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地方議会議員年金制度廃止を撤回!?地方議員の担い手不足を懸念

 

2011年6月、当時の民主党政権は地方議会議員の年金を廃止した。これは民主党政権が残した大きな成果のひとつだ。

 

 地方議会議員年金は在職12年で受給資格を得ることが可能であり、給付の約4割は公費負担とされ、いわゆる議員特権のひとつであった。制度自体は1961年に発足したものであったが、2000年代に入って掛金を払う現役議員の総数が減っていったのに対して、受給する元議員が増えたために財政状況が悪化していた。そのような中で、民主党が政権交代を果たし、見直しの機運が高まったことから、地方議会議員年金を廃止する改正地方公務員等共済組合法案が成立したことによって廃止されたのである。

 

廃止になり、新規に加入する議員は存在しないとはいえ、既に退職した議員には減額する措置を取るなどの対応をしながら、引き続き年金は支給されている。廃止時点の現職議員に対しては、掛け金の80%を一時金として支払い、現職でも在職12年以上で年金受給資格がある場合には、引き続き掛け金を払うことによって退職後に年金を受け取ることもできるなどの経過処置がとられている。完全廃止に至るまでは、既に支給されている元議員への給付のために各地方自治体が公費での負担をしている。

 

経緯などの詳細は総務省Webサイトを参照

総務省|地方公務員制度|地方議会議員年金制度の廃止

 

この地方議会議員年金を復活させようという動きが自民党の中にはある。昨年の夏ごろから、自民党の地方議員年金検討プロジェクトチームが検討を行っており、昨日7月6日に開催された同プロジェクトチームの会議で、地方公務員共済組合に地方議会議員も加入出来るようにする案の検討に入ったと報じられている。

 

 地方議会議員年金を復活させる理由としては、引退後の生活の保障がないことによる地方議員の担い手不足があるとされている。そのような主張は道県議会によってなされており、議員年金復活を求める意見書が道県議会から国会に対して出されている。それを受けての自民党のプロジェクトチームの動きでもあるのだが、地方議会議員も国民年金には当然加入しているので、老後にまったく年金が支給されないというわけではない。

 

 地方議員の担い手不足の原因は、議員年金が廃止されたことよりも、在職中の報酬の低さの方にある。実際に、十分な報酬がある都市部の地方議会では、議員のなり手がいないということはない。

 

待遇の面で改善が求められているのだとすれば、議員の報酬を引き上げるのが先で、議員でなくなった後も亡くなるまで支給される年金を復活させるというのは、より財政的な余裕が生じた後に検討すべきことである。さらに、地方議員の報酬は各地方議会で決めることが出来るので、担い手不足の問題などに議員の待遇改善で対応するというのであれば、それは各地方議会に判断を任せるべきである。国が一律に地方議会議員年金を復活させ、その費用を公費で負担するというのは、無責任な地方議会や地方議員を増やすことに他ならない。