霞が関から見た永田町

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戦後最長とはいえ実績には疑問符がつく安倍首相

 

 

 

安倍首相、在職日数戦後最長へ。

 

いよいよ8月24日で安倍首相の通算在職日数が2799日となり首相在職日数は「戦後最長」となった。佐藤栄作元首相の2798日を更新し、歴代としては2位。ちなみに、最長記録は桂太郎の2886日。このままいけば今年11月19日にはこの最長記録に並ぶ見通しだ。

 

戦後最長のみならず歴代最長を射程に捉えた安倍首相を取り巻く環境は決して甘く無い。最近では韓国が23日にGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄を通告。11月22日限りでその効力は失われる。緊張感に包まれる東アジア情勢の注目の的である北朝鮮は、ここのところ頻繁に飛翔体の発射を繰り返しており、緊迫した情勢が収束する見込みはない。これに韓国がGSOMIAを破棄するというから、困ったものである。外交関連では、ホルムズ海峡の情勢も他人事ではない。アメリカのトランプ大統領、中国の習近平国家主席、個性派揃いの外交舞台で安倍首相が果たすべき役割は重い。

 

安倍首相にとって最大の関心事の一つと言える日露交渉も停滞したままだ。安倍首相が掲げた「戦後外交の総決算」は今ひとつ成果が見えぬまま、ただ時間がだけが過ぎている。


北方領土問題に象徴されるように、ロシアとの交渉は一筋縄ではいかない。しかも安倍首相が在任期間中の決着にこだわるほどロシアペースでことが運ぶ恐れがあることも認識しておきたい。「新しいアプローチ」で交渉が続けられている日露関係に活路はあるのか、その見通しは立たない。

 

 

独りよがりな憲法改正論議は改めたほうがいい

 

何より安倍首相を語る上で、指摘しておかなければならないのは、憲法改正問題だ。

 

安倍首相の"悲願"と言っても過言ではないこの問題も、7月の参院選の結果で一歩後退した。政権のパートナーである公明党も憲法改正には前のめりではない以上、安倍首相個人の思いが色濃くにじむかのような憲法改正論議からは一歩改めてもらいたいところだ。憲法改正を議論することを封じる必要はないものの、安倍首相が目指す憲法改正は、国民が望んでいる憲法像には程遠い。改憲発議の3分の2を失ったからこそ、独善的な憲法改正ではなく、国民の多くが納得する形での改正論議に舵を切ることが戦後最長宰相が歴史に名を残す一歩かもしれない。

 

ほかにも国内の話では、森友学園や加計学園をめぐる問題で生じた、安倍首相をはじめとする官邸への疑念は未だ晴れない。10月の消費税増税を間近に控えるが、景気に冷や水を浴びせるものとして批判は根強い。とはいえ、増税については予定通り10%に引き上げられるのは間違いないだろう。

 

というのも、過去を振り返れば2016年6月に翌年4月に予定されたい10%への増税延期を決めた際に安倍首相は、2016年7月の参院選でその信を問うとして選挙に臨んだという経緯がある。この7月の参院選では増税延期は争点にならなかったことを思えば、さらなる延期は考えられない。増税は既定路線と見るべきだろう。

 

アベノミクスの効果に疑問符をつける専門家も多い上に、消費税増税ともなれば景気へ与える影響はやはり小さくないだろう。増税によって経済が落ち込み、さらに社会全体へ広がる影響が不安視される。

 

 

国民・玉木代表の的を射たコメント

 

これだけの長期政権を作ったのには、「一強多弱」と揶揄される野党各党の物足りなさが背景にあるのも認めざるを得ない事実である。ちょうど立憲民主党と国民民主党、さらには野田元首相が代表を務める「社会保障を立て直す国民会議」も会派に合流することになり、野党の再結集が進む。緊張感ある国会論戦には、切磋琢磨するライバルが欠かせない。緊張感に欠ける現政権が続くのは国民に通って不利益でもある。野党各党はかつての民進党分裂の過去と真摯に向き合い、選ばれる野党、ひいては政権を託される政党として成長していってほしい。

 

在職日数戦後最長を報じる新聞紙上に国民民主党の玉木代表のコメントが載っていた。「長くやった首相は必ず何らかの実績を残している。(安倍首相は)何を残したのかすぐに頭に浮かばない」

 

確かにその通り。玉木代表の指摘はなかなか的を射ている。よくよく考えれば、まだ安倍首相は任期の途中。2021年9月まで任期はあるので、その日数が伸びていく可能性は高い。つまり、過去の総理大臣経験者は安倍首相ほどの在職日数を積み重ねなくとも、歴史に名を残す実績を積み重ねてきたということである。逆に言えば、安倍首相はそれほど長い在職日数を重ねたにも関わらず、実績が物足りないというのは残念な話である。