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豊田真由子議員の自民党離党 議員秘書の狭き門と実態

秘書への暴行などが明るみに出たことから、豊田真由子議員が自民党を離党した。暴行を働いたとされる際の音声が公開されたことから、反論が難しい状況に追い込まれてしまっての決断だと思われる。

 

 今回、暴行を受けたとされるのは政策秘書である。国会議員は国費で秘書を3名採用することが出来る。その内訳は、政策秘書1名、公設第一秘書1名、公設第二秘書1名である。彼らの身分は特別職国家公務員であり、誰を選ぶのか国会議員自身に裁量があるといっても、不当な扱いをしても良いということでは当然ない。しかし、実態としては、今回明るみに出たような事柄が程度の差はあっても見られるのかもしれない。

 

 そもそも、政策秘書は正式には国会議員政策担当秘書であり、衆議院参議院が主催する国会議員政策担当秘書の資格試験に合格するか、選考採用審査認定を受けた者だけが就任することが出来るとされている。

 

資格試験は国家公務員Ⅰ種の採用試験並の難関試験と言われ、合格率は5%程度である。この資格試験に合格しても、自動的に政策秘書として採用されるわけではなく、登録簿に記載され、それを見た国会議員からの連絡を待つか、自から国会議員に売り込み採用される機会をうかがうしかない。

 

 選考採用審査認定は、司法試験合格者や公認会計士試験合格者、国家公務員採用Ⅰ種試験合格者、公設秘書を一定年数務めて政策担当秘書研修を受講した上で修了証書の交付を受けている者、少し変わったところでは博士号取得者など、一定の要件を備えた人が受けることが出来る。公務員や会社員を10年以上勤め、「専門分野における業績が顕著であると客観的に認められる著書等がある者」もこの選考採用審査認定を受けることが出来ることから、自費出版で専門書を出版し、それをもとに政策秘書の選考採用審査認定を受けるということも可能だ。ただし、その審査は、議員からの申請がないと受けることが出来ない。選考採用審査認定を受けた者も登録簿に記載され、それを見た国会議員からの採用の連絡を待つ必要があるが、実際には採用を前提に議員からの申請があることの方が多いはずで、資格試験合格者のように、登録簿に記載されても採用されるかどうか分からないというように不安定な状況に置かれることはあまり多くないだろう。

 

 いずれにしても、政策秘書は一人の国会議員に1名しか採用されない。つまり、国会議員の数と同数の政策秘書のポストしかなく、それは狭き門と言える。ここに、どうしても国会議員の方が強い立場となる理由がある。狭き門で、なりたいという人が一定の数確保されている。当然、いまの政策秘書が駄目なら首にして、次の人を登録簿から探したり、有資格者を探して選考採用審査認定を受けさせたりすることになる。ちなみに、資格試験合格者はこれまでに635名で、そのうち実際に政策秘書として働いているのは85名である。

 

国会議員政策担当秘書資格試験 合格者の採用状況

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/osirase/hisho-jokyo.htm

 

 

 今回の豊田議員の暴行の直接のきっかけは、政策秘書がはがきの宛名の印刷をミスしたことによると報道されている。政策秘書は、政策立案や立法活動を補佐するために置かれているはずなのだが、公設秘書および議員の私費で雇用している私設秘書や事務員の総責任者のような役割を負わされ、政策立案や立法活動とは直接関係のない事務作業ですら担っているといのが現状だろう。支持者向けのはがきの印刷を行うこともあれば、豊田議員の例のように議員の送迎のために政策秘書が自動車の運転もする。対外的には、政策秘書というのは議員の代理とも目される存在であるため、議員の日程が合わない重要な会合には代わりに顔を出し、時には代わりに挨拶もする。ベテランの政策秘書ともなれば、秘書のネットワークや政党の仕事でのネットワークでも重要な役割を果たし、さらには国会議員の選挙区の地方議員との関係でも重要な役割を果たすこともある。つまり、あらゆる業務が政策秘書の下に集まってくると言って良い。そのような激務ともなれば、思うように仕事が進まないこともあるだろう。そして、そのようなときには議員の逆鱗に触れることにもなり、それが行き過ぎると今回の豊田議員の件のようなことにも発展するのである。

 

 政策秘書に限らず、国会議員の秘書は激務であり、入れ替わりも激しい。実際に、豊田議員は秘書の入れ替わりが激しかったと報道されている。この入れ替わりを外側から確認するのは簡単ではないが、例えば国会便覧や國會要覧には公設の3名の秘書の名前が掲載されている。それらは国会の召集ごとに最新版が発売されるので、毎号確認すると、秘書の入れ替わりの一端を窺い知ることが出来る。もちろん、長年同じ3名の秘書を雇い続け、盤石の事務体制を築いている議員も少なくないことは付言しておく必要があるだろう。

 

 なお、民進党は、民主党時代に、公設秘書の一覧をWeb上で公開していた。公設の3名の秘書は税金で雇用されているのであり、このような情報公開は積極的に行って欲しいところである。