国民民主党が提示する8つの議論すべき課題
この臨時国会における最重要テーマにして、政府の不手際も目立ち始めた出入国管理法改正案。このほど、国民民主党が対案を公表した。
詳細は、国民民主党のWebサイトに各種情報が掲載されている。
以下、8つの課題について早急に議論を進めるべきと提案している。
1.「地方の人材確保への配慮」
2.「客観的かつ合理的な受け入れ上限(産業別・地域別)の設定」
3.「適切な外国人労働の待遇を確保するための配慮」
4.「在留資格の変更に際しての一時帰国」
5.「現行の各種受け入れ制度の実態把握に基づいた抜本的見直し」
6.「適切な社会保障制度と教育制度のあり方」
7.「家族帯同など人権的な配慮」
8.「多文化共生施策の充実」
いずれも、政府提案に内在する問題点を的確に指摘し、その対策を迫るものとなっている。
問題の多い政府案
臨時国会が開催されるとなって、出入国管理法改正案が最重要法案として急浮上してきた。その改正案については、短兵急に作成したのか、審議過程で綻びが目立ち始めていた。
例えば、国民民主党が上記の課題2で指摘する受け入れの上限の設定について。安倍総理は外国人労働者の受け入れの上限を設けると発言する一方で、山下法務大臣は上限を明確には定めていないとした。現行の外国人技能実習制度についても問題点が指摘されてきたところ、その実態に関する調査結果を捏造し、存在しない事実を提示するという荒業まで繰り出された。
審議促進のつもりか、あるいは流石に問題ありと見たのか、出入国管理法改正案が審議されている衆議院法務委員会の葉梨康弘委員長(自民党)は山下法務大臣に何度も正確な答弁をするよう促した。それでも議論は深まらず。問題の多い政府案を無理に押し通そうとするのだから、そうなるのも仕方がない。
結局、政府与党は出入国管理法改正案について弥縫策を講じることなく、一気に採決まで持ち込もうと目論んでいるようだ。
短時間で対案を仕上げてきた国民民主党
法務委員会での議論の過程で政府案の綻びが明らかとなった。その綻びをとらまえて、国民民主党は短時間で対案を仕上げてきた。冒頭に示した国民民主党のWebサイトに掲載されているものがそれである。
国会で審議される法案は政府与党ペースで決められる。どうしても、野党側は受け身にならざるを得ず、準備をしていても対案の提示は後手に回ることになる。そういう中でも、今回の国民民主党の迅速の対応は評価されてしかるべきだろう。
ここで、国民民主党は8つの課題を提示し、その対応を行う対案を提示してきた。より具体的には、政府与党案の再考を迫る法律案を提示するという工夫を行ってきたのだ。
出入国管理法改正案そのものについて、この短時間で一字一句検討して、対案を作成するのは時間的にも難しい。そこで、その改正案の問題点を指摘し、まずは「再検討要求法案」を対案として出すというのが国民民主党の採用した方法である。
「再検討要求法案」であるため、同法案が成立したあかつきには、六か月以内に、上記の8つの課題に関わり制度の検証を行い、必要な措置を講じるとしている。
端的には、来年の通常国会で改めて必要な事項について検討しようということであろう。おそらく、国民民主党の対案については、問題の先送りと与党は批判するはずだ。しかし、不十分な政府案を通すよりは、まずは問題点を指摘した上で、あらためて検討を行うというのは至極真っ当なあり方である。
国民民主党が対案と合わせて公表した「外国人労働者受け入れ拡大に関する国民民主党の考え方(概要)」の中では、「外国人労働者との共存は必要」と明言されている。
国民民主党も外国人労働者の受け入れには反対していないのだ。問題は、様々な対応策が必要とされるにもかかわらず、政府案ではそのような対策が極めて不十分であり、ただ受け入れの拡大だけを指向している点にある。
本来、与党と国民民主党はこの件では大きく対立してはいないのであり、じっくりと時間をかけて検討すれば、合意できる成案を得ることが出来る。野党に譲歩したくない与党が強硬に事を進めているに過ぎない。
野党が提出した法律案はなかなか国会で審議されないのは野党から見ると歯痒いところだろう。さらに、少なくない国民は「野党は仕事をしていない」とまで批判する。この場合、仕事をしていないのは与党であり、現政権であるのだが、その実態を明らかにするという意味でも、国民民主党のように短時間で対案を仕上げて提案し続けることが重要と言えるだろう。