霞が関から見た永田町

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新型肺炎がもたらす経済押し下げ効果、与野党立場を超えた経済議論を

 感染経路の分からない新型肺炎患者が増えている。2月14日、東京都は新型コロナウイルスの新たな感染者2名の存在を明らかにした。いずれもタクシーの運転手で濃厚接触者は100名程度とされている。また、同日、NTTデータは会社のウェブサイトにて、同社の協力会社社員の新型肺炎への感染を明らかにしている。既にネットではこの男性の通勤経路などが特定され、通勤に使用していたことから、特定が不可能な濃厚接触者が多数存在するのではないか、と指摘されている。
 新型肺炎は水際で防止することにはほとんど意味はなく、パンデミックを抑えるためにも、重症化する前段階で対策する方向へ政府も舵を切っている。対策の早い企業では、リモートワークへの切り替えや、セミナーなど多数の人が集まるイベントへの参加などを禁止するなど、対策を打ち始めた。
 こうした対策は新型肺炎が社会へ与える影響を極力抑えるためには必須の対応であるが、一方で、経済には重くのしかかっていく。

 

新型コロナで中止が相次ぐ展示会


 スペイン・バルセロナで2月24日から開催予定だった、世界最大のモバイル展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」は中止になったし、国内でもカメラ映像機器工業会(CIPA)がパシフィコ横浜で開催予定だった「CP+2020」の見送りを発表した。
 新型肺炎の致死率は一般のインフルエンザに比べるとやや高いものの、かつてのSARSの時ほど高いわけではなく、落ち着いて対応すれば問題という論調もある一方で、「景気は気から」と言うように、リスク回避の行動が経済を想像以上に冷やす局面になりつつあるようにも見える。
 既に台湾は「感染源が不明の事案が相次いでいる」との理由から、日本への渡航については警戒レベルを「1」(注意)に指定した。中国からの観光客が40万人もキャンセルが出るなど激減している中で、台湾からの観光客もこれで当面は見込めないだろう。
 また、世界保健機構(WHO)は、新型肺炎の感染拡大で、東京オリンピック・パラリンピックの開催に不安が出ていることに対して、「WHOは開催可否を判断する立場にない」と発言している。これは裏を返せば、東京五輪の開催が危ぶまれる事態も想定される、ということだろう。
 仮にそういう事態になれば、日本経済に与える影響は計り知れない。現時点でも訪日外国人観光客の激減によって、京都をはじめとする観光地は売上を大きく減らしている。わかりやすいのはバス事業者で、既に運転手のリストラが始まっていると聞く。

都市部に強い自民党に野党はどう臨むか

 さて、こうした状況の中での国会である。日々、刻一刻と状況が変わる中で未来を見通すのは難しいが、国会だからこそやれることがあるはずだ。総務省は自治体に新型肺炎対策で重症患者を受け入れるための医療機関の備品購入や相談窓口の設置など、交付税措置を決めた。
 一方で、これから重要になるのは中小企業への対策だろう。お金のばらまきであってはならないももの、こうした突発的な感染症により経済活動の停滞を余儀なくされるケースにおいて、企業の経営努力では如何ともし難い。大企業であれば内部留保も含めて、決算は厳しくなったとしても会社が潰れるまでには至らないだろうが、中小企業の場合、取引の減少などは倒産の引き金になりかねない。つなぎ融資を分厚くするなど、資金繰りへのセーフティネットは必要だ。国会論争を通じて、野党は与党の政策を支援するのもこのケースにおいては重要な戦略になるだろう。
 自民党は自民党でありながら、都市部に強く、地方で弱い政党になりつつある中で、地方の現場の声を誰が代弁するのか。今回の新型肺炎で最も気を揉んでいるのは、地方経済に他ならない。ここの現場の、真の声を届けてこそ、永田町の面目躍如だろう。そのリードを取るのが与党なのか、野党なのか、そこが問われている。

残念な立憲、期待される国民

 そして、この週末、立憲民主党は新型肺炎をめぐって安倍政権の姿勢を本国会で糾弾するというニュースが入ってきた。ここまで世論が見えてない政党も珍しい。残念なことである。国民民主党をはじめとする、他の野党は建設的な政策論をPRすべきだろう。