霞が関から見た永田町

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国民民主党の「イノベーション・ニューディール政策」、ネーミングはいい

 

 

 

「安倍政権がいいわけではないが、政権批判しかしない野党は選択肢にならない」、そんな消極的選択から安倍一強政治が続いている。野党に最も欠けているのは経済政策であることは論を俟たない。旧民進党も代表がせっかく日銀出身であるのに経済政策のイメージを打ち出せなかったのは戦術の問題だったのかもしれないが、今回の国民民主党は果たしてどうであろうか。

 

国民民主党は「未来を先取りする改革政党」と自らを位置づけ、「日本をアップデートする」と表現した。そして科学技術の発展を官民上げて支援することを明確に掲げ、革新的イノベーションによって経済成長の実現や社会問題の解決をめざす「イノベーション・ニューディール政策」という言葉を新しく提示している。

 

 

シュリンクすることを受け入れた国民民主党


現時点でイノベーション・ニューディール政策という言葉そのものは何の意味も持たないが、同党の言葉の端々に現状の延長線上に未来は描けないことの危機感がにじんでいる点は、他党と大きくことなるポイントであり評価できる。それは「スマート・シュリンク」という言葉としても表現されており、人口減少を受け入れ、その前提で新しく社会を設計しようとうたっている。これが今回の国民民主党の大前提であり、この時代認識をようやく永田町の人たちがはっきりと口にするようになった、というのは一つの希望と言っていいだろう。

 

さて、ここからはいくつか注文だ。時代認識は誤っていない、方向性は謝ってないゆえ、適切な政策を選択してほしい。まず気になるのが、地方分権へのプロセスだ。中央政府が政策を企画・立案し、地方を面倒みるというやり方はもはや持続可能ではない、と国民民主党は明言した。

 

 

税制の設計と働き方改革が地方分権の肝


では、どういう形で地方分権を実現するのか。その方法が「コンパクトで効率的なまちづくりに切り替える」では、少々時代遅れと言わざるを得ない。地方自治体でいえば、青森や富山が一足早く、コンパクトシティを打ち出して、取り組みをスタートさせたが、その結果は散々なものになりつつある。なぜかといえば、そのコンパクトシティは、ハード中心だったからだ。駅の中心に住む場所を集中させて、郊外に住む人たちにここへ移ってもらおう、という思惑だった。果たして結果は思う通りに運んでいない。

 

地方の分権・分散化を実現するためには、具体的な働く場所、仕事が必要なのだ。この視点を欠くと、人は地方には移らない。この辺は永田町にいるとなかなかわからない感覚だろう。そういう意味で、税制をどう設計するかこそが、中央集権の日本を、地方分権の日本へと、アップデートする肝になる。法人税をいじるのか、あるいは減価償却の期間設定のあり方をいじるのか、方法はいくらでも考えられる。課税自主権の強化という項目も政策集の中に書き込まれているのを見ると、税制によって地方分権を誘導しようとする意図は垣間見えるため、期待したいところだ。

 

 

仮想通貨はそもそも中央集権へのアンチテーゼ


玉木氏は財務省出身、大塚氏は日銀出身、両者、この分野には精通している。といいつつ、仮想通貨への政党のスタンスを見ると、新しいテクノロジーに対する理解が追いついていないのではないか、と不安にある面もあるので最後に指摘しておきたい。

 

「仮想通貨を使った地域通貨発行権の付与」と政策集には記載されているのだが、そもそも仮想通貨は中央集権体制を否定するところに端を発している。つまり中央に管理者がいなくても、みんなで価値を担保しようという、権限の分散がアイデアだ。したがって、そもそも仮想通貨は中央の誰かに発行権を付与してもらうことを想定していないのである。

 

中央政府ができることがあるとすれば、地方でブロックチェーンを使った、独自の仮想通貨が現れた時に余計な規制を加えないこと、である。それが中央政府の役割だ。この辺が今回の国民民主党の政策集を読んだ中で、違和感を覚えている点だった。とはいえ、政局で動く永田町という場所にあって、国民民主党がはっきりと地方分権と、従来とは異なる経済政策の必要性を打ち出したことは大いに評価していいだろう。