霞が関から見た永田町

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共生社会の実現に向け「バリアフリー化」の更なる推進を(2/2)

 

 

 

今回の法改正にとどまらずユニバーサル社会への取り組みを加速化すべし

 

附帯決議で問題点はほぼ整理されていると考えるが、この法律の枠内だけではなく、もっと広い視野を持ってユニバーサル社会の実現につとめていく必要がある。断片的な指摘の羅列になってしまうかもしれないが、法案や附帯決議に関係すること、関係しないことも含めて、気が付いた点を指摘しておきたい。

 

 法律改正の意義として、2020年の東京オリンピック·パラリンピック競技大会の開催を契機としていることが強調されているが、場所と時期が限定され過ぎないよう配慮が必要である。


 首都圏だけでなく地方も含めてバリアフリー化を促進していく必要があるし、
東京オリパラの時期だけ「声かけ」が行われても意味がない。どの地域でも、どの時期でも対策を強化していくべきだし、駅員等だけではなく、国民各層が意識を高めていかなければならない。

 

 今回の法律の枠外ではあるが、ICTの分野でも、ユニバーサル社会への取り組みを進めていかなければならない。ioT、AIなどを推進していくことに異論はないが、健常者と高齢者・障害者等との間のデジタル・ディバイドが広がらないための環境整備が必要である。


 2004年6月16日、参議院の本会議で「ユニバーサル社会の形成促進に関する決議」が採択されている。ユニバーサルデザインについての記述もある。ユニバーサルデザインはバリアフリーと重なる点もあるが、こちらの方は施設や製品等について、結果として誰にとってもあまねく利用できるデザインをつくるという思想に基づいている。

 

 附帯決議の14項目にあるように、車椅子のまま乗車することができるフリースペースがあればありがたい。


 過密で正確なダイヤで走っている新幹線等については、当事者、介助者が乗り降りがスムーズにできるのか、それができたとしても他のお客さんに迷惑をかけて、ダイヤを乱すのではないかと恐縮してしまうこともあると聞く。
 単にそうしたスペースをつくれば良いということではなく、乗務員・駅員などのサポートがしっかり保障されないと、利用をためらってしまうかもしれない。2、3分でも遅れたらお詫びするようなダイヤそのものも健常者でない人の乗り降りにプレッシャーになっていることも事実である。

 

 附帯決議の11項目で信号機のことに触れられている。ここにある音響式信号機の更なる設置は当然のことではあるが、信号機のあり方についてはもっと踏み込んだ議論をする必要がある。


かなり話題になった本であるが、『老人の取扱説明書』(平松類著、2017年、SB新書)では、「アメリカでは信号が青の間に横断歩道に入って、信号が点滅中(アメリカでは赤色)に歩いて渡りきれるようになってます。イギリスでは(方式によりますが)横断歩道の歩行者がいなくなったことを感知して信号が変わるので安全です。日本の信号は青が点滅したら走って渡る(または戻る)ようになっているので高齢者には不便です」と書かれていた。


イギリスの信号機についての下りのところが大変参考になった。実際にどのくらいの比率でそういう信号があるのかなど、もう少し実態を知りたいと思うが、日本でもこうした信号機に切り替えていくべきとの視点は持つべきである。

 

 国土交通省の法案説明資料に、車椅子対応型タクシーの導入台数が増えていることが記されていた。特に公共交通が発達していない地方においては、車の運転ができなくなった高齢者などにとってタクシーは重要な存在となる。地方でタクシーを利用すると、あっという間に距離が増えて、利用料金はすぐにかさんでしまうという問題点もある。
介護タクシー、介護保険タクシーなどという言葉が入り乱れて、混乱を招いている面もある。こうしたタクシー等の利用については、すべて民間任せにするのではなく、国や地方自治体は少なくとも正確な情報を発信していくことが求められる。

 

 最後は論点が拡散してしまったが、今回のバリアフリー法改正案をしっかり成立させて、厳正に運用していくことが基本となる。


 この法律の枠内、枠外の事項もあるが、障害者政策、介護保険制度、住宅政策、交通政策などの視点も交えて議論を深め、「誰もが排除されることなく、互いに認めあえる共生社会」をつくっていくために、政策を総動員していく必要がある。