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選挙を機に見直したい動画メディア 異色の切り口で有権者との結びつきを強める永田町のYoutuberとは?

 

 

 

冷やかな意見も多かった新人ユーチューバーの誕生
2018年7月27日、一人のユーチューバーが産声をあげた。

 

降り注ぐ真夏の日差しに照らされた街頭に出て、額に汗して道ゆく人にマイクを向けるが一向に話を聞けない。「顔は見たことあるけど、名前はわからない」などと冷やかな反応にもめげず、苦心するなかでなんとか街頭インタビューを成立させて、わずか3分23秒の動画は終わった。

 

ユーチューバーの名前は、玉木雄一郎。国民民主党の代表である。今月末でついに1周年を迎えようというこのyoutubeチャンネルの名前は「たまきチャンネル」。登録者数は6,406件(2019年7月10日現在)。

 

最新のチャンネル登録者数ランキングによれば、トップは「はじめしゃちょー」の8,031,578件、2位はHikakinTVの7,472,972件という数字であるから、その影響力は足下にも及ばない。

 

とはいえ、政治離れが続く中、各党は公式YouTubeチャンネルを開設して支援者や有権者に向けて情報発信を続けてきたその心意気には拍手を送りたい。

 

 

各党がそろって開設しているYouTubeチャンネル


各党の公式チャンネルを調べてみると、自民党、公明党、日本共産党は2007年の10月から12月にチャンネルを開設し、それぞれ4万7千人、3万4千人、2万5千人のチャンネル登録者数を数える。そのほかの野党各党の公式チャンネルは、2016年以降順次開設され、チャンネル登録者数は、立憲民主党(6,650)、国民民主党(3,667)、日本維新の会(3,793)と水をあけられているのが現状だ。

 

インターネットを活用した選挙が解禁されて、国政選挙ではこの参議院選挙が最初だった。あれから6年。スマホはより普及し、多くの有権者が動画視聴環境に慣れてきたこともあってか、やはり今回の選挙戦では、SNSで動画が共有される場面を増えている印象がある。

 

選挙公示前に共産党の候補者が名前入りのタスキを着用して活動を行う姿が公開されているなど、受信者が同時に発信者にもなる、暮らしの中の動画活用環境は有権者の生活にも広く浸透していることが伺える。

 

これまで何年にもわたって、各党は情報発信の一つの手段として動画を作成し、国民に向けて発信してきた記録が各党のYouTubeチャンネルには積み上げられている。特に国政選挙に向けて選挙準備として作られた動画も数多くアップロードされているので、候補者の比較や各党の政策を知るには理想的な環境だろう。

 

 

過去の動画のストックが投票先選びに役立つ


なかでも注目したいのは、選挙を意識しない日常的にストックしてきた動画の数々である。

 

なぜかというと、選挙用ともなればやはり票獲得が動画制作の強い目的になる一方で普段制作してきた動画の制作目的において、票獲得への直接的な色合いは若干だが薄まる。もちろん、いずれ訪れる選挙において支持を得ることが当然目的ではあるものの、選挙直前にアップロードされるどぎつい選挙色満載の動画に比べれば、票欲しさは比較的薄い。むしろ日常的にどれだけ有権者と結びつきを強めようとしてきたかという姿が現れていると言っていい。

 

こうした時に、国会審議や定例会見だけを載せているのであれば、それはやはり物足りないし、支援者だけが喜びそうな番組制作をしているのもまた政党カラーがにじむはず。
そんな中で、国民民主党の玉木代表が作るたまきチャンネルの切り口は異色と言っていいかもしれない。

 

 

「有名人だから」で選ばないために


少し細かいことを言えば、サムネイルの作り方などもユーチューバーのそれらしく工夫が凝らされているし、なんとか敷居の高さを変えようと苦心してきた姿が残されている。

 

公党の党首が街頭に出てインタビューするなんて「前例がない」などと斬って捨てるのは簡単かもしれないが、そうした積み重ねというのは継続してこなければできないし、その姿勢がしっかりのストックされていくのもウェブメディアの良さである。twitterのようにその瞬間消費されていくとしても、実は膨大なつぶやきの記録が残るように、それはブログでもYouTubeでも同じ。

 

いまいち盛り上がりに欠けるとも言われる今回の参議院選挙。ウェブメディアの蓄積に少し目を向けるだけでも候補者選びの参考になるはず。名前だけ有名で中身もないままに日本の未来にWow Wow言うのは勝手だが、具体的に何が課題で、その課題をどう乗り越えていくのか、普段の政治家としての姿勢を遡って見てみることができる環境をぜひ活かしたい。