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与野党、分裂すると選挙には勝てない

 

 

 

豊見城市長選挙と君津市長選挙

 

 先週末に実施された市長選挙のうち、沖縄県豊見城市長選挙と千葉県君津市長選挙は、いずれも国政与党が推す候補を国政野党が推す候補が破ったことで注目を集めた。

 

www.rbc.co.jp

 

www.chibanippo.co.jp

 

 

 沖縄県豊見城市長選挙は、前回、自民党と公明党が推して当選した現職市長に対して、新人2名が挑むという構図であった。


 新人のうち一人は、新人で社民、共産、社大、自由、立憲民主、国民民主が推薦する山川仁氏。もう一人は、自民、維新、希望が推薦する宜保安孝氏。この二人が、前回は自民、公明が推して当選した現職の宜保晴毅氏に挑戦したのだ。


 その結果、勝利したのは山川氏。二人の宜保氏は保守分裂選挙となり、苦杯をなめることになった。

 

 君津市長選挙は、新人3名による争い。現職の後継と目され自民、公明の推薦を受けた渡辺吉郎氏、元市議会議長の安藤敬治氏、元県議の石井宏子氏が争った。君津市は保守系の強い地域だが、渡辺氏と安藤氏でその票を奪い合うようなかたちとなり、結果として、それ以外の票をまとめた石井氏が抜け出すかたちとなった。

 

 

選挙結果を見ると

 

 得票結果を見てみると、以下のようになっている。

 

豊見城市長選挙


11,274 山川仁
7,645.803 宜保安孝
6,459.196 宜保晴毅

 

君津市長選挙


16,084 石井宏子
14,736 渡辺吉郎
5,345 安藤敬治

 

 

 いずれの選挙も2位と3位の票数を合算すると、当選した1位の票数を超える。端的に言えば、一騎打ちになっていたら、結果は別のものになっていた可能性があるのだ。

 

 

自民党・公明党から見ると

 

 二つの選挙では、今回国政与党の両党の足並みは必ずしも揃わなかった。豊見城市長選挙は、前回は両党が一致して推した候補が勝利したが、公明党は今回自主投票とした。さらに、自民党に近しい候補が複数立つ事態になり、票が割れてしまった。


 やはり、国政選挙での両党の協力関係のように地方選挙でも両党は一致した行動をとらないと、1人当選の選挙では厳しい戦いが強いられることになるのである。

 

 ここで、沖縄県豊見城市長選挙と千葉県君津市長選挙の結果を見て、候補者を一本化出来なかったから負けたのであって、あまり問題はないと考えているようだとしたら、それは危ういだろう。これまでであれば、特に自民党による候補者調整が行われて、保守系候補で票を削り合うということは起きなかった。そのような調整が上手く出来なかったのは組織として問題を抱えている可能性があるのだ。

 

 この件に直接関係しているのかというと、必ずしもそうではないが、そうかと言って無関係ではないのが、先の自民党総裁選挙やその前に選挙になった自民党総裁選挙における地方票での石破茂候補の健闘があげられる。地方では自民党の本体とは違った意見があるのである。そして、その声を中央はすくい切れていないことから、地方に不満が溜まっており、首長選挙の際にはその不満が独自の候補者の登場というかたちで表出している可能性があるのだ。


 自民党本部が公認や推薦を出す候補者ではなく、それぞれの地域で独自にその地域の声を代弁する自民党に近い立場の人物が候補者として立ってくる。それはそれで自民党という政党の懐の深さとも言えるが、こと選挙ということに限ってみれば、歓迎される事態では必ずしもない。


 首長選挙のたびに分裂選挙を繰り返し、その結果、負けを続けると、自民党を支える地域の基盤が縮小してしまう。

 

 たった二つの市の選挙の結果に過ぎないと軽く考えるのではなく、地方における体制の立て直しが急務になっているくらいの危機感が必要だろう。その危機感がなくなれば、そして、実際にそういう危機感があるようには外からは見えないが、どこかで大きな揺り戻しを選挙結果というかたちで受けかねない。

 

 

野党から見ると

 

 豊見城市長選挙については、オール沖縄という枠組みがあり、野党の多くが一致して一人の候補者を推すことが出来たというのは大きい。君津市長選挙についても、首長選挙には出来るだけ候補者を立てる共産党が候補者を立てなかったことは、結果として野党の候補者を後押しすることにつながったと言えるだろう。


 一人しか当選者を出すことが出来ない選挙では、まずは候補者を一本化して、相手候補との一騎打ちに持ち込むというのが野党の取るべき第一の方法であることが今回の二つの選挙を結果からも見えてこよう。


 もちろん、各政党で立場の違いもあり、候補者を一本化すると言うのは、その掛け声とは裏腹に簡単なことではない。それでも、現実的なことを言えば、選挙ではまずは勝利しなければどうにもならないのである。自民党と公明党も、それぞれの立場には大きな違いがあるが、それでも多くの選挙で協力し合うことで、勝利を積み重ね、その結果、それぞれが行いたいことを実現することが出来ている。

 

 そろそろ来年の参議院選挙の選挙区での候補者調整が野党の中では水面下で行われているようだが、いかに巨大な与党から一議席でも多く奪還するのか。それはつまり、いかに候補者調整を行うのかということにかかっている。