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小泉進次郎議員の育休発言をきっかけに是非とも育休論戦を

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ビッグカップルの誕生を呼び水に

 

2019年の上半期、最も話題をさらった結婚記者会見といえば、山里亮太さんと蒼井優さんの衝撃的な組み合わせを思い起こす人は多いはず。少々機が早いが、では下半期は?となると、この二人の会見がやはり印象に残っている方は多いのではないだろうか。

 

小泉進次郎衆院議員と滝川クリステルさんのカップルである。

 

「自民党をぶっ壊す」のフレーズも未だ記憶に新しい平成を代表する宰相、小泉純一郎氏の次男であり本人もその甘いマスクと巧みな話術で国民からの人気も高く、次の総理候補としても名前が挙がる小泉進次郎議員。この9月の内閣改造では戦後3番目の若さで環境相として初入閣を果たすなど話題に事欠かない永田町の中でも数少ないエリート街道を突き進む注目株。

 

お相手の滝川クリステルさんは、「左斜め45度」であったり「お・も・て・な・し」でお馴染みで多くの国民が知る才媛の一人。このビッグカップルの誕生と同時に、この少子化のおり、第一子の妊娠までもがワイドショーのカメラを通じて報告されたのだから、全国がお祝いムードに包まれた。この二人の組み合わせともなれば当然かもしれない。

 

そんな祝賀ムードに水を差したとして、“炎上”したのが国民民主党の泉健太政調会長だ。

 

 

育休制度がない国会議員に育休は取得できない

 

ことの経緯はこうだ。

 

第一子の妊娠を伝えた小泉議員が、育休取得の可能性について言及したのに対して、泉議員が「待った」をかけたと報じられたのである。

 

その時の報道によると、泉議員が記者会見で、「小泉進次郎衆院議員が第1子誕生後の育児休暇取得を検討していることに否定的な考えを示した」という。この発言がSNSで見事に炎上。男性育休の取得に理解のない国会議員として槍玉に挙げられたのである。

 

残念ながら、泉議員本人の真意とは異なって伝わったのが炎上の原因。泉議員は繰り返し事の真意を伝えようと投稿したものの焼け石に水。大炎上とまではならなかったものの後味の悪い結果となってしまった。

 

冷静になって考えたいのは、いわゆる育休制度が何かということである。

 

そもそも育休制度とは、「労働者」が子の育児のために育児休業を取得できる制度のことだ。つまり、いわゆる「労働者」ではない国会議員の小泉議員をはじめ、すべての国会議員は育児休業の対象にはならない。逆に国会議員は、働き方を自身で自由に調整できるため、自らの意思によって、自分の時間を育児に当てることができる。

 

つまり両氏の発言を整理すれば、小泉議員の育休取得発言は、そうした国会議員の立場を理解した上で、いわゆる「男性の育休取得」に一石を投じたい意味での発言であったし、それを受けての泉議員のいわゆる「待った」のニュースも、小泉氏の育休まかりならんという趣旨ではなく、一議員の育休取得で終わるのではなく、制度改正も含めた立法府の一員としての発言・対応ができるのではないかというメッセージだった。

 

結局のところ、育休が誰でも撮れるかのような誤った印象から、泉議員は批判の的にされ、新時代の議員像、爽やかな印象が売りの小泉議員は男を上げた形になった。

 

 

たまきチャンネルで国民に直接語りかける

 

しかし、ここで興味深いのは国民民主党・玉木雄一郎代表の対応だった。

 

玉木代表は自身ののYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」に、泉議員を登場させ、ことに真意について話し合う動画がアップされた。

 

動画では、玉木代表が発言の真意について報道されたような趣旨のものではないことを泉議員と軽妙なトークで伝えている。こと政治となると堅さがつきまとうが、こうした柔らかな切り口で、政治がより有権者に身近になる取り組みは、国民民主党の玉木代表が取り組んできた姿勢の一つである。

 

メディアの発達によって、これまでマスコミに限られてきた一次情報との接触が容易になってきた。芸能人もSNSなどを通じて直接ファンに語りかけたり、交流する様子は珍しいことではなくなったし、Instagramを利用したインスタライブなど、リアルタイムに双方向のコミュニケーションを行うことも日常的になっている。

 

そうして意味でも、今回の誤解に基づく泉議員の「育休待った」の問題に対し、有権者に即座に語りかけようとする姿勢は、古い永田町の常識から脱却するアクションだ。小泉議員が「育休を取りたい」と発言するよりもさらに行動をしているという点で高く評価されてもいい。

 

玉木代表は動画で、「今回の炎上で、男性の育児休業について、何が問題で何が課題かを整理するよいきっかけになった」として「これが改善の一歩になればいい」と振り返っている。

 

 

男性には父親になれる権利がある

 

さらに自身の育児経験を振り返って、男性が育児休業を取得できる環境を整えることは、男性が父親になる権利があることを意味するものでもあるとして、今後さらに制度改善に向けて取り組む姿勢を示した。

 

ちなみに、育児休業の際に受け取れる、育児休業給付金は一歳未満の子供を育てる育児休業取得者に対して、雇用保険から休業前の給与の一定額を保証する制度で、現在は取得から180日間は2/3の給付金が支給されている。泉氏は玉木代表との動画で、「(現在は2/3にとどまっているがこれを改善し)100%支給に向けた法改正の論点整理を衆議院法制局に依頼した」ことを明かしている。

 

こうした姿勢からも、単なる批判に終始せず意欲的に国会で議論を展開しようとする国民民主党の矜持を垣間見ることができる。

 

今後、小泉夫妻の第一子が無事誕生することを祈るとともに、国会においても、より前向きな育休議論の末、より良い育児制度が誕生することを期待したい。