国会経費削減案の提案
7日、日本維新の会は独自の国会経費削減案を発表した。先の国会で参議院議員の定数が6増えることになったことも踏まえてのものである。
その柱となるのは、衆参両院議員の給料に当たる歳費の2割削減である。この議員歳費削減を核として、年間約35億円の削減が見込んだ削減案となっている。
経費削減案には、以下のような項目があると報じられている。
・配布資料のペーパーレス化
・公用車の運用見直し
・委員長手当の廃止
・正副議長の海外渡航費の廃止
7月31日にも、自民党と公明党も参議院の経費節減に向けた検討チームの初会合を開催している。
ここでも、公用車の運用見直しや配布資料のペーパーレス化が議題としてあがっていた。
大義のない党利党略による参議院の定数増であり、それを誤魔化すかのような自民公明両党の動きには辟易するところだが、一方で日本維新の会は「身を切る改革」を掲げており、このタイミングで上手く経費削減案を提案してきたと言えよう。
立憲民主党の国会改革案
さかのぼること7月17日には、立憲民主党が国会改革案を公表している。
その中に「国会の歳出削減」がある。その項目は以下のとおり。
•国会の機能強化のためには予算と人員が必要であるが、ムダ削減によりそのための予算と人員をねん出する。
•委員長手当(開会中1日6000円支給。年間3000~4000万円程度)を廃止する。
•国会事務局の部署もスクラップ・アンド・ビルドし、統廃合できる部署の人員配置を見直し、国会改革で新設する部署や増強すべき部署の人員に回す。
•印刷物のペーパーレス化を推進し、報告書等の配布先の絞り込みを徹底する。
各項目を見ると、日本維新の会や自公両党の削減案とも共通するところがある。特にペーパーレス化は直ぐにでも実現出来そうな項目だが、どうなのだろうか。
議員会館の各部屋には、連日膨大な量の書類が各府省から持ち込まれる。紙一枚の案内であっても各府省の封筒に入れられて、各部屋に職員が届けに来るのだ。その労力と紙の無駄たるや、一刻も早く行われるべき経費削減はそこにあるように思われる。
委員長手当の削減も日本維新の会と立憲民主党で共通しており、これも自公両党が賛同すれば、直ぐにでも実現出来そうだ。ただ、委員長のポジションの多くは与党が握っており、その手当を削るのは結果として与党の側に負担を強いることになるため、実現は難しいのかもしれない。
国民民主党の動向
自民党、公明党、日本維新の会、立憲民主党と、各党で国会の歳出削減へ向けた動きが見られるようになっている。残すは国民民主党の動向ということになるが、現状では、明確なかたちで国民民主党が国会改革や歳出削減策を掲げているわけではないようである。
同党の基本政策には、「大胆な政治・行財政改革を」が掲げられており、その中には、「衆参両院のあり方を踏まえた国会議員の定数見直しなど身を切る改革の推進」とある。決して国会改革や経費削減といったことに後ろ向きではなく、今後はその具体策が示されるということになるのだろう。
経費削減策について既に具体的な内容出揃っているが、その中身は上記のように、どれも似通っている。党を越えて共通しているのであれば、あとは実行に移すだけだが、現状で出揃っている案は弥縫策の域を越えていないようにも見える。
ここは、まだ具体策を提示していない国民民主党に期待したいところだ。
例えば、ペーパーレス化に関して、もう一歩踏み込んだ案を提示するといったことが十分可能だ。
既に、地方議会では神奈川県逗子市議会が2013年にタブレット端末の利用と合わせて「クラウド文書共有システム」を導入して、ペーパーレス化を実現している。
議員と市幹部職員に iPad を導入、“タブレット議会”に移行した逗子市
この取り組みは全国の地方議会に広まっており、衆参両院は周回遅れの議論をしているというのが現状だ。
わかりやすい歳出削減策を提示して国民の歓心を買うのではなく、国会の機能強化や議員活動の充実化を合わせて実現するような具体策の提示が望まれるところである。今のところ明確な具体策を提示していない国民民主党には、より良い策を提示するチャンスがあると言えよう。国会改革や歳出削減の機運がある中で、国民民主党をはじめ野党が議論を先導することを期待したい。