霞が関から見た永田町

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持続可能な経済財政・社会保障運営に向けたビジョンの確立を 1/3

 

 

 

 

平成30年度予算が成立、補正予算とあわせて問題ありの編成

 

 この3月28日、平成30年度予算が成立した。森友学園問題などで国会は大荒れとなり、衆参の予算委員会では佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われるなど異常な事態に陥った。


 予算そのものについて、十分な審議が行われたかというと、いつものことながら、不十分だったと評価せざるを得ないだろう。衆議院、参議院でほぼ1か月ずつ予算委員会での審議が行われるのだから、予算の中身が熟議されるような国会運営が考えられてもおかしくない。

 

 今更ながらということになるが、平成29年度補正予算と抱き合わせで平成30年度予算は編成されており、両方を通じての問題点をもっと浮き彫りにする必要があった。

平成29年度補正予算は、建設国債を1.2兆円も追加発行し、前年度剰余金の処理も含めて2.9兆円もの歳出を追加する内容である。災害復旧対策などは当然のことであるが、本当に補正予算にふさわしいのか疑問を持たざるを得ない内容が目に付く。中小企業予算については、本予算が1,800億円程度なのに、補正予算で2,000億円も追加している。本当に必要なら、正々堂々と本予算の段階で倍増を求めるべきではなかったのか。
そもそも財政法29条は補正予算の作成・提出に厳格な制限を設け、「法律上又は契約上の国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行うため必要な予算の追加を行う場合」「予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合」に限っている。各予算項目がこの条項に適ったものなのか財務当局としても詳細に説明すべきではないのか。

 

一方、平成30年度予算は、一般会計総額は97.7兆円となり、6年連続で過去最高を更新している。公共事業費が6年連続増加するなど、全体的に歳出増に歯止めがかけられていない。その一方で、本来増やすべき人や暮らしへの投資は不十分との印象を受ける。
子育て世帯や幼児教育・保育関係者の期待に応えるものでもないし、介護報酬は引き上げられているが、介護従事者の抜本的な待遇改善に資するものではない。


 防衛費についても増額だからいけないと批判するつもりはない。本当に必要なら、大幅増という選択もあり得る。ただ、長距離巡行ミサイル関連経費という専守防衛の根幹に関わりかねない項目が国会での議論もなく唐突に計上されたことなどについて疑問点は残っている。近年増え続けているFMSによる防衛装備品の調達についても、米国の言い値で買わされているのではないか、価格設定が不透明ではないかとの意見も出ており、納税者への説明が求められる。

 

 

野党6会派は組み替え動議を出したが、大半の国民には伝わらず

 

 野党が疑惑追及ばかりやっていて、予算の審議なんかそっちのけという批判も聞く。ただ、民進党の議員も入っている「無所属の会」をはじめとした野党6会派は、2月28日、衆議院に「平成30年度一般会計予算、平成30年度特別会計予算及び平成30年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求める動議」を提出している。

 

 いわゆる「予算の組み替え動議」である。「人への投資が不十分」「地域の自主性・独自性が生かされていない」「農家の方々の将来の展望が全く開けない」「不要不急事業に過度な配分が行われている」ことなどの理由により組み替えを求めている。概要だけを示すと以下のようになる。

 

編成替えの概要
1.歳出の追加(1.9兆円程度)
(1)人への投資(0.4兆円程度)
・小・中学校の給食費無償化に向けた負担軽減(0.2兆円程度)
・所得制限なしの高校無償化
・保育士等の給与引上げ(0.2兆円程度)
(2)地域活性化(1.5兆円程度)
・一括交付金の復活(0.7兆円程度)
・農業者戸別所得補償制度の復活(0.8兆円程度)
・養豚経営安定化対策(豚マルキン)補填率引き上げ・国庫負担率引き上げ
(3)国民の信頼を取り戻すための経費
・「平成25年労働時間等総合実態調査」の再実施を含む裁量労働についての全般的な再調査
・森友・加計問題を踏まえた公文書管理の適正化
(野党共同提案「公文書管理法改正案」に基づく)
・政府提案の生活保護基準見直しの再考
2.歳出の削減(1.9兆円程度)
①水膨れ予算の適正化(0.4兆円程度)
②一括交付金見合いの交付金・補助金の廃止・縮減(0.7兆円程度)
③農業者戸別所得補償制度財源としての交付金等の廃止(0.8兆円程度)

 

 予算については国会に提出権がないので、野党はこうした組み替え動議を出すなどして政策的な意思表示をするしかない。予算についての事実上の対案と位置付けることができる。


 残念ながら、新聞はベタ記事で取り扱い、まったく注目されなかった。国の予算をいかに編成するかという重要問題にかかわることであり、本来なら大々的に報道されてもおかしくないものである。


 政府が提出した原案のままで良いのか、野党の組み替え動議のように修正した予算の方が良いのか、はっきりとした二つの選択肢が示されているのだから、国民的議論が喚起されてもおかしくなかった。


 

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