現場に過大な負担
新型コロナウイルスをめぐる問題。
横浜に停泊しているダイヤモンド・プリンセス号では、船内の感染管理が不十分なのではないかとの指摘もある中で、一部乗客の下船が進められた。
まだ多数の乗員乗客が船内に残っており、今後も予断は許されないが、少しずつ事態打開へ向けて取り組みが進められていくことになるだろう。
ただ、残念なのが政府の対応である。
ダイヤモンド・プリンセス号で対応にあたった政府職員が感染するという、この種の対策ではあってはならないことが起きてしまった。
この程度のことは、こういうときには想定の範囲内との声も聞こえてきそうだが、対応方針に問題があって、そのしわ寄せが現場で働く職員らに重くのしかかるというは最悪の展開である。現場に大きな負担がかかるような方針なり計画なりは、それは大きく破綻しているということだ。「現場は頑張っているから」で済ませず、持続的かつ安定した現場対応が可能になるよう、政府としては各種体制を整え直すべきだろう。
新年度予算での対応は?
政府は体制を整えなすべきと言っても、そう簡単ではない。
それを如実に表すのが現在国会で審議されている新年度予算である。現在審議されている新年度予算案には、コロナウイルス感染対策に関する予算が含まれていない。
もちろん、感染症対策全般に関わるような予算がまったくないということではないが、現状では、重点的にコロナウイルス感染症対策に投じるための予算は準備されていない。簡単に言ってしまえば、様々なやりくりをしないと、対策のためのお金が捻出できない状態なのだ。
これでは、体制を整えるといっても、その裏付けとなる予算がなく、言うは易く行うは難しいということになってしまう。
そこで、立憲民主党や国民民主党などの統一会派は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するための予算手当を講じるために、新年度予算案について、その組み替え動議を衆議院に提出する。
野党による組み替え動議は可決されるのか?
国の予算編成の権限は内閣にある。立法府である国会は予算編成の権限を持っていないのだ。
そこで、国会として内閣の提出した予算案を変更させたいときには、部分的な修正であれば修正動議、大きな変更が必要であれば組み替え動議を行い、それを可決することによって、対応を内閣に求めることが出来る。
もちろん、いずれの動議も国会で可決されなければ意味はないが、可決されれば修正動議であれば修正が確定、組み替え動議であれば内閣は予算案を撤回して新たな予算案を提出することになる。
今回は組み替え動議を立憲民主党や国民民主党の統一会派は提出するので、もし可決されれば、新たな予算案が内閣から提出されることになる。
ここで悩ましいのは政権与党の対応であろう。
コロナウイルス感染対策が必要なことは論を待たない。さりとて、これまでも野党の提案はことごとく退けてきた政権与党である。この場面で、おいそれと野党の出してきた組み替え動議に賛成するのも難しそうだ。
しかし、否決したとなれば、与党はコロナウイルス感染対策を疎かにして良いと考えているのかと当然に批判されることになる。
出来るのあれば、これまでの対応の不手際を謝罪し、新年度予算案についてコロナウイルス感染対策をはじめとした感染症対策予算の増額などを新たに盛り込むなどの対応を行いたいところだが、はたしてどのような対応を取ることになるのだろうか。
自らの誤りを認めようとしない安倍内閣であるが、そのように意地を張って、現場を疲弊させ、対策の遅れにより国民にさらなる被害をもたらすようであれば、その存在自体が国難となってしまう。