霞が関から見た永田町

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新型コロナウィルスで分かった、これからの危機対応

 中国・武漢を発信源に世界中を騒がせている新型肺炎「コロナウィルス」。中国の旧正月前に発生した。
 春節と呼ばれる大型連休でのべ30億人の中国人が移動し、そのうち700万人が海外へ訪れるとされていることから、株式市場には大きな動揺が走った。
 例えば、米国株式市場では、s&p500指数は2.1%下げ、2019年8月2日以来の最大の下げ幅となり、月次のパフォーマンスもマイナス1.6%となった。米国株式市場の下落は当然、日本の株式市場にも大きく響く。2月3日の東京株式市場は新型コロナウィルスの感染拡大の懸念から、幅広い銘柄が売られ、一時400円以上の値下がりをした。上海株式市場はさらに下落幅が大きく、なんと8.7%のマイナスとなった。

10年で経済状況が大きく変わった中国

 中国はこれまでにも度々、感染症の発信源になってきた。記憶に新しいのは重症急性呼吸器症候群、いわゆるSARSだ。2002年11月から約半年、猛威を5月ふるったSARSは致死率が9.6%と高く、世界を恐怖に陥れた。
 ただ、あのころの中国のGDPは約1.47兆ドルとそれほどでもなかったのに対して、現在の中国のGDPは約12.24兆ドルと10倍近い成長を遂げている。今回の新型コロナウィルスがどこまでの猛威をふるうのか、見通せない中で世界は震撼し、株価は下落した
 時間の経過とともに、今回の新型コロナウィルスはインフルエンザとほぼ同程度で、致死率はさほど高くないことも徐々に判明してきたこともあり、株式市場はすでに落ち着きを取り戻しつつある。

人類にとっての脅威を戦争よりも感染症

 もちろん、まだ落ち着いたわけではなく、騒動の渦中にあるわけだが、今回の新型コロナウィルスへの対応、危機管理については今後のことを考えるとしっかり議論しておくべきだろう。過去、人類の歴史を振り返った時に、人が一番死んでいるのは、戦争ではなく感染症だからだ。
 しかも、過去と大きく違うのは、テクノロジーの進化によって人の移動がフラットになり、世界のどこかで発生した感染症があっという間に日本に到達するのは今後も起こり得る。
 SARSも今回も発信源が中国だったこともあり、メディア、世論、政治、経済とあらゆる分野が新型コロナウィルスに関心を持ったが、もし、これの発信源がアフリカや南米など、一般的な日本人からすると馴染みの薄い、中国よりもさらに遠く離れた国の出来事だっただったら、どう受け止めただろうか。おそらく、「自分たちには関係ない、遠い国の話」と受け止める人が多いのではないだろうか。

遠く離れた国で発生した感染症への備えは大丈夫か?

 感染症においては、この油断こそが怖い。飛行機や船、物流を含めて人々の移動の自由度が高まった現代において、中国に限らず、世界のどこかで発生した感染症は自分ごととして捉えないと、対応は後手後手に回ってしまうだろう。中国を発信源とする、今回の新型コロナウィルスでさえ、日本の対応は後手に回った印象は否めない。
 これだけ重要な感染症が中国で発生していながら、国会では立憲民主党は相変わらず、桜問題とIR汚職問題に多くの時間を割いた。永田町というところは、つくづく世間と解離した場所であることを強く印象付けた。

マーケティングの視点が欠如する国会

 今、野党に必要なのは徹底したマーケティング戦略で、このタイミングでの国家質疑は新型コロナウィルスに時間を割くべきだろう。そして、その論点も「対策できているのか?」と現状の対応を指摘するだけでは不十分だ。そんなものは自民党の部会の中で、まさに与党が政府に対して、その対応を巡って厳しい指摘をしているはずで、自民党だって、そんなに馬鹿ではない。
 だとすると、野党が国会で張るべき論陣は、前述したように、「隣国中国で発生した感染症ですら後手に回った中で、日本から離れた国で感染症が発生した時に、適切な対応はできるようになっているのか?」と、その体勢のあり方やロジの整理などを、未来に起こるかもしれないリスクへの備えを求めることだろう。与党がまだ議論できていない点を野党は論点整理できるか、有権者はそこを見ている。現状、その論陣を張れる政党は国民民主党といったところかもしれない。