世の中に数ある統計データ、将来予測データの中で、もっとも確度が高いとされるもの。それは人口推計だ。人口予測はまず大きく外れることはなく、ここを見ておけば、10年後、20年後の日本がどうなっているかが見えてくる。
高齢者で溢れかえる社会
そんな社会の未来を見通す数字、人口推計を取り扱っているのが国立社会保障・人口問題研究所、通称、「社人研」だ。その社人研が2019年4月19日、2040年までの世帯数の将来推計を発表した。
社人研の発表によると、2040年には総世帯数の1/4にあたる、1217万世帯で世帯主が75歳以上となる見込みで、このうち500万世帯は単身者になるという。年齢を外して眺めても、一人暮らしは1994万人で、全体の40%、つまり5世帯に2世帯は単身者ということになるから、驚きだ。
iモードの誕生はわずか20年前
2040年はだいぶ遠く感じるかもしれないが、あと20年ちょっとだ。今から20年前というと、1999年。携帯電話が普及期を迎えつつあり、iモードが誕生したのがこの年だ。石原慎太郎東京都知事が誕生したり、第一勧業銀行と富士銀行、日本興業銀行が合併してみずほ銀行が誕生したのも1999年だった。こうやって振り返ってみると、20年は案外あっという間である。
決して長くはない20年が経過すると、4世帯に1世帯は75歳以上、40%の世帯が単身者という時代がやってくる。人はますます都市へ集中する中、かつての、かつてといってもそれはほぼ幻想に近いほど遠く昔の話となってしまったが、地域でお互いを支え合うコミュニティもほぼなくなった現状の中で、迫り来る高齢化社会をどうデザインしていくかは、言うまでもなく喫緊の課題となろう。
後期高齢者=75歳の意味
75歳以上は後期高齢者と呼ぶ。かつて、この言葉が世の中に登場した際に、後期高齢者という語感から「年寄りと、社会から隔絶された」とネガティブな受け止め方をされた。しかし、75歳という年齢には少なからず根拠があり、ここを超えてくると介護が必要になる人が急激に増えるのである。現に介護保険制度で要介護の認定を受けている人の90%近くは75歳以上、というのが現実である。
現在でもこの状況の中で、さらに高齢化が進行すると、家族で介護に対応するのはなかなか厳しいだろう。各種介護サービスを利用するのが前提となってくるが、それだとしても担い手不足に加えて、その財源をどこから持ってくるのか、という切実な問題に打ち当たる。2040年には社会保障給付費は2018年の1.6倍となる190兆円が見込まれている。
社会システムの再設計はもう待ったなし、だ。そこには当然痛みも伴うが、この痛みはいつかはみんなで分かち合わなければならない痛みであり、先延ばしすればするほど、その痛みは増幅していく。
社会を再設計する時期へ
統一地方選挙の後半戦も終わった。12年に1度、亥年の統一地方選挙は参議院選挙と重なることもなり、国政政党はいつにも増して、力を入れる選挙となった。振り返れば、12年前の亥年の統一地方選挙では民主党がその勢いを見せつけ、それはそのまま参議院選挙の結果へと反映されていった。残念ながら、今回の統一地方選挙では、野党サイドにそのような勢いは見られなかった。
8月にはいよいよ参議院選挙。もう、日本は待ったなしの状況にある。安倍政権の前の一強多弱の状況にあって、自民党の中の政策論争もまったく活性化していない。社会がこれだけ大きく変わらなければならない状況にありながら、永田町はべた凪にある。国民民主党と自由党の合流も目の前とされている中、今こそ大所高所から日本のあり方を見据えた政策論争のできる、骨太な政党へと脱皮してほしいところだ。