霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

持続可能な経済財政・社会保障運営に向けたビジョンの確立を 2/3


www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 

 

毎年度ごとに赤字国債発行を渋々認める仕組みがなくなっていた

 

 誰が首相になろうが、どの政党が与党になろうが、現時点で特例公債(赤字国債)を発行することなくして、予算編成を行うことは不可能であることは明らかだ。


 しかし、赤字国債を発行するということが特例中の特例であることを肝に銘じ、やむを得ず行っているのだという危機意識が薄れてきていることは事実である。

 

 恒常的に赤字国債の発行が行われるようになったのは、昭和50年度補正予算(三木内閣)の編成時である。赤字国債を発行すること自体に相当な危機感があり、できれば発行を避けたいし、できるだけ早い時期に発行は停止するという強い決意が示されていた。


1975年10月20日の参議院本会議において、三木武夫総理大臣は以下のように答弁を行っている。

 

また、現行の財政法は赤字公債の発行を禁止して健全財政主義をとっているのに、赤字財政ということは非常に問題がある、今度の補正案も撤回して再提出せよという強いお話がございました。今回の赤字国債の発行というのは、税収の大幅な落ち込みの結果、やむを得ず特別公債の発行に踏み切ることになったわけでございまして、財政の健全性を堅持することが国民生活の安定向上、経済の安定的な成長の基盤であることは言うまでもないことでございますから、できるだけ早い機会に特別公債に依存しなくてもよい状態に復帰するように努力をしたいと思います。

 

 以降、バブル好況に沸いた1990年度から1993年度を除いて、毎年度ごとに特例法を制定して、やむなく赤字国債を発行するという形をとってきた。毎年度に国会が採決して、法律をつくっていたので、政府なり国会なりが緊張感を持っていた。
しかし、2012年度から2015年度まで3年間、2016年度から2020年度までの5年間とまとめて特例公債の発行を認める法律にしてしまったので、国会の関与は弱まり、逆に政府の自由度は高まった。5年に1回しか国会の議決がないとすると、財政再建に対する意識もますます希薄なものとなってしまう。

 

 他方、赤字国債ならダメだけど建設国債なら積極的に認めてはどうかという議論もある。公共事業も増えているとはいえ、防災・老朽化対応にかなりの予算を充てなければならないし、建設従業者をはじめとする人手不足が深刻で、公共事業をいくらでも増やせるような状況ではないとの指摘もある。
財政法4条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定している。
育英会の出資金は建設国債発行対象経費として扱われてきた経緯もあり、建設国債は出資金、貸付金という名目で公共事業以外にも使えることをしっかり認識しておく必要がある。

 

 建設国債ならOK、赤字国債ならダメという単純な区分けではなく、赤字国債と建設国債をトータルで見て、どのような使途に使われているかを厳しくチェックしていく必要がある。

 

 

プライマリーバランスの黒字化も挫折

 

 消費税だけで財政が支えされているわけではないが、消費税率がどのくらいの水準にあるのか、どのようなタイムスケジュールで税率引き上げが進んでいくのかは財政状況を大きく左右する。以下、消費税率引上げに関する経緯について簡単に整理してみた。

 

2012年8月10日、民自公3党の協議も反映され、民主党の野田内閣において、社会保障の充実・安定化などのために、消費税率を2014年4月1日に8%、2015年10月1日に10%に引き上げる法律が成立した。このうち2014年の8%への税率引き上げは実行された。


 2014年11月18日、衆議院解散に先立ち、安倍首相は記者会見を行い、2015年10月1日予定の消費税10%への引上げの1年半先送りをすることを表明した。それを受けて、10%への税率引き上げは2017年4月1日に延期されることとなった。


 2016年6月1日 、安倍総理は記者会見を行い、延期された10%への引き上げを2019年10月1日まで2年半再び延期し、軽減税率を導入する考えを表明した。関係法律は成立を見ている。
安倍総理は、衆議院解散に先立ち、2017年9月25日の記者会見において、消費税の10%引き上げで、5兆円強の税収増となり、本来4兆円は財政再建に使うことになっていたところを、その使い道を変えて、幼児教育や高等教育の無償化など「人づくり革命」のために2兆円を投入する方針を明らかにした。そして、「2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は、困難」と公言した。

 

消費税の引上げが2度にわたって延期され、増収分の使途変更も行われるため、2020年度に「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化目標は先送りされることとなった。
政府は今年6月にも新たな財政再建に関する目標時期や歳出抑制策を策定する予定と聞く。しかし、財政健全化を確実に実現するビジョンが示されるのか、その見通しは不透明である。また、森友学園問題なども含めた政局の行方によっては、10%への消費税率引き上げもあやうくなる。内閣に対する信頼度が高くないと、国民から増税に対する理解を得られない可能性も出てくる。

 

www.ksmgsksfngtc.com