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茂木大臣不信任案で政策論を主張した稲富修二議員

 

 

 

茂木敏充大臣に対する不信任決議案が審議される

 

5月22日、衆議院において、国民民主、立憲民主、共産、自由、社民の野党5党会派が提出した茂木敏充・経済再生担当大臣・不信任決議案が本会議で審議された。


 5月18日、与党の乱暴・強引な国会運営により、TPP11協定が衆議院本会議に緊急上程され衆院を通過、さらに関連法案が内閣委員会で採決されることが見込まれていたため、茂木大臣の不信任決議案が急遽提出されることとなった。


野党を中心とする賛成会派、与党を中心とする反対会派が討論を行い、採決が行われ、不信任案は賛成少数で否決された。

 

 

政策論をきちんと述べた稲富修二議員(国民民主党)

 

野党では政府・与党のスキャンダルや茂木大臣の所管にあまり関係ない政策分野の話ばかりが目立っていた。


 確かに、森友・加計問題などについての安倍内閣の隠蔽・歪曲体質は悪質である。さらに、憲法第66条3項が「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と規定しているように、茂木大臣は安倍内閣が取り組んでいるあらゆる政策に責任を負っている。

 

稲富議員も森友・加計問題などに関して、安倍内閣が嘘や隠ぺい、改ざんを繰り返してきたことを指摘し、それがゆえに国会での大切な政策論争が奪われてきたことを批判した。


 他方で、稲富議員は茂木大臣が所管する政策分野をきっちり整理して取り上げ、理論を組み立てて、討論を行っていた。政策論中心の良識ある討論は、野党の討論者の中でも際立っていた。

 

 

「TPP11」の問題点は明らかだ

 

稲富議員も述べていたが、「TPP11協定」は、「TTP12」をほとんど引き継いでいること、わが国の国内農業へ打撃が大きいこと、交渉経過にかかる情報公開が全くされていないことなどの問題点が大きい。


 また、農林水産省が発表している影響についての資料があまりにもひどい。「農林水産物の生産額への影響について(TPP11)」(平成29年12月、農林水産省)は、あらゆる品目について、生産量減少率はゼロであるとしている。以下に、いくつかの事例を並べてみる。

 

(牛肉)「生産額(価格(P)×生産量(Q))は減少するが、体質強化対策や経営安定対策の適切な実施により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されると見込む」


(牛乳乳製品)「生産額(価格(P)×生産量(Q))は減少するが、体質強化対策や経営安定対策の適切な実施により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されると見込む。」


(りんご)「生産額(価格(P)×生産量(Q))は減少するが、体質強化対策の適切な実施により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されると見込む。」 (水産物)「生産額(価格(P)×生産量(Q))は減少するが、体質強化対策の適切な実施により、引き続き生産や漁業者所得が確保され、国内生産量が維持されると見込む。」

 

 どれもこれも同じような紋切り型の説明文になっている。要は、「価格は下がるが、きちんと対策をするから、国際生産量は変わらないので、安心して下さい」との理屈だ。農業者戸別所得補償制度を廃止しておいて、よくこんな説明ができるのかと疑問を呈したくなる。

 

 

格差拡大を加速したアベノミクス

 

稲富議員は経済問題にも触れていたが、様々な問題をもたらしたアベノミクスについて、経済運営の責任者である茂木大臣は大きな責任を負わなければならない。
先日、内閣府が発表した2018年1─3月期国民所得統計1次速報によれば、実質GDPは前期比マイナス0.2%、年率換算マイナス0.6%となり、9四半期ぶりのマイナス成長となった。


茂木大臣は事あるごとに「生産性革命」「ひとづくり革命」というスローガンを掲げていたが、看板倒れに終わっていることは明らかだ。「大企業の儲けのおこぼれを中小企業や庶民が受け取ればいい」という上から目線のトリクルダウンの経済では格差が拡大するばかりだ。


安倍内閣の支持を受けて、日銀がとっている政策も問題だ。特に、マイナス金利は、預金者にデメリットが大きいだけでなく、金融機能低下を招きかねない政策である。日本銀行の異常な国債購入による事実上の財政ファイナンスはやめるべきだ。

 

 

財政再建を後退させた安倍政権

 

稲富議員は財政再建を後退させている安倍内閣の姿勢も厳しく批判していた。政府は2025年度までの財政健全化計画を策定する中で、21年度に中間目標を設ける方針との報道が流れているが、過去における中間目標も未達成だったことに何の反省の言葉も見られない。


 財務省が不祥事で混乱していることをこれ幸いとばかりに、バラマキ予算を組んだり、財政再建計画を骨抜きにしてきた安倍内閣の無責任な姿勢は厳しく監視していかなければならない。

 

 

国民民主党は「是々非々」で今後の活動を

 

茂木大臣の不信任決議案をみて、きちんと政策論を示した国民民主党の姿勢は評価に値するものであった。


 過去の事例を見ても、良識ある野党というのは国民の高い支持を得られにくく、選挙にも弱かったという傾向もあった。何でも反対する野党の方が「すっきり感」があって、安定した基盤を作りやすいという点も否定できない。


それでも、国民民主党は結党時にまとめた綱領、基本政策に沿って、中道改革の「是々非々路線」で臨むべきである。政府の提案する政策・法案についても、賛成すべきは賛成し、反対すべきは反対すべきである。同党の今後の活躍を静かに見守っていきたい。