霞が関から見た永田町

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政府統計はいつまで「標準世帯」を基準にするのか?

 

 

 

標準世帯。「夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち、有業者が世帯主1人だけの世帯に限定したものである。この世帯概念は昭和44年から46年までの「標準世帯」および47年以降の「4人世帯」と同じである。なお、昭和43年まで、「4人世帯」の結果表を掲載していたが、44年からのものは上記のように範囲を狭めている」。

 

これは総務省統計局の家計調査の項目で、わざわざ「用語の説明」として掲載されている標準世帯の定義だ。つまり、国の統計において、標準世帯はまさに「標準」、ものさしのまま、なのである。

 

 

今やマイノリティの標準世帯


「まま」と書いたのには訳がある。ご存知の通り、標準世帯は今や標準ではない。日本の総世帯数のうち、標準世帯は5%にも満たない。

 

もはや日本の縮図とは言えないのは明白で、標準世帯は第一位の無業の一人世帯(16.95%)、第二位の有業の一人世帯(15.65%)、第三位の2人世帯・有業者0人(13.67%)が主流だ。これはつまり、高齢者のみの世帯、単身世帯、夫婦共働き世帯が総世帯数のかなりの割合を占めていることを示している。

 

そもそも、標準世帯がトップの座を明け渡したのは、1988年と以外に古い。この時点で、トップの座は有業者の一人世帯がトップに躍り出た。つまり、結婚しない、単身者が増え始めたわけだ。

 

 

税制調査会でも前提は標準世帯


それから30年。世帯構成の姿はすっかりと変わってしまい、巷間言われる少子化・高齢化の社会の風景を如実に表す結果となっている。

 

問題は、政府が未だに各種統計で、この標準世帯をモデルに数字を計算している点にある。社会を正しく反映しているとはいえない世帯モデルをベースにはじき出される数字の信頼性は、控えめにいっても高くない。

 

政府税制調査会等でも、税制などを議論する際に前提としているのは、昭和40年代に定着した標準世帯を想定している。ということは、つまり、各種税制の未来予測を根本から間違っていることになる。現状すら織り込めていない予測、ということになるからだ。

 

もちろん、霞ヶ関も馬鹿ではない。今の標準世帯が日本の状況を正しく表していないことは百も承知だ。ただ、言い訳をするわけではないが、霞ヶ関があまりにも巨大で、かつ省庁の連携がまったく取れていない状況の中で、足並みを揃えて標準世帯の定義を変えるのが非常に難しいのである。それを縦割り行政といえば、縦割り行政だろう。それを言われると霞ヶ関としては抗弁のしようもない。

 

 

定義の見直しこそ政治の出番

 

ただ、それが現実である。したがって、標準世帯の定義を見直すには政治力が必要だ。まさに永田町の出番、である。

 

この議論をどの政党が持ち出すことができるだろうか?自民党には難しいように思われる。なぜなら、彼らの支持基盤は、この数少ない標準世帯だからだ。少なくとも、彼らの目にはっきりと見える支援者層は、標準世帯といっていい。

 

その証拠に、例えば、中学校給食が未実施だった大阪市や堺市など、ここ数年、市長の判断で導入が決まった都市では、自民党から「お母さんがつくるお弁当」への強いこだわりが見て取れた。今だに中学校給食の導入が見送られている横浜市では、給食の質問が出ようものなら、「お弁当はお母さんの愛情なんだよ!」というヤジが出るほどである。彼らは本気で、標準世帯が世の中の当たり前の姿だと思っている。

 

となると、やはり、標準世帯の見直しの議論は野党に期待する以外にない。政府統計は非常に重要な数字だ。だからこそ、世相を正しく捉えたモデルで数字をはじき出さなければ、未来を見誤る。たかが数字、されど数字。非常に重要なテーマだ。