霞が関から見た永田町

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国家公務員の育休取得促進をパフォーマンスでは終わらせるな

 

 

 

セクシーな育休取得環境は作り出せるだろうか

 

「セクシー」発言が物議を醸した小泉進次郎環境相が、男性の育児休業取得推進に職員と意見交換をする意向であることを閣議後の記者会見で明らかにした。男性の国家公務員に1ヶ月以上の育児休業取得を促すという方針に関して、感想を述べたものだ。自身も来年1月には第1子が誕生する予定ということもあり、国全体の育休取得環境に向けた取り組みといえよう。

 

男性の育児休業取得に関しては、今月1日に安倍首相が武田良太行政改革相に、男性国家公務員による育児休業の取得を促す制度の検討を指示し、2020年度の実施を目指すと報じられたところだ。


国家公務員は、国家公務員育児休業法により子供が3歳になるまでの最長3年間の取得を認めており、休業中は無給だが手当金が支払われることになっている。しかし、職場内への影響や評価への悪影響を懸念し取得しないケースも多い。

 

報道によると、2018年度に育児休業を新たに取得した男性国家公務員は12.4%となっており、昨年より2.4ポイント増えて過去最高となったという。民間企業の男性従業員の取得率が6.16%(2018年度)ということから、国家公務員の方が取得率は高く、民間はさらに深刻な状況にある。男性の育児参加や女性の就労機会の維持や少子化対策の観点から、国を挙げての改善を試みたい思惑だろう。

 

 

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男性育休の実態はかなり深刻「1ヶ月以下」68%

 

育児休業を「とりづらい」とこぼすビジネスパーソンは決して少なくない。育児休業は女性が取るものという固定的な考えも未だ根強い。社会環境の変化を理解しつつも、「なんでこんな時期に育休を取るのか」と愚痴る管理職の言葉を聞いたこともある。

制度上認められているにも関わらず、その制度を提供する側も使う側も制度に合わせた運用ができていないのは、生産性の向上のために日本経済にとって足枷にもなる。しっかりと働くものが守られるだけでなく、育児ができる環境が整えば過度な少子化を食い止めることにもつながるはずだ。

 

そうしたことがわかっているに関わらず変えられないのも日本らしさか。大胆に国家公務員の現場から変化ができればそうした空気を変化させることにもつながるだろう。ただし、現在の国家公務員の育休取得率12.4%はまだまだ低い。仮に20%になったとしても、8割は育休を取得しないことになる。また、取得者の取得期間は1ヶ月以下が68%と最も多く、30%が2週間未満にとどまっている。一方女性は98.5%が育休を取得しており、そのほとんどが半年以上の期間を選択している。

 

それぞれの家庭の事情はあるにせよ、すべての日本人が必ず育休を取得し、それでも世界有数の生産性の高い国にするくらいの目標設定があっていい。ちょっとしたパフォーマンスと、わずかな数字の上昇だけで鬼の首を取ったかのような態度では困る。日本人の働き方を大きく変化させ世界にインパクトを与えることが重要だ。

 

 

「人が減って業務量が増える」という前提をぶっ壊せ

 

そのためにも、単なる育休取得率だけでは当然のことながら不十分である。育児をしながら子育てできる社会環境の整備はもとより、育児休業を取得しやすい職場環境を作ることが重要だ。国家公務員の現場で果たして実現できるのが、大胆な変革を期待したい。

 

男性国家公務員の育休取得の報道では、「人が減って一人当たりの業務量が増えるケースは今も多い」と述べていた。この点が育休取得をためらわせる要員としてうなずく人も多いはずだ。報道では「できるだけ早い段階で上司に報告し、業務の繁閑を見据えて計画的に取得できる運用が不可欠になる」との意見が伝えられていたが、そもそもこれからは、常に育休取得者がいる状態を作り、絶えず誰かがサポートしている社会・会社にしていくことが肝心だ。「誰もが育休取得者を支え、支えられた取得経験者が次の取得を促す好循環を作り出したい。

 

それでも、世代間格差によって「俺が若い頃は・・・」と時代遅れの武勇伝を振り回す年長者はまだまだいなくならないが、かつて取得しないのが当然だったように、取得するのが当然となる社会を築き上げることが新しい時代の新しい働き方には必要な光景だ。

 

良くも悪くも横並び意識の強い日本で、国家公務員の現場から改善させていくことは、一つの方策。さらには民間企業も追随する動きも生まれるかもしれない。育休取得を奨励し、企業を優遇する方法もあるかもしれない。

 

 

職場環境改善のライバルは成長目覚ましい新興国企業

 

出生数が90万人を割り込み、将来の労働人口が減少しているなか、過酷な労働環境を噂される国家公務員のなり手を確保するためにも、政治の現場が率先して、霞が関やその他の公務員の現場を改善させていけば、良い人材を確保することにもつながるはずだ。

 

これは民間企業にも言えること。少し話を壮大にしてみれば、目覚ましい成長を遂げる海外の新興国の企業に日本人の人材が奪われ、国内産業が落ち込んでしまうこともあるかもしれない。高給が約束され、育休を始め手厚いサポートが約束された職場環境が整っていれば、能力の高い人材から次々とより良い職場へと移ってしまうことが予想される。

 

かつてのように一社に一生涯勤め上げることが当然ではなくなっていく時代に、どのような働きどのように暮らせるのか、魅力的な将来像を思い描ける社会を構築することがこれからますます重要になってくる。

 

今回の育休取得方針の掛け声を単なるパフォーマンスに終わらせず、実効的な取り組みとしてくには、育休制度だけではなく、働き方全般の改革にも目を向けた取り組みとしていくことを忘れないようにしたい。