霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

コーポレートガバナンス改革は国会などによる横串のチェックが必要 1/2

 

 

 

今後とも続くコーポレートガバナンス改革

 

3月13日、金融庁はコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表した。コーポレートガバナンス・コードとは、東京証券取引所が上場企業を対象としてつくった企業統治の指針である。改訂案には政策保有株式、企業年金、取締役会の役割・責務、独立社外取締役、取締役会の構成などに関する項目が含まれている。パブリックコメントを行った上で、東京証券取引所が導入することになっている。

 

最後に、安倍総理の関連答弁にも触れるが、このコードは金融庁と東京証券取引所が取りまとめており、政府としての関与も明確になっている。

 

 他方で、法務省のもとにある法制審議会が2月16日に開かれ、その2日前に会社法制(企業統治等関係)部会でまとめられた「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」が報告されている。

 

 法律の附則の見直し条項に対応した諮問が行われ、株主が提案することができる議案の数を10または5までとする上限を新たに設けること、不適切な内容の株主提案に制限を新たに設けること、さらには社外取締役を置くことについて義務付けをする案と義務付けをしない案との両論を併記していることなどが盛り込まれている。

 

 3年前の2015年はコーポレート・ガバナンス元年とか企業統治改革元年と騒がれていたことを思い起こす。前年にスチュワードシップ・コードが策定されていたこと、コーポレートガバナンス・コードが策定されたこと、監査等委員会設置会社の新設などを盛り込んだ会社法の改正が施行されたことによって、大きな節目を迎えたことは事実である。ちなみに、スチュワードシップ・コードとは機関投資家向けの行動規範であるが、金融庁のもとにある有識者検討会がとりまとめている。

 

 来年の通常国会には、法務省は会社法改正案を提出するとの報道もなされているし、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードなどについては時宜に応じて改訂がなされていくであろうし、コーポレートガバナンス改革は今後とも不断に議論すべき課題だといえる。

 

 

国政の課題として盛り上がらない分野

 

 コーポレートガバナンスは、国政における重要な政策課題の一つだと位置づけるべきだと考えるが、今一つ盛り上がらない面がある。国会論議や政党の公約策定などにおいても、あまり前面に出てこない傾向にある。

 

 なぜこのようなことになるのか、その背景を簡単に整理してみた。

第一に、高度で専門的な分野であり、マニアックで難解な議論ができる人でないと対応できないとの印象が強く、議論の敷居が高いことである。

 

第二は、基本的には上場企業の経営に関することで、中小企業、勤労者とはあまり関係がなく、幅広い利害関係者のいる政策分野ではないとの受け止めがされやすいことである。

 

第三に、大きく関わる府省が法務省、金融庁にわかれ、これを所管する国会の委員会が財務金融委員会、総務委員会にわかれていることである。税制改正法案については、国税は財務金融委員会、地方税は総務委員会で審議されるが、同時期に審議され、一体的に判断されやすい環境にあるが、コーポレートガバナンスについては、財務金融委員会と法務員会で連携がはかられているようには見えない。

 

 第四に、証券取引所などに関連する自主的なルールに関することも多く、政治が徒に介入するのはまずいのではないかとの雰囲気がつくられていることである。

 

 

多方面に影響が及ぶことを考慮すべき

 

 このように、国政としてはあまり盛り上がらない分野だが、コーポレートガバナンス改革が多方面に及ぼす影響は少なくないといえる。

 

株主以外のステークホルダーとの協働にも配慮がなされていることは当然だが、例えばある企業が従業員の待遇よりも株主への利益配当をもっと重視するという判断をすれば、社風、従業員の置かれた立場には一定の変化がでてくることは必至である。

 

コーポレートガバナンスに関する政策のあり方は、大企業を中心とした企業の人事・行動様式は勿論、大企業と取引する中小企業にも効果が及ぶことは明らかだ。外国の経営者、資本などによる日本企業に対する影響力にも変化が出てくる。

 

 「従業員より株主を優先するなどとんでもない」「外資の支配力を高めるから売国的だ」「格差をさらに広げることにつながる」などという短絡的、ネガティブな批判にも陥りやすい面もあるが、光だけではなく影の部分についてもしっかり見ていくことは必要である。

 

ただ、メインバンク制度、株式相互持ち合い制度が崩れてきたこと、経済のグローバル化が進んでいること、機関投資家の存在が大きくなってきたなどの流れを一方的に否定することは現実的ではない。また、会社法やコーポレートガバナンス・コードなどに限らず、税法、独占禁止法、労働法制、様々な分野における規制改革のあり方も企業文化、勤労者の立場などに影響を及ぼすものであり、コーポレートガバナンスのあり方だけの是非を問うことは生産的ではないだろう。

 

www.ksmgsksfngtc.com