新潟知事選は花角氏が制する
事実上の与野党対決となった新潟県知事選は、与党が推す花角英世氏が激戦を制した。当日の報道各社の出口調査では、野党が推す池田千賀子氏と花角氏が文字通り横一線で、大変な接戦となったわけだが、最後は花角氏が押し切るかたちとなった。
選挙前には、花角氏の先行が伝えられていた。与党は政党色を薄めた選挙戦を展開し、原発問題の争点化を巧みに避けることで優位な戦いを進めていたが、最終盤になって相手候補の巻き返しを許し、薄氷の勝利となった。
一方の池田氏はというと、前半戦は野党による安倍政権批判に重点を置いた戦いを展開しつつ、中盤以降は農政問題を取り上げるなど新潟県の課題にも目配りすることで、劣勢を挽回しつつあった。最後は僅差で競り負けるかたちにはなったが、横一線に近いかたちには持ち込むことが出来たことは一定の評価がなされるべきだろう。
今年に入って初の与野党対決型となった大型選挙は与党が制することになった。今回勝利した新潟県知事選挙は前回負けていることもあって、与党としては大きな勝利となったと言えるだろう。ただ、今回は野党系の知事がスキャンダルにより辞職したことに伴い実施された選挙であり、前半戦までは優位な戦いを進めながら、最後は接戦に持ち込まれたことも考えると、与党しても課題の残る選挙になったことは間違いない。
中野区長選挙は酒井氏が制する
新潟県知事選挙と同じ日に投票があった東京都中野区長選挙は、野党が推す酒井直人氏が現職の田中区長らを下して当選した。
こちらの選挙は開票日が月曜日であったこともあってか、その結果があまり注目されてはいないが、大きなインパクトのある選挙結果であったことは間違いない。
というのも、東京都23区の区長選挙で現職の区長が立候補した場合、これまで数例しか負けたことがなかったからだ。なおかつ、酒井氏は立憲民主党を中心とした野党が支援した候補である。自民党系だった地方議員が区長選挙に立候補したことに伴い、現職区長は保守分裂の選挙を戦うことになったため厳しい選挙戦になったとは言え、与党が推す候補として負けられない戦いであったはずだ。
立憲民主党の長妻昭氏の選挙区である東京7区。中野区もその一部が含まれており、長妻氏の全面的な支援があった酒井氏にも当選のために十分な基盤があったと言えるのかもしれない。実際に、中野区長選挙と同時に行われた中野区議補選では、立憲民主党の候補が勝利しており、この地域で根強い支持がありそうだ。
負けに不思議の負けなし?
プロ野球の野村克也元監督が口にした言葉として有名な「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。
今回の新潟県知事選でも、野党が推した候補の敗北を受けて、「地方選挙に国政を持ち込んだのが間違い」「原発問題だけ主張しても勝てない」「雇用政策や経済政策への配慮が足りない」「地上戦が不十分」といった敗因が指摘されている。確かに、敗北の原因として、いずれも一理あるだろう。まさに、負けに不思議の負けなしだ。
ただ一方で、中野区長選挙では、野党が推した候補が勝利している。こちらは野党の代表が勢ぞろいで応援というわけでもなかったが、立憲民主党所属の議員を中心に長妻氏も街頭に立つなど、政党色が完全に薄められていたわけでもなかった。新潟県知事選挙と同じ理屈で言えば、こちらも与党が推す現職の区長が勝利しても良さそうなものだが、実際にはそうなっていない。
新潟県知事選挙と中野区長選挙を分けた要因があるとすると、例えば、中野区長選挙の場合、候補者の酒井氏は区役所職員としてちょっとした有名人であり、その地元愛から、ネット上にもアップされている演説を見ても地元の課題にも丁寧に言及していることがあげられるかもしれない。これは、「地方選挙に国政を持ち込んだ」のとは逆の動きであり、それが功を奏したと言えるだろう。
ただ、地元の課題ということであれば、現職の田中区長とて、その内容は熟知しているはずであり、酒井氏との間でそれほど大きな相違はなかったのではないだろうか。
もちろん、例えば中野サンプラザの建て替え問題といった主要な争点では、酒井氏と田中区長は立場を異にしており、それが選挙結果にも影響を及ぼしていた可能性は指摘出来る。
何より、負ければ、その理由は様々に指摘されるのであり、勝てば結果として全てが上手くいったことになるのだ。
新潟県知事選で花角氏の陣営に入った選挙プランナーの三浦博史氏はその勝因をいくつかあげている。
それらの勝因とされる事柄も、勝利したからこそ言えることで、負けていればボタンの掛け違いの連鎖に終わっていた可能性もある。
新潟県と中野区、それぞれ規模は違うものの一人を選ぶ選挙において、与党が推す候補と野党が推す候補で勝敗を分け合った。勝敗を分けた要因も様々あるとは思うが、いずれにしても、与党が盤石というわけでもなく、弱い野党と言われながらも戦い方次第では十分に戦えることが分かったのではないだろうか。