緊急事態に政府をカモにする企業
緊急事態に乗じて一儲けしようとする者はいつの時代にも存在する。
アベノマスクの調達に関わり何やら良からぬ動きがあり、これまで公共調達に応じたこともないような企業が政府と契約していたことは既に報じたとおりである。
ようやくアベノマスクは全国に配達され始めたが、多くの国民の手元に届いたのは緊急事態宣言の解除後だ。
その能力がない企業がマスクの調達を巨額で請負い、結果、届けるのが遅れたとしたら、民間企業同士のビジネスであれば履行遅滞を問われても仕方がない。
今回のアベノマスクの配布も原資は税金である。そこに無駄があれば、その負担は国民が負うことになる。もしも、暴利を貪るような企業がそこにあれば、その損害を受けるのも国民である。
持続化給付金も食いものにされるのか
どうやら、事はアベノマスクだけではなかったようである。
今度は、2020年5月1日から受付が開始された政府の「持続化給付金」をめぐって、良からぬ者たちが不当に利益を得ようとうごめいているようだ。
持続化給付金は中小法人や個人事業者が申請することで給付を受けるものである。
そのWebサイトは開設されているが、そのサイトのトップページを最後までスクロールすると、「委託先:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」という表記を見つけることが出来る。
今回問題になったのは、この一般社団法人サービスデザイン推進協議会である。
この協議会の実態が明らかではなく、事務事業を769億円で請負いながら、そのまま同事業を749億円で電通に再委託するという不透明な動きがあるのだ。
一般社団法人サービスデザイン推進協議会に関する情報は簡単には見つけられないが、その詳細を追ったnoteがある。
一般社団法人サービスデザイン推進協議会は自ら膨大な事務作業を処理する能力を有しておらず、これまでも政府の事業を請負っては再委託を行い、その差額を取り分としているというのだ。
このnoteの著者は一個人のようだが、その調査は詳細なもので、経済産業省と一般社団法人サービスデザイン推進協議会の関係、さらにはそこに関係し、国民には見えにくいところで暴利を得ようと暗躍する一部の大企業の行いが徹底的に解明されている。
持続化給付金に関わる一般社団法人サービスデザイン推進協議会の動きはマスコミも関心を払うところとなり、先週発売の週刊文春は、「トラブル続出 コロナ「持続化給付金」を769億円で受注したのは“幽霊法人"だった」と報じた。
その実態は経済産業省が設立にも深く関与した協議会であって、一部の企業が政府の事業を請負うための隠れ蓑でしかないようだ。
緊急事態を理由に不正を見逃してはならない
新型コロナウイルス感染症の感染拡大という緊急事態にあって、政府が実施することに対して厳しい目を向けることは憚られるようなところもあるが、そういう厳しい目を向けないと、アベノマスクや持続化給付金のように本来必要な費用以上の費用を支払った上に、実態が明らかではない「企業」などに事務が委託され、その一部のお金がどこかへ消えていってしまうということが起きる。
一般社団法人サービスデザイン推進協議会は769億円で請け負った仕事を749億円で電通に再委託しているが、その差額の20億円は明らかに不要だ。その差額も税金から支払われており、突き詰めれば国民の負担である。
およそ実態が不明な協議会が何の事業も行わないのに20億円を何に使うのか。この点について政府は関知しないということのようだが、緊急事態であったとしても、税金を無駄に使って良いということにはならない。
アベノマスクも持続化給付金も緊急事態に関わる事業として、そう遠くないうちに国民からは忘れられてしまいかねない。そういう忘却を当て込んで、そこに付け込むように蠢き、不当な利益を得るものを決して見逃してはならない。
もちろん、安倍政権として、そのような不透明な動きを隠蔽するようなことはあってはならない。