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常態化する夏の猛暑、日本にサマータイム制の導入を本格検討を

 

 

 

梅雨が明けたかと思えば、連日の猛暑だ。40度近い気温を示す都市が相次ぐ、というのはどう考えても尋常ではない。

 

16日、最も暑かったのは岐阜県揖斐川で39.3度。次いで岐阜で39度、京都や前橋で38.1度。人間の体温より気温が高い。北海道と東北地方を除けば、軒並み33度を超えた。

 

夏の猛暑日はもはや、日本の日常といってもいい。日本は今、急速な勢いで高齢化社会へ突入しており、夏の猛暑はまさに命に関わる問題でもある。実際、どの自治体も救急搬送件数は夏場に跳ね上がるのは、連日の猛暑によって熱中症になる高齢者が多いからだ。

 

これも意外に知られていないが、熱中症で搬送される人の多くは屋内で発生している。理由ははっきりしていて、高齢者がエアコンを嫌がるからだ。エアコンをつけて室内温度を適温に維持し、水分を補給していれば、熱中症にはならないのだが、自治体がどれだけ広報しても毎年の高齢者の熱中症による搬送は減らないのが現状だ。

 

 

生産性向上の視点からのサマータイム

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常態化する猛暑と、それに伴う熱中症は日本の風物詩となりつつあるが、ここで考えたいのは社会の生産性である。通勤時間帯である朝8時でも30度を超えることはざらで、出勤時から働く人たちの生産性は落ちていると言っていいだろう。

従来、サマータイム制の導入は、終業後の使える時間を増やすことで、ワークライフバランスを充実させようという狙いで日本は議論されてきたが、これだけ暑い日が続く日本の夏を考えれば、出勤時の暑さのストレスを解消するという目的でサマータイムの導入を検討してもいいのではないか。

 

ここで簡単にサマータイムの仕組みを説明しておこう。環境省などが示すサマータイムのモデルは、4月の第一日曜日の午前2時に時計を1時間進め3時にし、10月の最終日曜日の午前3時に時計を1時間戻して午前2時とする、というもの。現状の標準時で、夏の日の出は午前3時半から5時半の間だが、実際に多くの国民が起床するのは午前6時と言われており、明るい時間帯を無駄にしてしまっているとされている。従来はサマータイムの導入はこうした明るい時間帯をもっと有効に使おうという議論だったが、こうして夏の日の出の時刻を知れば、サマータイムの導入で、出勤時の気温が下がるのは一目瞭然だ。

 

 

GHQは日本にサマータイムを導入していた


実はもともと、日本でもサマータイムが導入されていた時代があったのはあまり知られていない。GHQが日本を占領していた期間のうち、1948年からサンフランシスコ講和条約が調印される1951年まで実施されていたのだ。GHQの撤退とともにサマータイムの制度が廃止になったのは、労働時間が過剰になる、慣習の変更が好ましくないという声が多かったからだ。一方で、労働条件や企業に好影響を与えるというポジティブな声もあった。

 

近年ではサマータイムの導入の議論はあまり聞こえてこないが、こういうテーマこそ与野党超えて、むしろ、野党が声を上げても与党も乗りやすい政策テーマではないだろうか。振り返ってみれば、今やクールビズという言葉は死語といっていいほど、生活に定着した。

 

 

夏のビジネスシーンを変えたクールビズ

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クールビズという言葉が登場したのは2005年で、第一小泉政権のときに、環境大臣だった小池百合子氏が導入に踏み切った。2005年とは意外に最近だ。たった十数年前まで、日本のビジネスマンは夏場でもスーツに、ネクタイという格好がデフォルトだったのだ。クールビズが導入された当初は、「商談の場に、ネクタイをしないなんて考えられない」という声も結構聞かれたが、今や、商談の場面でスーツにネクタイはよっぽどでなければ見かけないだろう。社会に定着すれば、ライフスタイルも変わる好例だ。

 

これまでサマータイムの導入も、できない理由が様々指摘されてきた経緯はあるが、これだけ夏の暑さが生命にも関わるレベルになっていることを考えると、今こそ導入の機運を作れるし、何より野党でも世論を形成しやすい点はポイントだ。今後の議論の高まりを期待したい。