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NHKのかんぽ保険不正報道をめぐる問題  諸悪の根源は官僚の「天下り」にある

 

 

 

NHK上田会長らの参考人招致を認める

 

 このほど始まる衆議院予算委員会。早速、開始前から与野党の攻防となっている。
 関西電力役員らの金品受領問題を巡って関西電力の八木誠会長ら関電幹部を、そして、かんぽ生命保険の不正販売を追及したNHKの番組を巡る問題でNHKの上田良一会長や日本郵政の鈴木康雄上級副社長らの参考人招致を野党が求めている。対して、与党は関電幹部の招致は拒否し、NHKの上田会長や日本郵政の鈴木上級副社長の招致は受け入れた。

 

mainichi.jp

 

 

 NHKの番組を巡る問題は与党に直接の影響がないと踏んでのことなのかもしれないが、総務行政とも関わる問題である可能性があり、参考人の答弁次第では、現政権に何らかの飛び火があるかもしれない。

 

 

NHKの番組を巡る問題とは

 

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 このNHKの番組を巡る問題。一体、何があったのかと言うと、事の始まりは、2018年4月。NHKが「クローズアップ現代+」で、かんぽ生命保険の不正販売問題を追及する番組を放送した。
 その後、番組の公式ツイッターに続編の放送に向けた情報提供を求める動画を掲載し、さらにはNHKが日本郵政に対して取材に応じるよう求めた。

 

mainichi.jp

 

 

 すると、日本郵政側は取材に応じるどころか、動画の削除を要求。この要求に当初NHK側が応じなかったため、日本郵政はNHKの会長宛てに要求を突きつける。
 これに対して、NHKは、「会長は番組の編集に関わっていない」という趣旨の回答を行うと、今度は日本郵政側が「ガバナンスの問題」として、NHKの最高意思決定機関である経営委員会に抗議することになる。
 この動きにNHKは屈するかたちで、動画は削除。続編の放送も延期した。

 

 日本郵政は相当な怒りであったようで、それでも怒りの矛先を納めず、NHKの経営委員会にガバナンス体制の検証を求める書面を送付した。
 これを受けて、NHKの上田会長名で謝罪文を出し、専務理事が日本郵政に届けたというのである。

 

 NHKの番組でのかんぽ不正の追及は止むが、結局今年6月に日本郵政は不正があったことを認める記者会見を行う。そして、NHKでは続編の番組が次の7月に放送されることになる。
 不正を報じたNHKが間違っていなかったことになり、本年9月には、日本郵政側がNHKの放送内容が事実であったことを認めている。

 

 

根拠なき日本郵政の主張と「天下り」の弊害

 

 NHKに圧力をかけた日本郵政側の主張が根拠なきものであることは、例えば、弁護士の郷原信郎氏のブログに詳しい。

 

nobuogohara.com

 

 そもそも、不正行為を行っておきながら、それを追及する放送がなされた途端、それを止めようとする動きをするなど、およそ真っ当な会社の所業とは思えない。ただ、問題となったかんぽ保険の不正販売はその闇が深そうで、何としてもNHKでの報道を止めたかったという日本郵政側の強い思いは分からないでもない。何とか糊塗したい。そう思ったのだろう。
 先ごろ行われたかんぽ保険不正販売に関する調査の中間報告を見ても、その闇の深さがうかがい知れる。

 

www.youtube.com

 

 

 民営化後の無理がたたっての不正販売ということになろうが、ここで注目したいのは、NHKとの応対にあたった日本郵政の鈴木康雄上級副社長の存在だ。「NHKはまるで暴力団」とまで語るような人物だが、かつては総務省の事務次官を務めたことがある。

 

www.asahi.com

 

 

 総務省退職後に直接日本郵政に加わったわけでないため、「天下り」だと言って批判しても、「いや、天下りではない」との反論も予想されるが、今回のNHKとのやりとりを見れば、放送政策を所管する総務省の元トップとして、退職後にも隠然とその影響力を行使していたことが分かる。問題の根源には、相変わらずの官僚による「天下り」とその後の影響力行使があると言って良いだろう。

 

 今回、鈴木上級副社長は予算委員会に参考人招致される。政治の力で、きちんと悪しき仕組みにメスを入れたいところだ。特に、野党の厳しい追及を期待したい。