エサンベ鼻北小島 消失か?
北方領土や竹島など、日本の領土に関する問題がニュースで取り上げられることも多い。
もう一年近く前になるが、北海道宗谷岬の近くにある「エサンベ鼻北小島」が消失した可能性があり、海上保安庁が調査するという報道があった。
調査は今年の5月に実施されているが、目視では小島は確認できなかったとされている。
調査を実施した海上保安庁からプレスリリースも行われている。
ここには、調査の結果を7月以降に公表予定であると記されているが、どうやら現段階で結果が公表された様子はない。
まさか、エサンベ鼻北小島が消失したことが確定的あるため、結果の公表を渋っているというようなことではないとは思うが、マスコミによる調査でも消失はほぼ間違いないようだ。
島自体は小さなものとは言え、消失となれば日本の領海の広さには影響を及ぼすわけで、その調査結果の影響は小さくない。
国境離島のデータベース構築
消失の可能性のある島がある中で、政府は国境離島のデータベースを構築する方針を固めたとの報道があった。
「今まで、そういうデータベースで管理していなかったのか?」と率直に疑問が浮かぶところだが、無いよりは有るにこしたことはない。早急にデータベースを構築すべきだろう。
先のエサンベ鼻北小島の例もあるように、きちんと管理しないと、ある日、消失していたり、おかしな占拠者いたりしないとも限らない。データベースの構築と合わせて、日々の管理の体制のあり方にも目を向けて欲しいところだ。
ところで、エサンベ鼻北小島の消失の件。事はそれほど単純ではないことを確認しておく必要がある。
海上に見える「島」がなくなってしまったからと言って、それが直ちに領海の減少にはつながらないからだ。
というのも、自然に形成された陸地には、「島」・「岩」・「低潮高地」があり、このうち「低潮高地」は高潮時には水中に没するが、低潮時には水面上にあるものであるからだ。
一見して、海上に見えなくとも、それで直ちに消失したということにはならない。エサンベ鼻北小島も「低潮高地」であると判断されれば、その場合、日本の領海には変更がない可能性がある。
上記に参照した論考に注目すべき一文がある。
「恒久的に海面上にある灯台その他これに類する施設を低潮高地たるエサンベ鼻北小島の上に建設した場合は直線基線の基準とすることができるからである」
低潮高地に灯台などを建設することの必要性がこの一文から垣間見える。
波や流氷などによる浸食の結果、あるいは地球温暖化による水面上昇といった要因も考えられるだろうが、「島」は消失の危機にさらされている。高潮時には水面下に沈む「低潮高地」であれば、なおさら、その危機は大きなものとなろう。
国境離島については、日本の領海の起点となるのであって、的確な管理が欠かせない。放っておけば、自然の驚異の前に、失われてしまう「島」があるということであって、データベースの構築に留まらず、そのテータの更新作業、さらには日常の離島の管理を強化していく。そんな姿勢が日本政府には求められているのである。
ところで自民党の尖閣有人化の提案はどこへ?
少々古い話になるが、2012年の自民党の「J-ファイル2012 自民党総合政策集」には、次のような一文があった。
「わが国の領土でありながら無人島政策を続ける尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します。島を守るための公務員の常駐や周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます。」
同様の記述は、「J-ファイル2013 総合政策集」と「政策集2014 J-ファイル」にも見出される。
そのような記述が、2016年の「総合政策集2016 J-ファイル」からは、消える。
民主党から政権を奪還するときには、何とも威勢の良いことを政策に掲げていたが、政権を奪取してからは、大きくその立場を後退させていると言えよう。
どこの無人の国境離島でも人が住めるのかと言えば、そういうわけではない。しかし、有人化も国境管理のあり方としては一つの選択肢であり、自民党の政策案では、島を守るための公務員の常駐としていた。一般市民を無理やり送り込むわけでなく、業務として離島の管理を任せるというのだから、検討の余地はあるだろう。
今般、データベースの構築となるようだが、国境離島の管理のあり方は、威勢の良い掛け声で終わることなく、地に足の着いた取り組みとして検討してもらいたいものである。