熱効率が10倍悪い。現在、日本で最も性能が高いとされる窓サッシは三重サッシで、それ以外にも窓枠の材料などを工夫することで性能を上げてきているが、それでもドイツに比べて3倍ほど性能が低い。

 

 

エネルギーは出口で語れ

 

 日本でエネルギー問題が議論されるときに、供給サイドにばかり論点がいってしまう。ベース電源を原発にするのか、それとも脱原発なのか。その議論はもちろん大事ではあるが、もっと重要なことは需要サイドのエネルギーマネジメントだ。民生部門のエネルギー消費のうち、家庭部門だけで4割を超えているのである。

 

 国会論争で与党が原発にこだわるのであれば、野党の戦い方として、出口のエネルギーマネジメントの効率化ではないだろうか。ここをしっかりとデザインできれば、そもそもエネルギーは再生可能エネルギーを中心に回せることを根拠を持って主張できるだろう。

 

 

効率よくエネルギーを消費する国を目指す

 

 参考になりそうなのが、デンマークだ。今、デンマークは国を挙げてサステナブルな国家へと再デザインしている。デンマークは今、世界初のカーボンニュートラルな首都を目指し、政策を次々と打ち出しており、2050年にはエネルギー供給の100%を再生可能エネルギーで賄うという目標を設定している。

 

 特徴なところでいえば、既に全市に地域暖房が普及しているが、これをさらに発展させて地域冷房の導入を検討している。セントラルヒーティングならぬ、セントラルクーリングだ。もちろん、その前提には住宅の断熱性が高いことがある。夏の湿度が高い日本だと、断熱性能が高いと言われると、「夏場、家の中が暑くなるのではないか?」と思いがちだが、それは違う。断熱性が高いということは、つまり熱が逃げないことを意味する。したがって断熱性の高い家であれば、クーラーの稼働がわずかで家を涼しくできるのである。

 

 エネルギーを使用することへの意識の高さは交通手段にも現れている。移動手段を車から自転車へ転換するために、専用道路・専用信号の整備などにも力を入れている。それとなんといっても、重要なのは学校におけるエネルギー教育だ。日本も環境教育に力を入れてきた。その甲斐もあって、今の子どもたちは無意識のうちに、無駄な電気は使わないようにこまめにスイッチを消す子が多くなったし、節水の意識もひと昔前とは比べ物にならないほど高くなっている。今ある環境教育をさらに進めて、エネルギーへの意識を高めていくというのは長期的な視点で取り組むべきテーマだろう。

 

 

エネルギーは国家の柱

 

 国会は長らく安倍政権の一強状態が続いている。森友問題も加計問題もそのために攻め手を欠いているが、野党が今やるべきことは自民党に退治し得る、国会ビジョンを示すことだ。去年、衆議院選挙があったことで、当面、国政選挙はないだろう。党勢の拡大という意味では、2019年の統一地方選挙と、その年の夏の参議院選挙が控えているが、やはり、そうは言っても大事なのは衆議院選挙だ。

 

 その衆院選はとうぶん、行われない。であればこそ、今はしっかりと腰を落ち着けて、野党が政権を取った時の国会ビジョンをしっかりと打ち出し、有権者に浸透させることだろう。本稿で触れたエネルギー政策はその根幹の一つだ。原発推進か、脱原発かは既に相手の土俵に乗った戦いになってしまっている。

 

 

ワイドショーではなく政策論争を

 

 そうではなく、これから本格的に当落する人口減少社会、都市への人口集中の時代にあって、社会全体のエネルギーマネジメントをどうしていくのか、その時に私たち国民の暮らしはどう変わるのか、そのために法律は何を変えないといけないのか、新しく作らないといけないレギュレーションがあるのか、そういったグランドデザインを有権者は求めているのである。視野を広く持った国会議員であってほしい。