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疑問の残る加計学園による新設獣医学部の運営状況

 

 

 

加計理事長の通り一遍の会見

 

 7日、加計学園の獣医学部新設問題をめぐって、同学園の理事長である加計孝太郎氏が会見を行った。
 報道されるところでは、新たな事実が判明するわけでもなく、通り一遍の質疑を行うにとどまったようである。

 

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 この加計学園の問題では、関係者が口を揃えて記録も記憶も無いとしてきた。よって、今回の加計理事長の会見でも、そういう発言に終始するのは目に見えていたことだ。通り一遍のことしか答えないというのも驚くに当たらない。


 ただ、この問題に関しては、粘り強く追及をしていく他なく、この会見だけで終わりにしてはならない。立憲民主党の福山幹事長は関係者の国会招致が必要だとの認識を記者に示したと報じられているが、野党としては引き続きそのような追及を続けていくべきであろう。

 

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棚がスカスカの図書館

 

 さて、加計学園問題については、その新設に関する手続きに関する疑惑が問題の中心になっていたが、いざ開設されると、今度はその運営についても疑問が投げかけられる事態となっている。


 そのひとつが、「スカスカ」とされる図書館の問題である。
 獣医部学部の開設申請にあたっては、十分な図書を揃えることも当然に約束されていた。しかし、図書館を確認した複数の人々が棚はスカスカであったとしているのである。

 

 市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表は、このスカスカな図書館の棚の状況をとらえて、市に図書費を水増し請求した疑いがあるとして加計理事長と加計学園を詐欺容疑で松山地検に刑事告発すると発表した。

 

 毎日新聞の記事には、黒川共同代表の言として、「学園が文部科学省へ提出した資料には図書費として9928万円と記載。ただ、実際に図書館にある本は8715冊で、団体が独自に推計した図書費は3417万円に過ぎなかったという。」としている。


 図書館には、館内では誰でも見られる開架図書の他に、書庫などに配置され簡単には全容が把握しにくい図書、さらには最近では電子図書もあり、単純に目視で確認出来る以外にも図書を収蔵しているのだが、それでも見た目で図書館の棚がスカスカというのは明らかに収蔵が少ないということを意味している。

 

 

 補助金の不正受給の可能性もさることながら、そこに通う学生あるいは所属する研究者が十分な学習や研究を行う機会が確保されていないという問題が発生している可能性が指摘されよう。

 

 

不十分な施設群

 

 加計学園による新設獣医学部の「お寒い」運営状況について、早稲田大学法学部の水島朝穂教授のメールマガジンの記事が話題になった。水島教授は現地を訪れ、「加計学園獣医学部」訪問リポートと題して、その様子をリポートしたのだ。その中では、スカスカの図書館の棚の様子も記されている。

 

直言(2018年7月9日)「ゆがめられた行政」の現場へ—獣医学部新設の「魔法」

 

 

 問題は図書館の収蔵図書だけではない。水島教授のリポートでは、各種の施設に関しても、設置基準を満たしているのかと疑問を抱かざるを得ないような状況がつづられている。国家戦略特区の仕組みを活用し、世界的に通用する獣医学部をと意気込んで作られたとは思えない状況がそこには広がっている。

 

 

教員も不十分?

 

 新設された岡山理科大学の獣医学部のWebサイトにアクセスすると、さらに「残念な」状況を目にすることが出来る。顕著なのは、教員一覧のところだ。

 

研究・教員紹介|岡山理科大学獣医学部

 

 専任教員数が最大規模というのをうりにしている同学部。しかし、その一覧を見ると、●が数多く見受けられる。


 「●の教員は赴任後に氏名を掲載します。平成30~32年にかけて順次赴任します。」と注意書きがあり、●の部分はまだ教員が着任していないということである。講座によっては、全てこの●になっており、誰も専任教員がいないという状況が続いているのだ。

 

 さらに、この教員一覧に氏名が掲載されている教員についても、個別に専門分野や研究業績のページが設けられている人物とそうではない人物が混在している。割合で言うと、前者が多く、いったいどのような人物なのか、Webサイト上では判然としないという教員も少なくない。


 専任教員の質と量はその大学の教育と研究を左右すると言っても過言ではない。それが現段階では十分とは言えない状況で、はたして新設の獣医学部は大丈夫なのだろうか。

 

 新設の手続だけではなく、現在の運営状況すら危うい。それが加計学園による新設獣医学部の実態であり、まだまだ追及すべき点は多い。