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持続可能な経済財政・社会保障運営に向けたビジョンの確立を 3/3

 

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「財政再建」「社会保障充実」「経済再生」は互いに緊張感を持って議論を

 

 ここまで述べてきたことを勘案して、「財政再建至上主義」との主張を展開しているように受け取る方がいるかもしれない。政府のあまりに無責任な財政運営を目の当たりにすれば、財政規律を無節操に緩める動きについては厳しい論調にならざるを得ない。
他方、硬直的な財政再建路線に突っ走ることにも陥らないように留意が求められる。「財政再建」「社会保障充実」「経済再生」は互いに緊張感を持って議論をすべきであって、財政再建だけの視点から、短絡的に社会保障改革、経済政策についての結論を導くような発想をとるべきではない。

 

市場の活用、効率化という視点は必要ではあるが、社会保障を民間企業の経営のような観点だけで語ることは適切ではない。経済財政諮問会議、行政改革推進会議のように大企業の関係者は入っているが、中小企業、労組の関係者などが入っていない会議体が多々あり、大企業の経営論理、恵まれた人たちの立場だけから社会保障制度が歪められることないよう監視していく必要がある。
今から20年以上も前の記事であるが、正村公宏・専修大学教授(当時)が「『財政再建、福祉政策と両立(経済教室)』(1996年9月12日、日本経済新聞朝刊)において、「政府の過剰関与は整理しなければならないが、単純な『小さな政府』論は国家と社会を破滅させる」「必要が生じたときに必ず社会的支援を受けることができる権利をすべての国民に普遍的に保障することが重要である」と述べているが、今となっても重要な意味を持つ指摘であると考える。

財政出動では景気浮揚につながらないと短絡的に結論を下すことにも慎重でなければなない。景況認識、経済政策については、とりあえず財政事情はエポケーして(括弧に入れて)、それだけを議論した方が良い。橋本行革によって経済企画庁が廃止されてしまったことは痛恨の極みである。学者集団みたい、政治力がない、業界の現場を知らないなどとの批判も受けていたが、こういう役所は残しておくべきだった。

 

 アベノミクスの恩恵は一部に限られ、財政は悪化し、地方経済は疲弊し、国民の間の格差は拡大している。賃金や消費が大きく伸びる見通しもない。人口減少は止まらず、多くの地域と職場では人手不足が深刻となっている。こうした中で、「みんながみんなで支えあって」安心して暮らせる社会、排除される人がいない社会を確立し、持続可能な財政運営、社会保障政策の展開、地球環境とも調和した経済運営を行っていくためのビジョン・政策体系が問われているのではないだろうか。